ボールを打たなくても上達はできる【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
コロナ禍全盛期にはコースランドも制限されるなど、ゴルファーにとっても我慢の日々が続いた。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「ラウンドがしにくいときこそ上達のヒントを身につけるのに最適な時といえます」という。自宅にいて、お金もかからず、誰にでもできる自律神経を整えるコツとは?
配信日時:2023年3月29日 23時30分
いよいよ春のゴルフシーズン到来です。新型コロナウイルスが強い勢いで蔓延していたころは、コースでのラウンドも制限されるなど、ゴルフを我慢されている方も多くいらっしゃったかと思います。季節がよくなってもラウンドできないというのは残念でしたが、そのようなときこそ技術面ではなく自律神経の整え方を練習しておきたいものです。案外上達のヒントもコースから離れているときのほうが見つかるものです。
■無意識のリキミが交感神経を高める
ゴルフで自律神経のバランスを乱す最も大きな原因は、いわゆる“リキミ”が無意識のうち
に入ってしまうことです。例えば、ティショットなら朝イチホールに、パー3ホール、ラコンホール、谷越えなど。
第2打なら池越えやバンカー越え、また直接グリーンを狙うショットなどはリキミを招きやすい状況といえます。
どうしても「ボールを飛ばしたい」、「いいショットを打ちたい」と思うあまり、力が入って筋肉は硬くなり、関節もスムーズに動かなくなってしまうからです。緊張や不安によって気持ちも落ち着きません。
このような過緊張状態に陥ると、たちまち血流が悪くなります。手先の感覚や体の柔軟性は失われ、また呼吸は浅くなって急激に交感神経が高まるのです。
■息を吸う倍の長さでゆっくり息を吐く
リキミをなくす、つまり心身をリラックスさせるために最も有効なのは、ありきたりに聞こえるかもしれませんが深呼吸です。私がオススメするのは「ワン・ツー呼吸」といって、息を吸う長さを1とすると、それに対して息を吐く長さを2にする呼吸法です。
例えば、「イーチ、ニー」と数えながら息を吸ったら、「イーチ、ニー、サーン、シイ」で息を吐きます。もし「…サーン」まで息を吸ったら、息を吐くときは「…ローク」まで数えます。大切なのは息をたくさん吸い込むことではなく、倍の長さをかけて息を吐き切ることに尽きます。
ゆっくり息を吐くことによって副交感神経の働きが優位になり、心身の緊張が緩んでリラックスできるからです。血流がよくなって毛細血管まで流れ、高まった交感神経も落ち着いて自律神経が整います。
これをショットの前に3~5回繰り返すことで肩や腕のリキミはかなり消えますので、お試しください。
ラウンド中にこの呼吸をするには、普段から深い呼吸を心がけることも大事です。毎晩寝る前に行うと決めて、ベッドに入ったらワン・ツー呼吸法を習慣にしましょう。1分間で十分です。コースに出られなくても自律神経を整えるコツが身につきます。小さな心がけですが、きっとよいパフォーマンスにつながりますよ。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。