「ゴリゴリのドローヒッター」 ローリー・マキロイは“右肩”でつかまえてシャフトで逃がす【世界基準の飛ばしテク】
昨シーズンのドライビングディスタンスで米ツアートップの平均326.3ヤードを記録した世界屈指の飛ばし屋、ローリー・マキロイ(北アイルランド)のスイングを、奥嶋誠昭氏が解説する。
配信日時:2024年6月10日 23時03分
瞬く間に速く美しく振り抜いていく、世界のトップ選手たちのスイング。決して真似はできないけど、見ているだけでワクワクしてくる。今回、取り上げるのはメジャー通算4勝を誇り、今季も米ツアーで2勝を挙げているローリー・マキロイ(北アイルランド)。身長175センチとそこまで大きくないが、昨シーズンのドライビングディスタンスで米ツアートップの平均326.3ヤードを記録した世界屈指の飛ばし屋のスイングを、奥嶋誠昭氏が解説する。
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フェードかストレートが多いPGAツアーでは珍しくなった、右に出して戻してくるゴリゴリのドローヒッターです。基本的には左に行かないシャフトを使っています。
昨年使っていた『VENTUS TR BLUE 6X』(現在は『VENTUS BLACK 6X』)はトゥダウンしていくシャフト。しかもマキロイは、リリースの仕方がヨコではなくタテだから、インパクトではシャフトが下にしなってフェースが右を向きやすいんです。つかまる量は自分でコントロールできるから、シャフトは余計なことをしないでとりあえず右を向いておいてくれればいい、そんな感じにも見えます。
インパクトでは右肩を前に出して体でボールをつかまえている。さらに、右ヒジを伸ばしてリリースもしっかり行うので左に飛びやすい。それをシャフトで逃がしているのでしょう。右肩が前に出ると体が開いて良くないと思われがちですが、右が出ないと左が止まって詰まるだけで、回転することができません。
また、マキロイといえば体のやわらかさを生かした鬼のような捻転差も特徴的です。スタートではコックを使わずにワイドにバックスイングするため、ヘッドが少し外めに上がっていきます。そして、バックスイングの最後に手首のコックを一気に入れて、タメる時間を長くしている。切り返したちょっと先くらいで上半身と下半身の捻転差がマックスになります。それだけ捻ったものを戻せる筋力がすごい。上半身のトレーニングは必須です。
以前は振り遅れて体が早く行きすぎてしまっていたのを、腰を逆回転させるような動きでつかまえていました。今はそれがなくなり、一体で動いています。身長が小さい選手はスイングアークが大きくないと飛びません。マキロイは大きく上げてダウンスイングでタメを作り、そのエネルギーを余さずボールに伝える技術が優れていますね。
■ローリー・マキロイ
1989年生まれ、北アイルランド出身。175cm、73kg。これまでに四大メジャーは「全米オープン」、「全英オープン」、「全米プロ」を制しており、グランドスラムには「マスターズ」のタイトルを残すのみになっている。今季は2勝を挙げて米ツアー通算勝利数を26に伸ばした。
■奥嶋誠昭
おくしま・ともあき/1980年生まれ、神奈川県出身。これまでに稲見萌寧や木下稜介のコーチを務め、2021年の東京五輪では稲見のキャディとしてバッグを担ぎ、銀メダル獲得をサポートした。現在は横浜市にあるスタジオ、『THE REAL SWING GOLF STUDIO』でプロやアマチュアの指導を行っている。
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●渋野日向子は今季、予選落ちが続いて不振に陥っていたが、「全米女子オープン」では打って変わって優勝争いに加わり単独2位に入った。好調の要因はどこにあるのか。関連記事【クラブが上から入るようになった渋野日向子 “厚い当たり”が大躍進のポイントだった!】では、現地でプレーを見ていたプロコーチの南秀樹が渋野のスイングを解説している。