<Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント 初日◇24日◇芥屋ゴルフ倶楽部(福岡県)◇7216ヤード・パー72>
この10月で55歳を迎える手嶋多一は、2018年に22年間守ってきた賞金シードを失い、19年は国内メジャー優勝(14年日本プロゴルフ選手権)の5年シード、20-21年シーズンは『生涯獲得賞金ランキング上位25位以内』の資格でレギュラーツアーに出場してきた。
結局、賞金シード返り咲きはならず、21年は27年ぶりにレギュラーツアーの出場権をかけたQTに出場し、QTランキング29位で翌22年シーズンを戦い、今季はQTランキング56位とレギュラーツアー出場がほぼ難しい位置で過ごしている。ここまでは2試合の主催者推薦などでレギュラー4試合を戦い、予選通過は1回となっている。
歴代チャンピオンに名を連ねる地元・福岡開催の今大会は主催者推薦で出場権を得た。その初日、インからスタートした前半はショットがピンに絡んで4アンダーまで伸ばし、折り返した10番で「風を読み間違えただけでミスショットではなかった」とボギーを打ったが、6番パー5を獲って再び4アンダーに戻した。
しかし、「よし、最後で獲れば」と最終9番パー5を迎える前に落とし穴が待っていた。7番パー4でのティショットはラフへ。「フライヤーとアゲインストを計算したんですけど」というセカンドショットはフライヤーがかかってボールが飛びすぎ、グリーンをオーバーしてしまった。ピンは手前。パターで寄せにいった3打目は、ファーストカットで止まってグリーンに乗らず。結局、4オン・2パットダブルボギーを叩いた。最後のパー5も獲れずに、後半は2つ落とすかたちで、初日は2アンダー・38位タイで終えた。
「50歳を超えたら体がきつくなる。4日間やりたいので1つでも頑張りたかった。4アンダーとか5アンダーで終われば、明日(2日目)はイーブンでも通るかなと。昔はやればやるほど、良くなっていったんだけど、今はやればやるほど止まってくる。だから初日にいいスコアで回っておきたかった」
そんな当初のプランは崩れてしまったが、「明日(2日目)は堅くいきつつ、バーディチャンスは欲しいので60台、『69』を目指して頑張ります。5アンダーを出せればなという感じ」と切り替えている。
前週は静岡県で行われたシニアツアー「ファンケルクラシック」に出場していた手嶋。そして今週も同じ静岡県で「マルハンカップ 太平洋クラブシニア」が行われている。レギュラーツアーのシード権を持つ片山晋呉や宮本勝昌は、そのシニアツアーに出場する。50歳の片山や宮本はレギュラーでもシニアでも優勝することを目標に掲げているが、手嶋の1つ年下でシードを持たない藤田寛之は、海外メジャー出場を目標に、シニアツアーにシフトしてきている。
それに対して手嶋は、レギュラーツアー出場を目指す若手たちがしのぎを削る下部のABEMAツアーにも参戦。なぜそこまでしてレギュラーツアーにこだわるのか。
「片山や宮本はレギュラーのシードを持っている人間。僕だったらどうかなとは思います。僕はABEMAにも出ているくらいで、出られるレギュラーの試合は全部出たい。純粋に若い選手がいっぱいいるので、回っていて楽しいですし、刺激をもらえます。僕はABEMAに行ってもそんなに稼げるわけではない。でも、飛距離でどのくらい置いていかれるのかとか、現状を見たいんです」
19年にシニアデビューし、開幕戦の「金秀シニア」でいきなり優勝を飾ると、21年の「日本シニアオープン」に勝つなど、シニアでも実績を積み上げている手嶋。シニアに専念したほうが環境的にも賞金的にもよさそうに思えてしまう。「レギュラーは55歳まで出られたらいいなと思ってやっていた。もし呼んでもらえたら僕は飛びついていく。若い選手と戦いたい気持ちはいつも持っている」と、55歳を迎える今年まではレギュラーで戦うことにこだわる。
そしてもう一つ。手嶋がこの大会に出たかった理由がある。「こうやって地元の大会に出させてもらって、子供にプレーを見せたいというのはあります」。初日は中学2年生になった一人息子の泰斗(たいと)くんがロープの外から父のプレーを見守った。「だいたいいつもお母さんと一緒で、ひとりで来たのは初めてなんです」と目を細める。泰斗くんもまた、「本気ではないけどゴルフをちょっとしています」という。レギュラーで4日間戦う父のプレーを見せられるか、決勝ラウンド進出をかけて手嶋が大会2日目に臨む。(文・下村耕平)