おやじゴルフニュース「気づいたら違う山に登っていた」
ゴルフはそこそこそのキャリアを積んでいくと、マンネリや金欠、はたまた体の痛みなどさまざまな問題を抱えながら続けてゆくこととなります。そのとき感じているのは、ゴルフ道を極めようとガムシャラに目指していた目標を失う虚無感。ここらでひと息入れてみませんか。コラムニスト木村和久が、エンジョイゴルフの本質と核心、そしてこれからどうやってゴルフ生活を楽しんでいけばいいのかを提案し、マンガ家・とがしやすたかのイラストと共に旬なゴルフ情報をお届けします。
配信日時:2023年4月4日 03時00分
ゴルフは何かしらの目標を立てて、日々エクササイズするものですが、我々はしょせんアマチュアです。なんとか目標の山に到達したつもりだったが、周りを見回すや、どうも想像していた景色と微妙に違う。なんか変だな~、そういうことが往々にしてあります。
例えば六本木なら、六本木ヒルズのテッペンを目指していたのに、ミッドタウンの上層階にいたとかね。しかもミッドタウンならまだましで、実際は古い雑居ビルの10階に登っていたなんてことがよくあります。
ゴルフなら、松山英樹選手を目指していたのに、チェ・ホソン選手に似てしまった。これは五十肩をやったとき、くるりんと体を回転して打つ姿がチェ・ホソン選手と似ていたからです。単にフォロースイングが似ていただけで、腕前は月とスッポン。チェ・ホソン選手には足元にも及びませんがね。
そんなわけでスランプ中にもがいてもがきまくり、別な山に登ってしまった話をしたいと思います。
昨年の秋ごろは調子がよくて、アイアンなんかも振り回していたのですが、急に当たらなくなり、どうしたものか? そこでレッスンプロのところに行って、スイングチェックをすれば済んだ話ですが、レッスンプロ恐怖症なもので二の足を踏んでしまいました。
プロのレッスンを否定するわけではありませんが、過去に仕事がら沢山のレッスンプロ、プロ選手に教わって相性が合わない場合もあり、ためらってしまうのです。仕事がら気軽に話せるレッスンプロを知っていますが、近所にはおりません。
わざわざ遠いところに行って、丸1日潰すのも面倒臭い。近所の練習場で知り合いに30分ぐらい見てもらい、「あ~分かった」みたいなことが理想です。今は残念ながら、そういう環境ではないのです。
結局、教わることを諦め、自分のできる範囲での解決を試みます。それはニューギア導入で乗り切ろうというアイディアでした。しかもアイアンが当たらないのはいつもどおりだけど、それがウェッジまで感染しアプローチイップスになってしまいました。
そこでやったのが、ショートUTを大量に買い込んでオールUTでラウンドする作戦です。そこまではなんとか誤魔化すのに成功し、100前後で回ってこれたのですが、究極の大問題が露呈します。
それがバンカーショットです。そもそもウェッジでアプローチショットが出来ないのですから、サンドウェッジでバンカーショットをするのは非常に難しい。シャンクは当たり前だし、万が一シャンクにならなくても、ボールがバンカーから出ない。それはエクスプロージョンショットをしてないというか、出来ないからです。
だからラウンド中、ボールが出なくて4~5回繰り返してバンカーショットを打ったことがあります。自慢じゃないですが、過去においてはショートホールでバンカー無間地獄に陥り、確か17打と思うのですが、それぐらい叩いたことがあります。それに比べればショートホール10打未満は大したことはないのです。
そこを自慢してどうする。
後日悩んだ挙げ句、ショットするからダメなんだ、スライドさせればいいと気づき、ネットオークションでチッパーを買うことになりました。もうここで、また違う山に登り始めているんだから、笑っちゃいますよね。
とにかくボールがバンカーから出ない、ならばロフト55度のチッパーなら出るんじゃないか。藁をもすがる思いで購入し、ホームコースにあるバンカー練習場で打ってみました。
この練習場の砂が硬くてというか、少なくて、ボールが弾かれてばかりいてふわっと上がらない。そこをなんとか踏ん張って、とりあえず出るようにしてラウンドしました。このコースのいいところは、コースの砂のほうが幾分柔らかいということ。これで助かりました。
その後も、変形性指関節炎になってグリップ力低下、だからって太くて握りやすいグリップに10本以上交換してしまうし。これは古いすり減ったグリップもあったので、やってよかったことにしましょうか。でも実際は3本ぐらいで済んだんですけどね。
いろんな間違った山に登った挙げ句、ある専門家に偶然見てもらうチャンスがあり、そこで悩んでいたことが大分解決しましたって。今までの苦労はなんだったんだよ~。
特にバンカーに関しては、日頃打っていないのが最大の原因でした。というのも通っている練習場にバンカーがないのです。だから自宅近くでバンカー練習することは皆無でした。これはいかんと一念発起。少し遠いところですが、バンカーがある練習場で特訓しまくり。これがマジよかった。そこは砂が豊富にあり、たっぷりめの砂や、薄い砂など自在に砂の量を調整できるのです。
そこで30分ぐらいみっちりやると、すげえうまくなりました。なんだよ、最初からバンカーで練習する癖をつけとけばいいんだよ。今頃気づくなってことですね。
というわけで、人生何度目かのスランプを脱出することが出来ました。これは長い人生のリアルスランプにも共通することで、幾ら頑張ってもダメなときがあると痛感しています。個人的には、東日本大震災が起きた12年前ですか。実家の宮城も被災して大変だし、東京ではゴルフをやる雰囲気じゃないし、仕事もみるみる減って行きました。
あのときは苦しかったな~、出口が見えてない意味では令和のコロナ騒動の比じゃありません。それから何年かかけて、少しずつ仕事を増やしました。そういう苦労に比べればゴルフのスランプなんて、しょせん道楽ですからね、ちょうどネタに出来て好都合ぐらいの扱いです。
ただスランプを克服した結果は、もの凄く自信になりました。もし克服できてないなら、何年も低迷します。最悪、ゴルフの引退もありえますからね。
そしてゴルフの登るべき山ですが、たぶん未だ違う山を登っている気がしないでもないです。確かにクラブがちゃんと当たるようになりました。じゃ7番アイアンを今後、打って
いくかというと打たないでしょう。
戻ったとはえ、自分のスイングはUT用に長い年月をかけて改造してしまったからです。まさに「人造人間キカイダー」みたいなものですか。いや~「妖怪人間ベム」に近いか、変則の昭和のゴルファー、一丁あがりってわけです。
アマチュアゴルファーの9割以上は、自己流だと思います。何しろ昭和の頃は、プロですら変則打法をする人が沢山いましたから。アマチュアで綺麗なスイングをする人は、どこぞのゴルフ部出身ですか、と聞かれたものです。それぐらい変則派が多かったのです。
そんなわけでスイングに関しては、下手の固め打ちを続けて安定した飛距離と方向性を維持したいと思います。そして競技ゴルフで活躍した頃を思い出し、やることは現場力向上です。特にホームコースは、何回もラウンドして実際の距離感を養い、ここは大きめに打つ、あるいは手前からとかね、そういう戦略を練りたいと思います。
やっと競技に出られるスタート地点に立つことができました。ちなみに最近取得したハンデキャップは23程度です。
今、競技に出たら凄く美味しいかな。でも好成績を残しても、「お前わざと悪いスコア出していたろう」と言われそうで。ちゃんとやればハンデ20は切れると思いますし、けどそこじゃ入賞しないしと、痛し痒しです。
いま物凄くゴルフがしたいです。単に普通にラウンドしたい。元に戻ったショットで、こつこつボギーを取って行きたい。パーを狙わないところが、だいぶ大人になった証でしょ。今後、小さな武勇伝をお聞かせしますので、しばしお待ちを。
■プロフィール■
木村和久
きむら・かずひさ/1959年生まれ、宮城県出身。世の中のトレンドを追求し、ゴルフや恋愛に関するコラムを多数執筆するほか、マンガ原作も手がける。隔週刊ゴルフ誌「ALBA」ほか、連載多数。
とがしやすたか
1959年生まれ。東京都出身。「青春くん」などで知られる4コマ漫画家。ゴルフ好きが高じて雑誌でラウンドレポートなども展開。
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