ゴルフスイングはボディターンじゃない?今どきは手打ち? 正解はバランスにあり!
ゴルフを始めたころから「手打ちはダメ、ボディターンで打て」とよく耳にしてきたと思います。しかし最近では、アマチュアこそ「手打ち」で打つべきだという声もあり、一体どっちが正解なのか、ボディターンは時代遅れなのかと悩んでいるゴルファーもいるのではないでしょうか。この記事では、ゴルフスイングのボディターンとリストターンの特徴、そしてあなたがどっち派か見極める方法を解説し、最適なバランスを取れる練習方法について探っていきます。
配信日時:2024年9月27日 10時07分
- 1.ボディターンとリストターンって何?
- ボディターンとリストターンの違い
- ゴルファーによって「主導タイプ」がある
- ボディターンとリストターンは補完的な関係にある
- 2.「手打ちは悪い」はもう古い?
- なぜ手打ちは悪いとされてきたのか?
- 近年、腕や手首の動きの重要性が改めて注目されている
- 昔からレジェンドたちはバランスを重視していた
- 3.やり過ぎのデメリットにも注意しょう
- リストターンのやり過ぎによるデメリット
- ボディターンのやり過ぎによるデメリット
- 4.自分はボディ派?リスト派?見極め方
- 感覚チェックで自分のフィーリングを確認しよう
- 重い物を引いたり押す動作から自分の体の使い方を知ろう
- スイング動画から客観的に分析しよう
- 5.ボディターンとリストターンのバランスが整うドリル【2選】
- 【1】体と腕の一体感を高めるスプリットハンドドリル
- 【2】体のちょうど良い回転がわかるクロスハンドドリル
- 6.まとめ
1.ボディターンとリストターンって何?
ゴルフスイングにおいて、インパクトでクラブをリリース(解放)するスタイルには、大きく分けて2つのアプローチがあるとされています。
それが、体の回転を重視する「ボディターン」と、手首と腕の動きを重視する「リストターン」です。
ボディターンとリストターンの違い
ボディターンは、体の回転を主導にするスイングスタイルです。体幹や腰の回転を使うことで、フェースを返す動きが安定するためショットの方向性を出しやすいのが特徴です。
ただし、柔軟性や体幹が弱いと、ボディターンを効果的に使いこなせないことも。また、スイング中に体を積極的に回転するため、やり過ぎると腕が体から離れやすくなり、インパクトで腕の振りが遅れて詰まる「振り遅れ」のミスが起こりやすいデメリットもあります。
一方で、リストターンは前腕の回旋(ドアノブを回す動き)と手首のスナップ(フリスビーを投げる動き)を使ったスイングスタイルです。瞬間的にヘッドを加速させて飛距離を出しやすいメリットがあります。
しかし、フェースの開閉が大きく変動するため、タイミングがズレると、ミスショットにつながるリスクもあります。また、手や腕の力に頼りすぎると、総合的なパワー不足に陥ることも。
ゴルファーによって「主導タイプ」がある
ゴルファーによっては、それぞれのスイングの特徴や得意なショットによって、ボディターンかリストターンのどちらかが顕著になることがあります。
たとえば、ボディターン派は、柔軟性が高く体全体を使うスイングを得意とする人が多く、特にフェードを好むゴルファーに多いようです。代表的なプロには、ダスティン・ジョンソン(米国)やウィル・ザラトリス(米国)、河本力などがいます。また、野球経験者は体の回転を大きく使う動きに慣れているため、ボディターンが強く出やすいといわれています。
一方で、リストターン派は、パワーを重視するスイングや手先の繊細なコントロールが得意なゴルファーが多く、ドロー系のショットを持ち球とするゴルファーに多い傾向があります。フィル・ミケルソン(米国)、ローリー・マキロイ(北アイルランド)がその代表です。リストターンは、テニスなど手首を使うスポーツの経験者に多いようです。
そして、どちらの特徴も持たない、ボディターンとリストターンのバランスが取れているスイングを持つゴルファーもいます。ネリー・コルダ(米国)やルドビグ・オーバーグ(スウェーデン)がその例です。
自分がどちらの主導タイプかの調べ方は、後ほど詳しく説明します。
ボディターンとリストターンは補完的な関係にある
ゴルファーによって主導タイプがあるものの、どちらか一方のスタイルが優れているわけではなく、ボディターンとリストターンは補完的な関係にあります。
たとえば、ボディターンを主に使うゴルファーであっても、適切なタイミングでリストターンを使うことで、スイング全体のバランスが良くなり、飛距離と安定性が増します。
また、タイガー・ウッズのように、通常のショットではリストターンを多く用いながらも、フェードショットではリストターンを抑えるといったように、ショットごとに異なるスイングテクニックを使い分けるプロもいます。
重要なのは、自分のスイングスタイルの特性を理解し、狙いたいショットに応じて、ボディターンとリストターンを適切に組み合わせることではないでしょうか。
例えば、ボディターン派の河本結は、体を素早く回転させつつ、手元や腕が体から離れないように注意しながら、クラブが正しいポジションに入ってくるかを常に確認しているのだそうです。
詳しい解説は「超速ボディターンで力から強く“空中のイメージ”沸かせる河本結は米国でもおもしろい【辻にぃスイング見聞】」をご覧ください。
2.「手打ちは悪い」はもう古い?
かつては「手打ち」がスイングの悪癖とされていたので、手を使うことを避けるあまり、腕をまったく振れていないアマチュアが今でも多くいます。
しかし、今どきのスイングは適切に「手を使う」ことこそが、むしろ重要だという考え方もあるのです。
なぜ手打ちは悪いとされてきたのか?
これまで、手打ちは前述したようなミスショットや、ボールが左右に曲がる原因とされていたため、ボディターンが推奨されていました。
足腰に比べ、体の中で器用に動かせてしまうのが手や腕。アマチュアゴルファーは、力いっぱいボールを打とうとする際に、どうしても手や腕に頼りがちです。こうなると、クラブと体の動きが連動しない「バラバラなスイング」になり、インパクトで手首を過剰に動かす打ち損じを招いてしまいます。
また、ボールをずっと見続けようとしたり、右膝を固定してバックスイングすることで体の回転が制限され、結果として手打ちに陥りやすい状況が生まれていたといいます。このような理由から、かつては体を使う「ボディターン」が推奨されていました。
今どきの良い手打ちと悪い手打ちについて知りたい人は、「球が捕まらない原因はボディターン⁉︎ 藤田さいきが考える“良い手打ち”と“悪い手打ち”の違いとは」をご覧ください。
近年、腕や手首の動きの重要性が改めて注目されている
そんな中、最近では、体とクラブをつなぐ唯一の接点である「手」をアマチュアこそうまく使うべきだ、という考えが広まっているといいます。
これには、手の動きに特化した近年のスイング解析技術(HackMotionやJacobs 3Dなど)の研究が大きく貢献しており、スイング中の手首の曲がる方向や角度、回旋する速度、そしてグリップにかかる力などを計測できるようになったためです。
その結果、ヘッドスピードを加速させ、スイング全体のパフォーマンスを向上させるためには、手の動きを適切に使うことが、むしろ重要であるという考えが定着してきました。
昔からレジェンドたちはバランスを重視していた
タイガー・ウッズは、1996年にプロ転向した当初、「オーレ!スイング」というダウンスイングで手元が詰まる問題に直面していました。これは、ダウンスイングでボディターンが過剰に先行すると腕が振り遅れてしまい、インパクトで手元が詰まるため、リストターンを使ってフェースを無理にスクエアにしようとするものです。
タイミングがズレると、右にプッシュしたり、逆に左に引っかけたりするため、タイガー自身も「うまくいくときもあれば、そうでないときもあり、ボールがどこへ飛ぶかわからなくなることもあった」と語っていました。
当時タイガーのコーチをしていたブッチ・ハーモンは、この問題を解決するために、ダウンスイングの最初の動きでボディターンを抑え、左への体重移動と腕を体の前に下ろすことを徹底的に教えました。
このスイング改造が功を奏し、タイガーは2000年から2001年にかけて、4つのメジャートーナメントを連続で制覇した「タイガースラム」を果たしたといわれています。
同じように、ゴルフ界のレジェンドの一人であるベン・ホーガンは、若いころに強いフックに悩まされていました。この原因は、過剰なリストターンにありましたが、ホーガンは体幹を主導とするボディターンを取り入れ、リストの動きを最小限に抑えることでスイング全体のバランスを改善し、精度の高いフェードを得意とするようになったんだといいます。(参考書籍: The Modern Fundamentals of Golf)
この二人に共通することは、ショットの悩みとその原因を理解し、問題を解決する手段としてリストターンやボディターンを調整していた点です。
3.やり過ぎのデメリットにも注意しょう
ゴルフスイングにおいて、ボディターンもリストターンも必要な要素です。しかし、どちらか一方が過剰になると、クラブが間違った方向へ動き出すため、思わぬミスを招くことがあります。
特に、急激な動きは関節に大きな負担をかけ、怪我のリスクを高めるため、過剰なボディターンやリストターンには十分な注意が必要です。
リストターンのやり過ぎによるデメリット
リストターンが過剰になると、インパクトで手首の動きが強調され、ボールが左右に大きく曲がる原因になります。
たとえば、クラブフェースがスクエアや少し開いた状態でトップポジションに到達しているにもかかわらず、ボールが左に飛ぶときは、ダウンスイングでリストターンが過剰におこなわれている可能性があります。フォロースルーで左手の甲が地面を向いてしまっていないか確認してみてください。(右打ちの場合)
特に、中級者から上級者に多いこの左へのミスは、インパクトゾーンで体の回転が止まることでリストが過度に動き、フェースが早く閉じボールが捕まりすぎることが原因です。このような場合、体の回転を止めずに、リストの動きをゆっくりとコントロールすることで、手首の無理な動きを抑えることができます。
ボディターンのやり過ぎによるデメリット
一方で、右へのスライスに悩むゴルファーの多くが、過剰なボディターンの振り遅れに陥っています。体を過度に早く回しすぎると、スイング軌道がアウトサイド・イン軌道になりやすいだけでなく、クラブフェースが開いたままインパクトを迎えるため、スライスが生じやすくなります。
目安として、ダウンスイングのハーフウェイダウン(手が腰の高さにくる地点)で、腰がターゲットラインに対して45度以上開いている場合、ボディターンがやり過ぎになっている可能性があります。ボディターンによる振り遅れを防ぐには、体の回転を先行させすぎず、腕と体の動きを同調させることがポイントです。心配な人は、ハーフウェイダウンで一旦静止し、腰の開き具合いを確認してみましょう。
ボディターンによる振り遅れスライスは、体を先行させないことで改善できると、「ゴルフスイング ボディターンがドライバー振り遅れの原因【動画コラム29回目】」で詳しく紹介されています。
4.自分はボディ派?リスト派?見極め方
さて、自分が「ボディターン派」なのか「リストターン派」なのか、どちらが主導のスイングタイプか気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、簡単に自分の主導タイプを確認できる3つの方法をご紹介します。
◆感覚チェックで自分のフィーリングを確認しよう
◆重い物を引いたり押す動作から自分の体の使い方を知ろう
◆スイング動画から客観的に分析しよう
これらのチェックを実践すると、スイングの個性や特性をより深く理解できるはずです。
感覚チェックで自分のフィーリングを確認しよう
まず、もっとも手軽にできるのが、自分でボディターンとリストターンを意識的に強調して打ち比べる方法です。それぞれの打ち方を極端に試すことで、どちらがしっくりくるかを感じ取ってみましょう。
たとえば、体の回転を先行しながら全体を大きく回してスイングするボディターンと、手首でスイングをリードしながらインパクトで手首のスナップを使うリストターンを多用するスイングを交互に試すことで、自分にとって心地のよいスイングスタイルが見えてくるはずです。
これはあくまでゴルファーの主観に基づく判断ですが、どちらの動きが自然に感じるかを確認する第一歩としておすすめです。
重い物を引いたり押す動作から自分の体の使い方を知ろう
次に、日常的な動作で自分の傾向を見極める方法です。
たとえば、重たい物を押したり引いたりするとき、腕や手の力を使って押し引きするタイプの人は、リストターンに依存しやすい傾向があるかもしれません。一方、腹筋や臀部の筋肉を使って全身で押し引きする人は、ボディターン重視のスイングを得意とする可能性が高いです。日常の体の使い方がゴルフスイングにも反映されやすいため、これも一つの見極め方法として有効です。
スイング動画から客観的に分析しよう
もう少し客観的に自分の主導タイプを見極めたい場合は、スマートフォンで自分のスイングを撮影してチェックするのがおすすめです。
具体的には、ダウンスイングのトップポジションから手が腰の高さに下りてくるまでの間に、腰や下半身がしっかり回転しているならあなたは、ボディターンタイプでしょう。
一方、アイアンスイングのフォロースルーで、クラブヘッドがヒザの高さに達した際、ヘッドのリーディングエッジが垂直より閉じている場合は、リストターンの傾向が強いといえます。
このチェック方法では、現状の自分のスイングがどちらなのか比較的簡単に見極めることができます。
より正確なデータに基づいた自分のスイングの傾向を知りたい人は、GearsやSportboxのような3Dスイング解析システムを利用できるスタジオで、プロから直接アドバイスを受けることをおすすめします。体のあらゆる角度を計測できる最新の技術を活用すると、総合的なゴルフ上達につながるかもしれません。
5.ボディターンとリストターンのバランスが整うドリル【2選】
ゴルフスイングでは、ボディターンとリストターン、どちらか一方に偏るのではなく、両者のバランスが取れていることが理想的です。
たとえボディターンが得意であっても、リストの動きが不十分であれば飛距離は出にくいですし、逆にリストターンに頼りすぎれば方向性に問題が生じます。
ここでは、ボディターンとリストターンを調和させ、スイングの質を向上させるための2つの効果的なドリルをご紹介します。
【1】体と腕の一体感を高めるスプリットハンドドリル
このドリルでは、腕と体の動きがスムーズに連動する感覚を養うことができます。具体的な方法は、左手を通常どおりグリップし、右手はグリップの下の方を握るように、両手の感覚をあけてグリップします。
この握り方でスイングをすると、腕の動きを独立させすぎず、体と連動させる感覚をつかむことができます。
そして、このドリルでは、ハーフスイングでボールを打ちます。特に、フォロースルーで右手のひらが地面ではなく背中側を向くように意識し、手首の過剰な動きを抑えながらスイングしてみましょう。
このドリルの目的は、ボールをうまく打つことではなく、体と腕の一体感を感じることにあります。ボディターンとリストターンのタイミングを自然に合わせることで、より安定したスイングが可能になります。
【2】体のちょうど良い回転がわかるクロスハンドドリル
このドリルは、クラブを使わずに行うため、どこでも簡単に練習ができる点が特徴です。まず、アドレスの姿勢を取り、腕をリラックスさせて地面に垂らします。次に、左右の手首を交差させ、手の甲同士が軽く押し合うような形にします。この体勢から、ゆっくりとスイングの動きを繰り返しおこないます。
このドリルのポイントは、腕が体から離れにくくなるため、自然と体全体を使った回転を意識できることです。腕だけで振ろうとすると体の回転が不足するため、強制的にボディターンを意識させることができます。
特に、腕と体の動きをシンクロさせる感覚をつかむのに効果的です。
6.まとめ
インパクトには、体や腰の回転を主導としてクラブをリリースするボディターンと、腕と手首の動きを主導にするリストターンの2つのアプローチがあります。
ゴルフスイングにもトレンドがあるとはいえ、ボディターンとリストターンのバランスを整えることは、いつの時代もスムーズなスイングで安定したショットを打つための重要な要素です。体と腕の一体感を養えるドリルで、スイング全体の連動性を高めましょう。
自分のスイングスタイルを見つけることができれば、さらにゴルフを楽しめるはずです。