「1バウンド目を強く突っ込める」石川遼が今年一番こだわった“58度”のランニングアプローチ
石川遼が今シーズンを迎えるにあたって、強くこだわった58度のランニングアプローチとは?
配信日時:2024年6月11日 06時27分
石川遼は今季から大幅なクラブ変更を行っている。一番変わったのはウェッジのロフトバリエーションで、昨年までは9番アイアンの代わりに43度、PWの代わりに48度を入れ、その下には52度、57度、62度とウェッジ5本体制だった。それが、今年の開幕戦からはアイアンセットのPWまでを入れて、50度、54度、58度の3本体制に変更している。
ウェッジを5本入れていたのは150ヤード以内のフルショットのピッチを狭めて、バーディチャンスを増やす狙いがあった。しかし、「62度のフルショットの強みを出せていなかった。ショートサイドのバンカーくらいでしか(62度は)生きなかった」と本人はいう。さらに、「30~40ヤードくらいのランニングアプローチを、去年は52度や57度で打っていたんですが、そこの距離感が年間を通して合わせるのに苦労したんです」と、グリーン周りでも迷いが生じていた。
そんな流れから、今年のクラブセッティングで石川が一番こだわったのは“58度”を入れることだった。「生まれながらじゃないですけど(笑)、ずっと58度1本でやってきたので、ランニングアプローチの距離感をどうしても58度で出したかったんです」。そこで、58度を軸として、4度ピッチで54度、50度、46度(PW)を入れることを決めた。石川にとって、その3つのロフトをバッグに入れるのは初めてで、オフは距離感の調整を重ねた。
そして58度については、同じロフトで4度、6度、8度、12度とバンス角の違う12種類ものソールを打ち比べ、バンス8度を選んだ。「一番使うアプローチは低い転がしのランニングだったので、その距離感を優先しました。直感的に距離感が合ったのがこれだった」という。昨年までグリーン周りでは52度、57度、62度の3本を持っていき、最適な打ち方を選んでいた。それが今年は「58度で転がしもロブも全部やる。クラブで悩むことはなくなりました」と笑う。
その石川がこだわる58度のランニングアプローチは独特だ。普通は52度やPWなどロフトが立ったクラブを使ってトロトロと転がしていくが、石川はボールを右足寄りに置いて、上からガツンと突っつくように打つ。すると、スピンの利いた低い球が勢いよく飛び出し、ブレーキがかかりながらピンに寄っていく。ジャンボ尾崎が得意としていたアプローチに近いかもしれない。
「けっこう薄く入れるので、トップっぽい打球ですよね。52度の払い打ちと高さは同じでも、スピンは1.5倍くらいかかっている。スピン量が入ることによって1バウンド目を奥に突っ込めます。フックの傾斜がきつくても、52度で転がすよりも切れ始めが遅くなるので、すごく直線的に狙えるのが利点です」
アプローチの軸を58度のランニングに据えた影響はボールにも。昨年まで使っていた『クロムソフト X LS』の後継『クロムツアー』ではなく、それよりも少しスピンが入って出球が低くなる『クロムツアー ドット』を選んだ。「どこからでも高い球でフワッとアプローチするというよりも、低くラインを出していきたいアプローチもけっこうある」と理由を語る。
昨年は「日本オープン」で2位に入るなど、優勝争いに絡むシーンもあったが未勝利に終わった。クラブセッティングを一新した今年は、5月の「関西オープン」で初日71位と出遅れながら最終的に5位まで順位を上げたり、前週の「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」では最終日に「63」と爆発して首位に追いつくなど、優勝にあと一歩まで迫っている。今週の「全米オープン」ではどんなプレーを見せるのか楽しみにしたい。
◇ ◇ ◇
日本では石川遼、河本結、伴真太郎の3人しか使っていない、ツアーだけに支給されているボールがある。関連記事【石川遼&河本結が使うツアーにしかないキャロウェイ『第3のボール』を発見! 市販品との違いは?】では、『クロムツアー』のロゴのヨコに『・』(ドット)が刻印されているボールの正体について、石川遼と河本結に詳しく聞いている。