2023年に改正された16のゴルフルールを完全網羅! 各ルールの変更点を徹底解説
2019年以来の改正となった2023年のゴルフ規則。ルールを簡素化することで、すべてのゴルファーにわかりやすく、そしてゴルフを長期的に持続可能なスポーツにすることを目指した改正となった。この記事では、2023年に改正された16のルールを解説する。
配信日時:2023年4月6日 04時40分
- 1.初心者も知っておきたいプレー進行に関する5つの改正点
- 【1】自立式パターで方向を確認することが2025年から規則違反になる
- 【2】自然の力が動かしたボールが他のエリアなどに転がった場合リプレースしなければならなくなった
- 【3】間違ってボールを取り替えたときの罰が軽減される
- 【4】後方線上の救済エリアの範囲が「どの方向にも1クラブレングス以内」に広がった
- 【5】地面にくい込んだボールの救済の基点がジェネラルエリアに制限された
- 2.競技ゴルファーが押さえるべき6つの改正点
- 【6】障がいを持つゴルファーが競技に出やすくなった
- 【7】プレー中に破損したクラブの交換が可能になった
- 【8】2つ以上のルール違反の数え方がシンプルになった
- 【9】クラブ特性を変えるものに「外部付属物」が明記された
- 【10】ボール捜索の追加時間が1分と明記された
- 【11】パットしたボールが虫に当たったときに再プレーできなくなった
- 3.「競技委員をやる!」というルールマイスターならチェックしたい5つの改正点
- 【12】スコアカードにハンディキャップを記載する責任が競技委員会側にあると明記された
- 【13】どのエリアであってもプレーの線を示すために物を置くと一般の罰が科されることになった
- 【14】キャディーが立ってはいけない区域とタイミングが明文化された
- 【15】グリーンリーディング資料の使用制限がグリーン上でのストロークに限定された
- 【16】レフェリーがライを悪化させた場合に復元できるようになった
- 4.まとめ
1.初心者も知っておきたいプレー進行に関する5つの改正点
競技への出場の有無に関係なく、普段プレーする際に関係する変更であるため、初心者からベテランゴルファーまで幅広く押さえていてほしい規則として、以下の5つを解説する。
- 【1】自立式パターで方向を確認することが2025年から規則違反になる
- 【2】自然の力が動かしたボールが他のエリアなどに転がった場合リプレースしなければならなくなった
- 【3】間違ってボールを取り替えたときの罰が軽減される
- 【4】後方線上の救済エリアの範囲が「どの方向にも1クラブレングス以内」に広がった
- 【5】地面にくい込んだボールの救済の基点がジェネラルエリアに制限された
【1】自立式パターで方向を確認することが2025年から規則違反になる
2023年の改正によって、アライメントを確認するための使用が認められないことが明記され、2025年1月1日より施行されることとなった。2025年からはボールのすぐ後ろに自立式パターを置き、後方からラインを読むなどの行為をすると、2打の罰が科されることとなる。ただし、用具規則に適合したパターであれば、単純にストロークを行うためには使用可能だ。
【2】自然の力が動かしたボールが他のエリアなどに転がった場合リプレースしなければならなくなった
2023年の改正により、ドロップ、プレース、リプレース後に止まったボールが、風や傾斜などの「自然の力」によってボールが動かされ、他のエリアやペナルティーエリアなどに止まった場合に、リプレースすることが義務となった。
これまでは、ドロップなどしたボールが静止してインプレーになった後に自然の力によって動かされた場合であっても、あるがままにプレーしなければならなかった。例えば、池から1打罰の救済を受けて、ジェネラルエリアにドロップして一旦止まったボールが傾斜で動き出して池に落ちてしまった場合、再度1打罰でドロップするしかなかったのだ。
しかし、今回の改正によって無罰で元の位置にリプレースができるようになり、より公平性が増したといえるだろう。
【3】間違ってボールを取り替えたときの罰が軽減される
これまでは、プレー中に間違ってボールを取り替えた場合一般の罰(ストロークプレーで2打罰、マッチプレーではホールの負け)だったが、2023年の改正によって1打の罰に軽減された。
特に注意してほしいのはグリーン上だ。グリーン上でマークした際にポケットにボールを入れ、取り出すときに予備のボールと間違えてしまうことが想定される。取り間違えて1打が加算されては非常にもったいない。必ず同じボールを使うようにしよう。
「【2023年ゴルフルール改正】ボールを取り替えてプレーした罰が2打から1打に軽減」では、ボールを取り替えられる場合についても紹介している。
【4】後方線上の救済エリアの範囲が「どの方向にも1クラブレングス以内」に広がった
今までは基点よりピンに近づかないようにしなければならなかったが、2023年からは1クラブレングス以内に止まれば救済が完了となり、プレーを再開できるようになった。
詳しい救済方法については「【2023年ゴルフルール改正】後方線上の救済エリアが『どの方向にも1クラブレングス』に広がった」を確認しよう。
【5】地面にくい込んだボールの救済の基点がジェネラルエリアに制限された
2023年の改正によって、地面にくい込んだボールの救済の基点は、ジェネラルエリア(ティーイングエリア、ペナルティエリア、バンカー、パッティンググリーン以外のすべての場所)に制限されることとなった。これにより、ボールの直後にジェネラルエリアがない場合、基点が決められなかったという問題の解決が期待されている。
地面にボールがくい込んだときの対処法については「【2023年ゴルフルール改正】地面にくい込んだ球の救済 基点がジェネラルエリアに制限された」を確認しよう。
2.競技ゴルファーが押さえるべき6つの改正点
競技に出るのであれば、1打で勝敗が左右することもあるため、以下の6つの改正点は必ず押さえておこう。
- 【6】障がいを持つゴルファーが競技に出やすくなった
- 【7】プレー中に破損したクラブの交換が可能になった
- 【8】2つ以上のルール違反の数え方がシンプルになった
- 【9】クラブ特性を変えるものに「外部付属物」が明記された
- 【10】ボール捜索の追加時間が1分と明記された
- 【11】パットしたボールが虫に当たったときに再プレーできなくなった
【6】障がいを持つゴルファーが競技に出やすくなった
これまでオフィシャルガイドの巻末に掲載されていた「障がいを持つプレーヤーのためのゴルフ規則の修正」がゴルフ規則の25条として明文化された。すべての競技で適用されることになり、障がいを持つゴルファーが競技へ参加しやすい環境が整った。
この規則は、障がいを持つゴルファーがプレーする際に規則違反とならないためのルール。例えば、盲目のプレーヤーがスタンスを取るときや目標を定めるときなどに補助員から支援を受けられるといったように、本来規則違反である行為が認可されている。
障がいを持つプレーヤーのためのゴルフ規則の修正については「【2023年ゴルフルール改正】障がいを持つゴルファーがより競技に出場しやすくなった」にて解説しているので、ぜひご覧いただきたい。
【7】プレー中に破損したクラブの交換が可能になった
これまでは、ラウンド中のクラブ交換は原則認められていなかったが、2023年からシャフトが折れたり、ヘッドにヒビが入ったりといった場合交換できるようになった。ただし、自分のプレーに腹を立てて、クラブを折ったり、叩きつけたりといった乱暴に扱ったケースは適用外だ。
交換するときの注意点については「【2023年ゴルフルール改正】ラウンド中に破損したクラブの交換が可能に! 交換時の注意点も解説」で確認しよう。
【8】2つ以上のルール違反の数え方がシンプルになった
2023年からは、複数の違反の間に「ストロークの終了」「違反に気付く」のいずれかが介在したかによって重課するか決まるようになった。これまでは、これに加えて「複数の違反が関連するかどうか」についても決定する必要があり、判断に時間がかかっていた。
今回の改正によって、バンカーで素振りをして砂に触れると2打罰だが、2回砂に触れたとしても介在した出来事の有無によって2打罰と4打罰と分かれることになる。それぞれのケースについては「【2023年ゴルフルール改正】複数の規則違反に対する罰の適用が、わかりやすくなった!」で解説しているので、確認しておこう。
【9】クラブ特性を変えるものに「外部付属物」が明記された
ラウンド中にクラブ特性を変えてプレーすることは違反となるが、クラブ特性を変えるものとして「外部付属物(ステッカーなど)」が追加された。ただし、ストローク前に元の状態に戻せば、罰なしにそのクラブを使用することは可能だ。
クラブ特性の変更についてや、詳しい変更点については「【2023年ゴルフルール改正】クラブ特性を変えるものとして「外部付属物」も追加された」を確認してほしい。
【10】ボール捜索の追加時間が1分と明記された
ボール捜索のタイムリミットである3分ギリギリでボールが遠くで見つかった場合、確認するための時間として1分が追加されることが明記された。ボール探しに使える時間は3分間と決められており、これを超えると紛失扱いになる。これまでも球を確認する合理的な時間が認められていたものの、時間までは指定されておらず、困惑するケースもあったため明記されたようだ。
追加時間が認められるケースや紛失となったときの対処法などについては、「【2023年ゴルフルール改正】ボールの捜索時間3分から延長できるケースが明記された」をチェックしておこう。
【11】パットしたボールが虫に当たったときに再プレーできなくなった
グリーン上でパットした球が虫に当たった場合、これまでは罰なしで再プレーしなければならなかったが、2023年の改正によりあるがままにプレーすることが定められた。
また、パットしたボールが偶然人や動物に当たった場合にはこれまで通り再プレーが必要になるが、再プレーしなかった場合に一般の罰(ストロークプレーでは2打の罰、マッチプレーではホールの負け)となり、誤所からのプレーとはみなさないことも明記された。
3.「競技委員をやる!」というルールマイスターならチェックしたい5つの改正点
競技委員をやる機会の多い方や、ルールを全部把握しておきたいという方は、以下の5つも確認しよう。
- 【12】スコアカードにハンディキャップを記載する責任が競技委員会側にあると明記された
- 【13】どのエリアであってもプレーの線を示すために物を置くと一般の罰が科されることになった
- 【14】キャディーが立ってはいけない区域とタイミングが明文化された
- 【15】グリーンリーディング資料の使用制限がグリーン上でのストロークに限定された
- 【16】レフェリーがライを悪化させた場合に復元できるようになった
【12】スコアカードにハンディキャップを記載する責任が競技委員会側にあると明記された
2023年の改訂では、ハンディキャップ競技において、各プレーヤーのハンディキャップを記入することが、競技委員会側の責任となった。
これまでハンディキャップ競技では、スコアカードに自分のハンデキャップを正しく記入することはプレーヤーの責任であり、誤った情報が記入されたスコアカードを提出した場合、競技失格となる可能性があった。
しかし、今回の改正により、運営側はスコアカードを受け取った時点で、「プレーヤーのスコアを加算すること」「競技のためのハンディキャップストロークを計算し、ネットスコアを計算するために使用すること」の責任を負うことが明文化された。
【13】どのエリアであってもプレーの線を示すために物を置くと一般の罰が科されることになった
これまでプレーの線を示すために物を置くこと自体の禁止はパッティンググリーン上の球をプレーする場合に限られていたが、2023年の改正では、コース上のどのエリアであっても、プレーの線を示すために物を置くことはできなくなった。
この規則に違反、つまりプレーの方向を示す目印として物を置いた時点で一般の罰を受けることになり、ストローク前に取り除いても罰を免れることはできない。
【14】キャディーが立ってはいけない区域とタイミングが明文化された
プレーヤーがスタンスをとった後にキャディが後方に立つことは規則違反となるが、2023年の改正によりどのエリアにいつから立ってはいけないかが明文化された。
立ってはいけない区域は「制限される区域」と呼ばれ、プレーの線の延長線上やその近くと定義されている。また、タイミングについては、スタンスのための場所に少なくとも片足を置いた時点からストロークを行うまでの間に立ってはいけないことと定められた。
【15】グリーンリーディング資料の使用制限がグリーン上でのストロークに限定された
2023年のルール改正により、グリーンリーディング資料の使用制限がグリーン上でストロークするときだけとなった。これまでは、グリーン外からパターを使ってカップを狙うときも使用制限があったが、今回の改正によって対象から外れた。
ちなみに、グリーンリーディング資料の使用制限が定められている理由は、グリーンを読む能力がパッティング技術の本質的な一部となり続けるため。縮尺やサイズを規定することで、資料ばかりを頼っての判断を防ぎ、プレーヤー自身の判断を促進させる狙いがある。
【16】レフェリーがライを悪化させた場合に復元できるようになった
2023年の改正によって、レフェリーが止まっているボールのライを悪化させた場合に復元できるようになった。例えば、ボールの捜索中にレフェリーがバンカー内に足跡をつけてしまったときなどに、元の状態に復元できるのだ。
ただし、これまでどおり、プレーヤー自身やプレーヤーのキャディ、そして自然の力によって悪化した場合は復元できないので注意しよう。他にも復元が認められるケースがあり、「【2023年ゴルフルール改正】ライが悪化した原因が『レフェリー』であれば復元可能に」で紹介している。
4.まとめ
2023年に改正されたルールは16個あった。2019年の大幅な改正と比べるとマイナーチェンジであるが、ゴルファーにとっては見逃せないものばかりだ。特に、競技に出る人、これから出ようと思っている人については、覚えておかないとスコアが左右されてしまうので、しっかり覚えておこう。