上田桃子・吉田優利・渋野日向子らが実践 辻村明志が城島健司さんと打撃談義 『ヒジに体が付くと押し込める』【四の五の言わず振り氣れ】
2007年の賞金女王・上田桃子を始め、吉田優利、渋野日向子らそうそうたるメンバーが集う「チーム辻村」。宮崎合宿の最中、辻村明志コーチのもとに見知らぬ携帯番号から連絡があった。相手は元プロ野球選手の城島健司さんだった。非力な女子プロが250ヤード飛ばせる秘密とは何かを、実際に会って談義することになったという。
配信日時:2024年6月28日 06時00分
2007年の賞金女王・上田桃子を始め、吉田優利、渋野日向子らそうそうたるメンバーが集う「チーム辻村」。宮崎合宿の最中、辻村明志コーチのもとに見知らぬ携帯番号から連絡があった。相手は元プロ野球選手の城島健司さんだった。非力な女子プロが250ヤード飛ばせる秘密とは何かを、実際に会って談義することになったという。
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いつかのオフの宮崎合宿中、携帯電話に見知らぬ番号から着信がありました。電話の主は、プロ野球のホークスやメジャーリーグなどで活躍した城島健司さん。現在は福岡ソフトバンクホークスのシニアコーディネーターで、春季キャンプでやはり宮崎に来訪していました。
上司である球団会長で、ボクの尊敬する王(貞治)さんからも連絡があり、「城島が伺うからよろしく」とのことでした。城島さんはチームの正捕手である甲斐拓也選手を伴ってボクたちの合宿先にやってきました。強肩には定評がある甲斐選手。しかし強肩強打で鳴らした城島さんには、その打撃を磨きたいとの思いがあったようです。
「ゴルフも同じ道具を使う競技。他の競技の辻村さんにアドバイスをもらおう」という思いがあったようです。ボクにとってはとても光栄なサプライズでしたが、しかし一流の野球選手にアドバイスできるわけがありません。ただ腕立て伏せもできない女子プロが、涼しい顔をして250ヤードを飛ばす競技がゴルフです。そこで甲斐選手にも実際にゴルフのボールを打ってもらい、一緒に勉強する機会とさせていただきました。
非力な女子プロでも250ヤード飛ばします。となると飛距離は力、つまりパワーだけで生み出しているわけではありません。「リキミはブレーキ、脱力はアクセル」はボクの持論のひとつですが、まずは力を抜く、特に上半身を脱力させることがアマチュアのみなさんには急務になります。
しかし、ただ力を抜けば飛ぶものでもありません。実際、脱力すると体が緩み、弱々しいボールしか打てないアマチュアは数多くいます。そこで脱力と同じくらい大事なのがポジション。エネルギーが逃げず100%がボールに伝わるポジションを探し出すことが重要なのです。
「お母さんはなぜ買い物袋をヒジにかけるのか?」。城島さんがそう語ってくれました。腕を伸ばして買い物袋を提げている人を見たことはありません。当然のことですが、それがラクであり、非力な女性でも少しくらい重い荷物なら持てるからでしょう。いわゆるワキが締まり、ヒジが体の近くにある状態。おそらくそれが一番、エネルギー効率が高いポジションなのでしょう。
これはゴルフでも野球でも一緒です。飛ばない、強い球が打てないのは“ワキが甘い”からに他なりません。振った分だけのエネルギーを伝える王さんの師匠である荒川博先生と出会って以来、ボクと(上田)桃子プロが取り組んできたのは、突き詰めればこのポジション探しでした。言い換えれば100の力で振りながら70の力しかボールに伝わらないスイングを、 70の力で振って70の力を伝える。そういう思想でのスイ ング改造です。
ちなみにムダな動きが生じる前者に比べ、ミート率が高く、脱力により加速する後者の方が、ボールに伝わる力が同じ70でも飛ぶものです。 目の下、腰の位置に飛球線方向へロープを張り、その内側に振り下ろし振り抜く練習や、セットしたボールの約30cm先、ボール1個分外側にペットボトルを立て、それに当たらないように打つ練習……も、 全ては“振った分だけエネルギーをボールに伝える”練習です。
結果としてこれらの練習でワキが締まり、 ヒジが体の近くを通り、高速回転のスイングに近づきました。ベテランの桃子プロが、今も飛距離をキープできている理由はここにあります。 余談ですが荒川先生は野球選手としては小柄で、懸垂もできなかったそうです。王さんは巨人のV9メンバーの中で、腕相撲ではほとんど勝てない非力な選手だったそうで す。
荒川先生はよく壁から50cmほど離れて正対して、壁に腕がぶつから ないよう振ってみせました。クラブを持てば約1mくらい。これもヘッドがぶつからないようブンブン振るのです。 「これがインパクトで、さらに前に押し込めるスイング」 というのが先生の言葉でした。現役時代の王さんにやらせた練習だそうです。もっとも読者のみなさんには危険ですから、腕だけで振ってみてください。
それをアレンジしてボクは、練習場のマットの段差にヘッドを当て、 一番押し込めるポジションを選手たちに探させています。やってみれば分かりますが、おそらく普段よりもボールは近く、ワキが締まり、 ヒジが体に付いているのではない でしょうか? もう一つ付け加えれば、左足は普段よりボールに近く、 左のヒザや腰が開いて流れることは少ないのではないでしょうか。この押し込めるポジション探し。ぜひとも試してみてください。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/上田桃子、吉田優利、渋野日向子らを指導し、プロを目指すアマチュアも教えるプロコーチ。荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。1975年福岡生まれ。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』843号より抜粋し、加筆・修正しています
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辻村明志【四の五の言わず振り氣れ】