米国女子ツアー「ファウンダーズカップ」の会場で渋野日向子の連続写真を撮影。早速プロコーチの大西翔太に解説してもらった。果たして現在のスイングはどうなっているのだろうか?
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腕の長さを生かして飛ばすスイングですね。スイング中にグリップエンドと体の距離が変わらないため、ヘッドの軌道も安定しています。さらに、グリップのプレーンも安定しているから飛んで曲がらないのだと思います。渋野選手のスイングでアマチュアもマネできるのが低いトップ。コンパクトなトップはアドレスから両腕で作る三角形が崩れにくいので、スイングの再現性を高められますよ。
彼女は切り返しのときに、左手首の掌屈を入れるタイプ。手首が柔らかいからこそできる動きであり、掌屈によってフェースが閉じます。これは、今どきの重心距離が長い高MOIヘッドと相性がいい動きです。掌屈でフェースを閉じていれば、余計なアームローテーションが必要ありません。まさに最先端のスイングだと思います。
持ち球はドローボールですが、スイングを見た限りでは、以前のインサイド・アウト軌道から、イン・トゥ・イン軌道に多少修正されている印象です。アウトに振り抜くよりもインに振り抜く方が、プッシュのミスが出ず、ナチュラルにドローが打てると思います。
スイングアークが非常に大きいのも渋野選手の特徴ですが、以前よりもフォローサイドが大きくなっているように見えます。ポイントは下半身の粘り。右足を内側に倒して粘りつつ、左足で地面を蹴っています。これによって大きなフォローを作り出し、飛距離を稼げているのでしょう。下半身が飛距離を、ショートトップで方向性をもたらしていますね。
彼女が曲がる可能性があるとしたら、インパクトで左足に乗り切らずにあおり打ちになるか、上体が突っ込むかのどちらかだと思います。写真を見る限りは、頭を右に残しながら、インパクトで左に乗って、大きく振り抜いています。右肩がインパクトで前に出ず、胸が右を向いたまま振り抜けるため、ドローが打てている。今年は悪い部分がそぎ落とされている印象。クラブも思い描いた14本に変えて、さらに良さが出せると思います。
■渋野日向子
しぶの・ひなこ/1998年生まれ、岡山県出身。2019年海外メジャー「AIG女子オープン」(全英女子)で初出場初優勝。昨季は「全米女子オープン」で2位に入るなど米女子ツアーのシード権を獲得。サントリー所属。
■大西翔太
おおにし・しょうた/1992年生まれ。千葉県出身。PGAティーチングプロA級を取得。2015年から青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務めて、5勝を挙げることに貢献。理論的なレッスンでアマチュアにも人気。
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