究極の水平スイング! 渋野日向子の“低いトップ”は「ベン・ホーガンに一番近づける選手です」【世界で戦うドラテク】
低いトップから平均飛距離255.47ヤード飛ばす渋野日向子のドライバースイングを、プロコーチの森守洋氏が解説する。
配信日時:2024年9月2日 21時34分
世界最高峰の米国女子ツアーでは、ドライバーで平均250ヤード以上飛ばし、70%以上の確率でフェアウェイを捉えてくる選手たちがしのぎを削る。今回取り上げるのは米ツアー3年目のシーズンを戦う渋野日向子。低いトップから平均255.47ヤード飛ばし、72.76%の確率でフェアウェイを捉えるドライバースイングを、プロコーチの森守洋氏が解説する。
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渋野選手は腕の長さを生かして飛ばしているのが特徴です。スイング中にグリップと体の距離が変わらないため、『グリッププレーン』が安定している。多くの人はクラブの軌道、スイングプレーンのことを考えていますが、グリップのプレーンが安定しているほど、その先にあるヘッドの軌道も安定するのです。
世の中で一番グリッププレーンをイメージしやすいのはブライソン・デシャンボー。彼も渋野選手同様にハーフウェイバックまで両ヒジを伸ばしたまま腕の三角形が崩れないから、毎回同じところに上がります。余談になりますが、アプローチイップスになる人はフェース面の使い方がめちゃくちゃ上手いので、グリッププレーンが崩壊していることが多いですね。
もう一つの長所はトップ。クラブを持ち上げる動きが全くありません。「トップが低い」といわれますが、調子が悪かったときはインサイド・アウトが強かっただけ。僕は大好きなスイングです。他のプロゴルファーのトップがこんなに低くないのは、クラブが上方向に持っていかれるから。渋野選手は持ち上げる前に戻しているからトップが低くなります。これだけいいトップをしていたら曲がらないはず。史上最高のボールストライカーと呼ばれたベン・ホーガンに一番近づける選手です。
「高いトップの方が位置エネルギーが高い」とか、「重力を生かして飛ばせる」と言われたりもしますが、データ的にはスピードにあまり関係がないことが分かっています。250ヤード飛ばす選手では、高いトップと低いトップで飛距離に60センチくらいしか差がない。同様に背が高い選手が飛ぶと思われがちですが、低い選手でも飛ぶ選手は多いです。
水平素振りを前傾しただけのスイングなので胸の前からグリップが外れない。アマチュアゴルファーはむしろ低いショートトップを真似した方が再現性は高くなります。テークバックでヒジを曲げてしまうと、グリップと体の距離が変わってしまうので、スイング中は下向き(地面方向)に力を入れ続けることでグリッププレーンが安定します。
■渋野日向子
しぶの・ひなこ/ 1998年生まれ、岡山県出身。2019年の「全英AIG女子オープン」優勝し、日本勢2人目となる海外メジャー制覇を達成。今季は「全米女子オープン」で2位、「全米女子プロ」で7位タイに入るなどポイントを積み重ね、来季のシードを決めている。サントリー所属。
■森守洋
もり・もりひろ/1977年生まれ。静岡県出身。ゴルフを始めたのは高校から。95年に渡米しミニツアーを転戦しながらゴルフを学んだ。02年からレッスン活動を開始し、現在は原江里菜、堀琴音、香妻陣一朗のコーチを務めている。東京都三鷹市にある『東京ゴルフスタジオ』を主宰し、YouTubeチャンネル「森守洋のGolf TV」では、ツアープロや芸能人などへのレッスンを配信中。
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●世界ランキング1位に君臨するネリー・コルダ(米国)は、平均飛距離267ヤード、フェアウェイキープ率72.47%を誇る。関連記事の【松山英樹っぽい!? 世界女王のネリー・コルダは“ネジレ”も最強だった】では、プロコーチの森守洋氏が飛んで曲がらない秘密に迫っている。