ゴルフにおける4つの傾斜の打ち方まとめ 難度の高い複合ライの打ち方も紹介
いつも平らなライでボールを打てる練習場とは違い、コースではさまざまな「傾斜」に対応した打ち方をする必要があります。この記事では、代表的な4つの傾斜の特性や打ち方について解説します。難易度の高い複合ライの攻略法も紹介していますので、ぜひラウンド前にチェックしてみてください。
配信日時:2024年5月17日 06時11分
1.4つの傾斜の基本的な打ち方
日本のゴルフ場で良いスコアを出すには、傾斜への対応が重要なポイントになります。基本的な4つの傾斜として以下を覚えておきましょう。
傾斜の種類 | 起きやすい現象 |
---|---|
ツマ先上がり | ボールが左へ飛びやすい |
ツマ先下がり | ボールが右へ飛びやすい |
左足上がり | 距離や方向のコントロールが難しい |
左足下がり | ランを含めた飛距離が出やすく、ダフリやトップも出やすい |
国土面積の狭い日本では丘陵地や山岳地帯にゴルフコースが作られることが多く、どうしても傾斜地からショットを打つ機会が増えます。一方、練習場では平らなライからしかボールを打てません。そのため、「練習場では上手く打てるのに、コースでは当たらない」という状況が生まれ、“練習場シングル”などの俗語も生まれたのです。
でも、安心してください。どんな傾斜でも、特性を理解し、それに対応した打ち方を覚えておけば攻略が可能です。まずは基本的な4つの傾斜の打ち方について解説していきましょう。
ツマ先上がり
足元よりボールが高い位置にあるのが「ツマ先上がり」です。
傾斜なりにクラブをセットすると、通常よりもトゥが上を向いたアップライトな構えになり、フェースが左を向くぶん、ボールが左に飛びやすくなります。同時に、スイング軌道もヨコ振りが強くなるため、手先を使ってフェースを強く返すと、ボールが左に飛び出して、左に曲がる強烈な引っかけが出ることもあるので注意が必要です。
「ツマ先上がり」を攻略するには、残り距離に関係なく8Iや7Iなど、大きめの番手を持つことが大切です。ロフトの立ったクラブを使うことで、フェースが左を向き過ぎるのを抑えることができるからです。そして、スタンス幅を狭くして背筋を伸ばし、ボールが体に近いぶん、グリップは短く握っていきます。ポイントは、下半身をロックし、上体の回転だけのコンパクトなスイングをすること。確実にボールコンタクトしながら、余分なフェース開閉が抑えられるので、狙い通りの方向に打ち出しやすくなります。
左に飛びにくいクラブ選択と構えを作ることで、「ツマ先上がり」からのショットはグンと楽になりますよ。
ツマ先下がり
足元よりもボールが低い位置にあるのが「ツマ先下がり」です。
傾斜なりにクラブをセットすると、通常よりもトゥが下を向くフラットな構えになります。スイング軌道はタテ振りが強くなるため、基本的に右へのミスが多くなります。ただし、通常よりも遠い位置にあるボールにヘッドを届かせようと手先を使うと、極端にフェースが返って引っかけが出ることもあります。
「ツマ先下がり」の攻略は、残り距離や傾斜の度合いによって変わりますが、基本的にはスタンス幅を広げた構えを取る方法が一番カンタンです。広げるほど、体の重心が下がり、前傾姿勢を深くすることもできるため、低い位置にあるボールに、ヘッドがしっかり届くようになるからです。
スイングのポイントは、ヒザをしっかり動かすことです。特に切り返しで右ヒザを左ヒザに寄せるイメージで大胆に動かすことで、ヘッドがより低い位置まで下りてくれますし、フォローを出してボールを飛ばすことが可能になります。上体だけで振ってしまうと、体が起き上がってトップになったり、フォローが出ずに飛距離が出なくなるので注意してください。強い「ツマ先下がり」ほど、下半身を積極的に使うことで狙い通りにボールを運ぶことができます。
左足上がり
右足やボールよりも、左足が上にある傾斜が「左足上がり」です。
平らなライに比べて、ロフトが寝て当たるぶん、飛距離が落ちやすく、アッパーブローに近い形でボールを捉えるため、引っかけが出やすい傾斜となっています。どんな入射角でもボールに当たってくれる傾斜ですので、ダフリやトップなどのミスは出にくいですが、一方で、距離や方向のコントロールが難しく、正確にグリーンを狙うには難しいライでもあります。
「左足上がり」を攻略するには、右足に体重をかけて、傾斜に対して体の軸が垂直になる構えを作りましょう。その上で、右足に体重を残したまま、フィニッシュまで振り切るように打っていくのです。左足に体重移動すると、返って体の回転が止まって振り抜けなくなりますので、右足一本で立ちながら打つイメージが大切です。ただし、ボールが上がって通常よりもかなり飛距離が落ちますので、2番手以上、大きなクラブを選んでください。
50ヤード以内など、短い距離であればアドレスで左足に体重をかけて、ヘッドを刺すように打つ方法もアリですが、手首を痛める危険性があります。基本的には傾斜に合わせたアドレスを取ることを心がけ、それに合わせたクラブ選択を考えましょう。
左足下がり
右足やボールよりも、左足が下にあるライが「左足下がり」です。
平らなライに比べて、ロフトが立って当たるぶん、ボールが低く飛びやすく、通常よりもランを含めた飛距離が出やすい傾斜となっています。どんな入射角でも当たる「左足上がり」に対して、「左足下がり」は鋭角なダウンブローに打ち込まないとボールを捉えることができません。そのため、ダフリやトップが出やすくなるため、苦手とするゴルファーの多い傾斜でもあります。
「左足下がり」を攻略するには、左足に体重をかけ、ボールを通常よりも右に置くことでダウンブローに打ち込みやすいアドレスを作ります。スイング中、左足体重をキープし、上体の回転だけでコンパクトに振っていくことで、クリーンにボールを捉えやすくなります。傾斜が強い場合は、傾斜に合わせて体を左に傾けて構えることで、ヘッドを低い位置に抜きやすくなります。この打ち方ではどうしても弾道が低く、ランの多いボールになりますので、通常よりも番手を下げて、「ショートしてもOK」という気持ちでショットに臨むことが大切です。
2.2つの傾斜が絡んだ複合ライの打ち方
コースで遭遇する傾斜は、代表的な4種類だけとは限りません。「ツマ先上が×左足上がり」などのような「複合ライ」からショットを打つこともあるでしょう。2つの傾斜が組み合わさることで、攻略法がより複雑に感じられるはずです。
先に結論から話すと、「複合ライ」の一番カンタンな攻略法はどちらか1つの傾斜を「消す」ことです。ただし、状況によっては、ボールを打ちやすくなっても大叩きする危険が増すこともありますので、ここからの解説を読んで、しっかり状況判断できるようになりましょう。
ツマ先上がり×左足上がり
右足よりも、ボールと左足が上にあるのが「ツマ先上がり×左足上がり」です。
通常よりもトゥが上がった構えになるぶん、フェースが左を向きますし、左足上がりのぶん、ロフトが寝て、アッパーブローに当たりやすくもなるため、左にボールが飛ぶ要素の多い「複合ライ」です。
結論から先に言うと、このライに遭遇したら無理にグリーンを狙おうとせず、平らなフェアウェイに戻すことを考えましょう。なぜなら、大叩きになるリスクの非常に大きい「複合ライ」だからです。
まず「ツマ先上がり×左足上がり」では、ボールを中心に反時計回りに動いてアドレスを取ると、左足と右足の高さを同じにすることができ、「左足上がり」の傾斜を消すことができます。つまり、シンプルな「ツマ先上がり」のライにすることができるのですが、左にボールが飛びやすい傾斜で、左方向にアライメントを取ることになりますので、大振りするとコースの左サイドに大きく曲げる可能性が高いです。OBに打ち込むなど、大叩きにつながる危険があるわけです。
「ツマ先上がり×左足上がり」は対処が非常に難しく、成功率が極端に低い「複合ライ」ですので、無理な攻めは禁物だと覚えておきましょう。
ツマ先上がり×左足下がり
右足よりも、ボールが高い位置に、左足が低い位置にあるのが「ツマ先上がり×左足下がり」です。
この説明だけを聞くと非常に複雑なライに感じますが、コースの状況によってはグリーンを狙うことも可能な「複合ライ」となっています。
まず「ツマ先上がり×左足下がり」では、ボールを中心に時計回りに動き、左足と右足を同じ高さにすることで「左足下がり」の傾斜を消すことができます。シンプルな「ツマ先上がり」の傾斜でターゲットよりも右方向にアライメントを取ることになります。「ツマ先上がり」はそもそも左にボールが飛びやすい傾斜ですから、ターゲットより右に構えているのは好都合です。傾斜に合わせてグリップを短く持ち、上体の回転だけで思い切ってフルスイングしていきましょう。クラブ選択は、小さめの番手を持つのがおすすめです。傾斜通りにしっかりボールが左に曲がるクラブを選択すれば、グリーンを狙ったり、グリーン近くのフェアウェイにボールを運びやすくなるはずです。
ツマ先下がり×左足上がり
右足よりも、ボール位置が低く、左足が高い位置にあるのが「ツマ先下がり×左足上がり」です。
ヘッドをしっかりと低い位置に下ろしたい「ツマ先下がり」のライであるにも関わらず、スイング軌道がアッパーブローになりやすい「左足上がり」の要素が入った難易度の高いライで、トップやチョロなど、まともにボールに当たらないミスが出る危険の高い「複合ライ」です。
「ツマ先下がり×左足上がり」を攻略するには、「左足上がり」の傾斜を消しましょう。ボールを中心に時計回りに動き、ターゲットよりも右にアライメントを取れば、シンプルな「ツマ先下がり」の傾斜にすることができます。ただし、ボールが右に飛びやすい「ツマ先下がり」で、右方向に構えることになりますので、大振りをするとOBなどに打ち込む可能性が高いです。スイング中のフェース開閉を増やして、ボールにフック回転をかけて打つ選択もありますが、どんな上級者であってもイチかバチかのリスクの高いショットになってしまいます。
もし、コースで「ツマ先下がり×左足上がり」の「複合ライ」に遭遇したら、平らなフェアウェイに戻すことを第一の選択肢として考えるのがおすすめです。
ツマ先下がり×左足下がり
右足よりも、ボールも左足も低い位置にあるのが「ツマ先下がり×左足下がり」です。
ヘッドを低く下ろしたい「ツマ先下がり」のライで、ダウンブローに打ちやすい「左足下がり」が加わった傾斜ですので比較的ボールコンタクトしやすい「複合ライ」になっていますが、ショット選択を誤るとトップやチョロなどのミスが出やすいので注意が必要です。
「ツマ先下がり×左足下がり」には2つの攻略法が考えられます。まず、左足にしっかり体重をかけ、体全体を左に傾けて、ボールを捉えやすいアドレスを作ることです。ただし、左足体重をキープするぶん、上体の捻転量が減りますし、体重移動も使えませんので、飛距離は出しにくくなります。グリーンまで届かせようとすると思わぬミスが出る可能性もありますので、短い距離を飛ばして、平らなフェアウェイに戻すのに最適な攻略法となっています。
もう1つは、ボールを中心に反時計回りに動き、右足と左足の高さを同じにして「左足下がり」を消す方法です。ボールが右に飛びやすい「ツマ先下がり」の傾斜で、ターゲットよりも左に向いた構えを取るわけですから、フルスイングして右に曲がるボールを打てればグリーンを狙うことも可能になります。確実にボールが右に曲がるように、やや大きめの番手を持つと良いでしょう。
3.難しいと思ったらレイアップしてもOK?
ここまでさまざまな傾斜からの対処法を紹介してきました。緩やかな傾斜であれば「複合ライ」でも、しっかりボールを飛ばしてグリーンを狙うことも可能ですが、強い傾斜の場合、ボールに当てるだけで精一杯ということも少なくありません。
傾斜からショットを打つということは、その前のショットでミスをしていることがほとんどでしょう。対処法を知っていたら、「起死回生のスーパーショットを打ちたい」と欲が出るかもしれません。しかし、平らなライから打つ場合に比べて、傾斜からのショットは思いがけない曲がりが出る可能性が高く、トラブルにトラブルを重ねて、大叩きしてしまうことが多いです。
コースが広かったり、ボールを打ち出す方向に木などの障害物がなければチャレンジしてみるのも良いですが、少しでも難しそうだと感じたら、レイアップ(次のショットが打ちやすいところに置く=刻む)を選択することが大切です。ミスを受け入れることで、キズを最小限に抑えられますので、結果的にスコアも良くなるはずです。
4.まとめ
この記事では、代表的な4つの傾斜の特性とそれぞれの打ち方、そしてさらに難易度の高い複合ライの攻略法を紹介しました。
冒頭で述べた通り、傾斜に苦手意識のあるゴルファーが多いのは、練習場ではいつも平らなライでボールを打てる一方で、傾斜に対応した打ち方を練習する機会が圧倒的に少ないことが、その要因のひとつです。傾斜の対応に不安のある人は、傾斜つきマットや傾斜台などを設置している練習場を見つけて、傾斜練習の機会を得てはいかがでしょうか。