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    難病を患い10カ月ぶり復帰の渡辺司 「フルスイングすると骨が砕けちゃう可能性がある」

    今年67歳を迎えた渡辺司が、昨年11月開催のシニアツアー「いわさき白露シニア」以来、およそ10カ月ぶりに試合の舞台に帰ってきた。

    所属 ALBA Net
    下村 耕平 / Kohei Shimomura

    配信日時:2024年9月28日 02時16分

    • ゴルフライフ
    10カ月ぶりに仕事場に復帰し、表情は明るい(提供:日本プロゴルフ協会)
    10カ月ぶりに仕事場に復帰し、表情は明るい(提供:日本プロゴルフ協会)
    • 右上腕に金属が入っているため、フルスイングはまだできない(提供:日本プロゴルフ協会)
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    今年67歳を迎えた渡辺司が、昨年11月開催のシニアツアー「いわさき白露シニア」以来、およそ10カ月ぶりに試合の舞台に帰ってきた。

    渡辺司が以前使っていたパターは、ネックが逆に曲がってる!【写真】

    60歳以上の日本一を決める「日本プロゴルフグランドシニア選手権~ユニテックスHDカップ2024~」の初日は「78」で7オーバー・54位タイ発進。「僕としては来た甲斐があった。まずゴルフができた。18ホール回れた。自分にとっての不都合は何もなかった」と、スコアとは裏腹に明るい表情を浮かべる。

    渡辺が『多発性骨髄腫』のステージ1と診断されたのは昨年の1月。左ヒザの半月板の手術を受ける前の血液検査で判明した。その時は何も自覚症状はなかった。『多発性骨髄腫』は⾎液細胞の⼀種である形質細胞ががん化し、症状がひどくなると骨の破壊や腎障害が起こる。その原因は不明で、現在の医療技術では完治することは難しい。

    症状がなかったため、大学病院の主治医に相談し、1カ月に1回血液検査をして様子を見ながら、23年シーズンはシニアツアーのほぼ全試合に出場した。ところが、シーズンを終えた12月、右上腕に激痛が走る。「腕の痛みは骨髄腫が原因とは思っていなかった。40何年も試合をしていると腕が痛いなんてのは年中だから」と最初は軽く考えていた。

    しかし、年が明けても痛みが取れないため、ヒザの手術を受けた整形外科の先生に診てもらうことに。レントゲンを撮ると「骨髄腫から来る痛みだと思うと言われた」。2月からもともと通っていた大学病院の先生のもとで注射と薬による治療を開始。痛みでとてもゴルフができる状態ではなかった。その後、なんと「くしゃみで骨が折れた」という。

    2月に骨折した右上腕の手術を行い「骨の中に髄内釘っていう金属が入っている」。主治医からクラブを握ることが許されたのは今月に入ってから。「硬い金属が入っているから軽くスイングするには大きな問題がないんだけど、フルスイングすると骨が砕けちゃう可能性がある。だからドライバーはキャリーが170~180ヤード。150ヤードは普段170ヤード打つクラブでポーンと打つ。7カ月もゴルフをしてなかったわけだから、ここでちょっと頑張って良い球を打ったところで、スコアが悪くても骨が砕けない方を選ぶでしょ」。

    右上腕に金属が入っているため、フルスイングはまだできない(提供:日本プロゴルフ協会)

    右上腕に金属が入っているため、フルスイングはまだできない(提供:日本プロゴルフ協会)

    そんな状態でなぜ今大会に出場しようと思ったのか。「ここはカートでプレーできるし、グランドシニアだから若干距離も短い。アプローチやパッティングもずっと練習していなかったから、そういう練習にもなる」。この初日がゴルフを再開して6ラウンド目。今大会は常用カートに乗って移動できるため、体への負担も少ない。現在の自分の状態を確かめるにはちょうどいいと考えたのだ。

    さらに、10月の検査でフルスイングの許可が出れば、シニアツアーへの出場も考えている。「前提条件としてカートが使えるところは出てみたい。佐世保シニアオープン(10月12日~13日)とか、福岡シニアオープン(10月26日~27日)は行こうと思っている。もしかしたら、いぶすき(最終戦のいわさき白露シニア・11月22日~24日)は出られるかもしれない」。佐世保と福岡は乗用カートで移動できるが、いぶすきは乗ることはできない。

    また、今大会ではツアーで一緒に戦う選手たちから励ましも、復帰への思いを強くしている。この取材中も加瀬秀樹から「大丈夫?」と声をかけられた。「みんなが声をかけてくれるのは本当にありがたい。何て言うんだろうな…友達っていうんじゃないんだよね。俗に言う『戦友』みたいな感じ。だって戦うことが前提の間柄だからね。だけどただの敵じゃないんだよ」と、本当に楽しそうに顔をほころばせる。

    続けて、「相手が何か困っていればみんなで応援して助け船を出すし、自分も出してもらうし。本当の敵だったらそういうことはしたくないでしょ。心の底から手助けをしたいと思う間柄ってありがたいよね。人に対して自分が感じていたことが、人も僕に対してそういうふうに思ってくれたことがうれしい。本当にありがたい仲間です」と語る。実際、左ヒザの手術を行った先生は高見和宏から紹介された。それ以前に腰の状態が悪かった高見には渡辺が名医を紹介している。

    「多くの人たちがサポートしてくれたおかげで、自分の体が少し改善してきた。これからは焦らないでちょっとずつ1年前にできたことの6割、7割できる日が来ることを祈っている。もう10割には戻らない。8割まで戻れたら最高だと考えている。これから薬の種類が変わるかもしれないし、注射ももう少し間隔が空くかもしれない。ただ当面はなくなることはないし、完治もないと思う。薬や注射に頼りながら無理をしないでやるしかない」

    レギュラーツアーでは2勝、シニアツアーでは「日本プロシニア」2勝、「日本シニアオープン」1勝を含む5勝を挙げた実力者は、今日も戦友たちに囲まれて喜びを噛みしめながらプレーしている。

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