アイアンはなぜダウンブローで打て、と言われてきたのか?【ダウンブローの原理、打ち方のコツ、練習方法】を完全解説
「アイアンはダウンブローで打て」といわれますが、そもそもダウンブローとは何の事なのでしょうか。また、なぜアイアンはダウンブローで打たなければいけないのでしょうか。さらに、ダウンブローで打つことによって、どういう効果があるのでしょうか。そんな疑問に答えるべく、本記事では、ダウンブローについて、分かりやすく解説するとともに、その打ち方や練習方法なども紹介します。
配信日時:2024年8月8日 08時16分
「アイアンはダウンブローで打て」といわれますが、そもそもダウンブローとは何の事なのでしょうか。また、なぜアイアンはダウンブローで打たなければいけないのでしょうか。さらに、ダウンブローで打つことによって、どういう効果があるのでしょうか。そんな疑問に答えるべく、本記事では、ダウンブローについて、分かりやすく解説するとともに、その打ち方や練習方法なども紹介します。
1.ダウンブローとは
スイングの軌道を説明するとき、ダウンブロー、レベルブロー、アッパーブローという3つの言葉が使われますが、この3つは、軌道それ自体が異なるわけではありません。「ボールに対して、ヘッドがどういう軌道で当たっているか」がポイントになります。
スイングを正面から見たとき、ヘッド軌道はほぼ円弧を描きますが、ダウンスイングの途中で当たることをダウンブロー、最下点で当たることをレベルブロー、上昇途中で当たることをアッパーブローといいます。
また、ボールに対してヘッドが入ってくる角度を、「入射角」といいますが、下りてくる途中でボールに当たったとき(ダウンブロー)は、その数値は「マイナス(-)」になり、逆に、上昇の途中で当たったとき(アッパーブロー)は「プラス(+)」になります。
ここではダウンブローを中心に、3つの当たり方について、それぞれの特長を説明します。
ダウンブローの特長
ダウンブローは、ヘッドの最下点がボールより先(目標方向側)になることをいいます。つまり、ヘッドはボールに対して上から入ってくることになり、ボールに当たってからさらに下降するという形になります。だから入射角は、マイナスになります。一般的に、2~5度マイナスで当たるのが“良し”とされています。
ダウンブローは地面からボールを打つのに適した打ち方で、昔からアイアンはダウンブローに打つべきだと考えられてきました。そもそも昔のアイアンは重心位置が高く、ダウンブローで当てないと芯でボールを捉えることができなかったのです。
ダウンブローの利点は、強いバックスピンをボールに与えることができること。その結果、ボールは上がり、落下角度も地面と垂直に近い角度で落下するため、硬いグリーンでもボールを止めやすくなります。
また、上からヘッドが入る分、ボールとクラブの間に芝が入りづらくなり、芝の長いラフでもクリーンに打ちやすくなります。さらにバックスピンも強くかかり、かつボールが高く上がりやすくなることから、飛距離も伸びるようになります。
レベルブローの特長
レベルブローは、ヘッドが最下点に達したときにボールに当たることをいいます。インパクトのとき、シャフトは地面に対して垂直に近い形になっており、厳密にいえば、入射角も「±0度」になります。
レベルブローの特長は、インパクト前後でヘッドがほぼ水平に移動することで、その分、インパクトゾーンが長くなり、方向性が安定します。また、ティアップしていても地面にあっても、当て方がそれほど変わらないというのも利点の一つです。最近は、クラブの進化(アイアンの低重心化)により、アイアンでもレベルブローで打つ人が増えてきました。
アッパーブローの特長
アッパーブローは、ヘッドが最下点を通過し、上昇している軌道の中でボールに当たることをいいます。入射角は、ダウンブローとは異なりプラスになります。
地面にあるボールをアッパーブローで捉えようとすると、手前をダフるか、またバンスが跳ねてトップしてしまうので、ティアップしたボールを打つドライバー専用の当て方といえるでしょう。上昇軌道の中でボールを捉えるので、飛びの“高弾道・低スピン”になることから、ドライバーはアッパーブローで打った方がいいといわれています。
2.アイアンはダウンブローが基本?
これまで「アイアン=ダウンブロー」と考えられていたのですが、最近は、プロの中でも、レベルブローで当てる選手が増えてきました。なぜそのようになってきたかというと、あえてダウンブローに打たなくても、スピンがかかって飛距離が出るアイアンが登場してきたからです。
ここでは、どういうモデルがダウンブローに、またはアッパーブローに合うかを解説します。
ダウンブローに合うアイアン
ダウンブローが、アイアンの当て方、打ち方の代名詞になっていることからも分かるように、古いオーセンティックなタイプのアイアンは、ダウンブローで打ちやすくなっています。
ダウンブローに適している条件は、(1)芯の位置が高いことと、(2)上からヘッドが入ってもリーディングエッジが刺さらないように適度なバンスが設けられていること。一般的にマッスルバックはこの2つを兼ね備えたモデルが多いので、「マッスルバック=ダウンブロー」というイメージがあるようです。
もちろん、この2つの条件を満たしていれば形は関係ありません。キャビティや中空アイアンの中にも、ダウンブローで打ちやすいモデルがあります。
レベルブローに合うアイアン
ここ数年、レベルブローでその性能を最大限に発揮できるように設計されているアイアンが増えてきました。
最大のポイントは、昔と比べて、重心位置が深くて低い“深・低重心化”が進んでいること。レベルブローに打っても、ボールが簡単に上がり、バックスピンがそれなりかかるようになっています。
また、深・低重心化を実現するために、ソール幅が広めに設計されていて、多少、ダフってもソールが滑ってくれるなど、レベルブローで打ったときのミスも軽減されるように設計されています。
さらに付け加えれば、ダウンブローに打ったときに、リーディングエッジが地面に刺さらないように設けられているバンスがほぼ付いていない“ゼロバンス”のモデルも多く、そういう点からいえば、ダウンブローには「適さない」モデルも増えてきました。
モデルによって細かい作りが異なるので一概にはいえませんが、飛び系のモデルに多い、幅広ソールでバンスがゼロに近いタイプは、無理にダウンブローに打たない方がいいといえるでしょう。
3.ダウンブローの打ち方をマスターする
ボールの当て方には、ダウンブロー、レベルブロー、アッパーブローがあるという話をしましたが、打ち方それ自体については、大きく変わるわけではありません。ダウンブローだからといって、上から打ち込む必要はないのです。
ただ、ダウンブロー軌道で当てやすくする、という打ち方はあります。それは、スイングの基本ともなる打ち方なので、ぜひマスターしてください。
アドレス
ダウンブローで打つには、アドレスの時点でインパクトの形をイメージしておくことが重要です。
まずフェースが目標方向へ向くようにセットし、手元がボールより先行するように構えます。グリップは左足の太もも内側辺り。このようにハンドファーストで構えることで、インパクト時にロフトが立った状態で打ち込むことができます。
大事なのは、テークバックからインパクトまでこの形をキープすることです。
また、スイングの最下点を確認し、その直前でインパクトできる位置にボールをセットすることも大事。適切な位置にボールをセットできれば、自然とダウンブローに打てるはずです。
テークバック
テークバックでは、手でクラブをヒョイと上げないように、下半身から回していきましょう。このとき、いつものテンポをキープすることも大事です。
また、クラブの上げ方も大事で、ハーフウェイバックでフェースの向きチェック。向きが飛球線後方から見て「1時(前傾姿勢とほぼ同じ角度に傾く)」になっているかどうかを確認しましょう。ここでフェースを開いてしまうと、元に戻すのが難しくなるからです。
トップ
テークバックからトップでは、しっかり上体を回しましょう。そして、肩が深く入ったトップを作りましょう。というのも肩の回転が浅いと、ダウンスイングで上半身より下半身が先に動いてしまい、アウトサイドインのスイング軌道になって、ダウンブローで捉えることができなくなるからです。
また、打ち急ぎにならないように、トップでしっかり間を取ることも大事です。
正しいトップの位置が分からない人は、左手1本でクラブを持ち、左手だけで上げた状態で、左の親指でクラブを支えられる場所を探してみてください。そこが正しいトップの位置になります。そのときの上体と左腕の張りを意識すると、両手でも適正なトップの位置に持ってくることができます。
切り返し
トップからの切り返しで、左足へしっかり体重移動するよう意識しましょう。切り返しで右脚を蹴るイメージ。右足に体重が残ったままだと、いくらハンドファーストの形で構えていても、すくい打ちになってしまうので注意してください。
どうしても右足に重心が残ってしまう場合は、左足1本で立ってスイングする練習をするのもいいでしょう。
ダウンスイング
ダウンスイングでは、入射角を意識しましょう。ダウンブローだからといって角度が急すぎると、ダフリなどのミスが生まれるからです。急角度のV字ではなく、緩やかなU字の軌道でヘッドを下ろす意識が必要です。
イメージとしては、飛行機の着陸の感じです。飛行機が急降下で着陸しようとすると、地面に激突してしまいます。ゴルフでもこれはNG。ボール手前まで緩やかに下降し、最下点直前でボールを捉えるようなイメージで打ちましょう。クラブの番手にもよりますが、アイアンではおおよそマイナス2〜5度の入射角でボールを捉えるのが理想です。
緩やかな軌道で下ろすためには、前傾角度をキープし、足と腰を使って回転していくことも大事です。
インパクト
ダウンスイングからインパクトで大事なのは、目線をボールの中心に置いておくことです。ボールの真ん中を見てスイングすると、自然と左へ重心が移動し、ダウンブローでインパクトできるようになるからです。特に、ドライバーが得意でアイアンが苦手という人は、ボールを右側から見ているケースがあるので注意してください。
また、ボールの中心を見て打つとダフるという人は、ボールのやや左側に目線を向けてみましょう。こうすることでヘッドの最下点が左に移動しやすくなります。
フォロースルー
インパクトまで前傾をキープしてスイングしていれば、フォロースルーでは特別に意識することはありません。体を解放するような感じで、徐々に左足を伸ばし、上体も起こしていくようにしましょう。
全体的には、体をスムーズに回して、回転に同調して腕を振れば、自然にダウンブローに打てるというようにシンプルに考えた方が上手くいくかもしれません。
4.ダウンブローを身に付ける練習方法【5選】
ダウンブローをマスターするためのオススメの練習法を紹介します。これらの練習をやることによって、正しいスイングも身に付きます。簡単な練習ばかりなので、ぜひ普段の練習に取り入れてください。
【1】手と体の同調が身に付くドリル
ハーフウェイバックで一度クラブの動きを止め、そこからボールを打つドリルです。腰の位置に持っていくとき、テークバックでクラブを止めても、一度トップまで振り上げてからハーフウェイダウンで止めても構いません。
この形からスイングすると、体がしっかり回らないとボールを捉えられないので、手の余計な動きが抑えられ、クラブの入り方もきれいになります。
最初は当たらないと思うので、腰から腰のスイングでスタートし、当たるようになったらフォローサイドもしっかり振っていきましょう。
【2】ハンドファーストの形を覚えるドリル
ハンドファーストに構え、そのままの形をキープしたまま30センチほどボールを押す(コロがす)ドリルです。
ポイントは、自分にとって最もいい形のインパクトを作り、それを覚えること。そうすれば、力が入ったインパクトが実現します。
また、そのインパクトの形に持っていくためには、どのようにクラブを上げていけばいいかを考えることが、正しいスイング作りにも役立ちます。
上記2つのレッスンは、関連記事「有村智恵 ゴルフ上達のコツ」から動画でもご覧になれます。
【3】体の開きを抑えるドリル
トップの形を作り、左足を踏み込む動きを繰り返し行うドリルです。踏み込むことで体の開き過ぎを抑えることができ、体の正面+ハンドファーストでボールを捉えることができます。
この練習をやるときにチェックしたいのは、踏み込んだときに左肩が開いていないかどうか。左肩が開くと、踏み込んだ力が逃げ、スイングもカット軌道になってスライスが出やすくなるからです。
また、右ヒジが下を向いているか、手首とクラブの角度(90度が理想)がキープできているかもチェックしましょう。
【4】ボールの先を最下点にするドリル
ボールの先(奥)にマスキングテープを貼り、ボールを打つドリルです。ダウンブローは、スイングの最下点がボールの奥にくるため、それを意識しながらの練習になります。
ボールを打ったあと、マスキングテープが剥がれていたら、ダウンブローでスイングできている証拠。単純な練習ですが、目印をつけることでボールの奥を打つイメージを持ちやすくなります。
【5】ヘッドを上からクリーンに入れることを覚えるドリル
右足側を高くして、左足下がりの状況を作ってボールを打つドリルです。
左足下がりのライでは、しっかりダウンブローに打たないと、ボールを捉えることができません。そのことを利用したのがこのドリル。体の重さをそのままボールにぶつけるイメージでフォローを低く出せば、クリーンにボールをとらえることができるようになります。
ポイントは、傾斜に対して両肩を平行に構えたら、その軸を保ったまま上体を回すこと。右肩が下がるとボールの手前にヘッドが落ちてクリーンに打てなくなるからです。
5.まとめ
アマチュアゴルファーの多くができていないといわれるダウンブローですが、単に上からヘッドを入れる打ち方ではないこと。また、レベルブローやアッパーブローとの違いは、ヘッドとボールが当たるときの軌道によって生じるもので、スイングそのものは大きく変わらないということがお分かりいただけたと思います。
どちらかというと、ここで説明した打ち方は、スイングの基本ともいうべきもの。多くのゴルファーがやってしまう、“アーリーリリース”を防ぐためにも、ダウンブローの打ち方をきちんとマスターしましょう。