「〜全英への道〜 ミズノオープン」は、コースのヤーデージが最長8016ヤードとあって、戦前から『飛ばし屋有利』という言葉を耳にする機会が多かった。実際に会場でも、飛距離の出る選手は格好の取材対象だっのだが、実際に4日間の大会を終えてその“前評判”通りになったのだろうか?最終順位と、同大会4日間の飛距離の関係を見てみると…
ツアー屈指の飛ばし屋・星野陸也 飛距離の秘密はウッズばりの“沈み込み”?【連続写真】
優勝(-7):池田勇太=平均飛距離 305.75ヤード(17位)
2位(-6):チャン・キム=平均飛距離 326.13ヤード(2位)
3位(-4):パク・サンヒョン=平均飛距離 290.25ヤード(53位)
3位(-4):ガン・チャルングン=平均飛距離 304.50ヤード(18位)
ここで全英出場を決めた、上位4人の大会期間のドライビングディスタンスは以上の通り。かなりのバラつきが見てとれる。では逆に飛距離上位者の最終順位を見てみると、どうだろうか(2位のキムは上記してあるため割愛)。
1位(332.63ヤード):幡地隆寛=最終順位52位タイ(+10)
3位(321.25ヤード):星野陸也=最終順位24位タイ(+4)
4位(320.00ヤード):リチャード・ジョン=最終順位41位タイ(+7)
5位(318.75ヤード):アンソニー・クウェイル=最終順位24位タイ(+4)
これは4日間を終えた時のスタッツで、予選落ちした亀代順哉(329.50ヤード)、ザック・マリー(324.25ヤード)も2日目終了時点で飛距離のトップ5入りを果たしていた。また最後まで全英行きを争いながらも5位タイで大会を終えたキム・キョンテ(韓国)が、決勝進出者のなかではドライビングディスタンス最下位の268.75ヤード(2日目終了時点で136位)というのも目に入ってくる。これらを見ると、飛距離はやはり“オプション”という面が強い気がする。
では実際に戦った選手はどう思ったのか?今季のドライビングディスタンスで12位につける飛ばし屋の一人、永野竜太郎は「距離が長いからといって、飛ばし屋が有利とは言えない」と語る。「ここはグリーン周りも難しく、グリーン自体もアンジュレーションがあって硬くて、速い。結局はパットやショートゲームの勝負になる」とその感想を語り、飛距離による恩恵は「5%くらいかな」という見解を示した。
一方、会場のザ・ロイヤルゴルフクラブのコース監修をし、大会役員も務める鈴木規夫は、「もちろん飛距離はアドバンテージにはなる」と話す。例えばラフ。昨年は、予定した75ミリよりも長い95ミリまで育ったラフが、距離以上に “モンスター”として選手を苦しめた。しかし今年は「気温が上がらず、50ミリと思ったよりも伸びなかった」と逆の様相。これにより多少フェアウェイを外しても、昨年ほど“大きなダメージ”にはならなかった。距離は長いがコース自体がフラットでワイド。OBも少ないとあれば、セカンドショット以降、より短い番手でグリーンを狙える飛ばし屋は、当然有利というわけだ。
だが、距離の出ない選手もしっかりと戦える工夫がコースには張り巡らされている。まずフェアウェイ。他のトーナメントではおおよそ12ミリくらいの芝の刈り高が、今大会は約8ミリに設定。これで、いわば“ガラスのフェアウェイ”が完成し、ランが出やすい状態に仕上げられた。
またコース図を見ると、グリーン近くや、花道前のフェアウェイが膨らみ、すこし広めのスペースが造られていることに気づく。グリーンに乗らない選手がここを落としどころにし、アプローチでスコアメイクができるようにと考えられた場所だ。「マネジメント次第でしっかりスコアを作れるような計算はしてある」と鈴木。ショットメーカー達の攻略ポイントもちゃんと用意されていたのだ。先ほどラフが昨年よりも短いと書いたが、50ミリだったラフは「曲がれば曲がるほどしんどい」(鈴木)と、大きく外れれば100ミリ以上伸びている場所も。当然そこに入れれば、飛ばし屋だろうが誰だろうが頭を抱えざるを得ない。また広いグリーンには面が3〜4つあり、外しどころを間違えるとたちまちノーチャンスとなる。
優勝した池田が「飛ばし屋に飛距離が及ぶことはない。そこをカバーするのがセカンドショットの精度。彼らが残り100ヤードを打つ時に、僕は130ヤードを打たないといけない。この30ヤードの差をアイアンの精度で埋めないといけない」と語ったように、どれだけの距離を誇っても、やはりセカンドショット、さらにその後のプレーがカギになるのは言うまでもない。全英出場組をみるとパーオン率で池田は13位、キムは5位、パクは4位、チャルングンは1位。同様に平均パットも池田3位、キム7位、パク8位、チャルングン14位と、フィニッシュに至るまでのスタッツは、飛距離のようなバラつきは少なく、いずれも上位といえる。
もちろん4日間で唯一8016ヤードに設定された土曜日には、「早くティを下げてほしかった。距離が伸びれば有利な点が増える」と「69」をマークしたキムや、国内最長の16番パー5(705ヤード)で初のイーグル達成者となった竹内廉など、飛ばし屋としての恩恵を受けた選手もいる。竹内のここでのティショットは、公式記録で355ヤードを記録したのだが、この飛距離があって初めてツーオンが狙える。また星野陸也の「日本のコースでは距離にスイングを合わせて、振り切れないことが多いけど、ここはしっかりと振れる。長い番手を持つのも新鮮だし。楽しい」というのも飛ばし屋ならではの言葉だろう。
目の前にいろいろとデータを並べ、選手らの声をまとめ、あーでもない、こーでもないと検証してみたが、昨年大会で予選通過を果たしたベテラン鈴木亨が開幕前に口にした言葉を思い出したとき、何か腑に落ちた気がした。「距離は長いけど…ゴルフは上がってなんぼでしょ」。周囲がなんと言おうと、そして自身が飛ばし屋か否かに関わらず、選手は持てる技術をフルに発揮し日々戦っている。(文・間宮輝憲)
ツアー屈指の飛ばし屋・星野陸也 飛距離の秘密はウッズばりの“沈み込み”?【連続写真】
優勝(-7):池田勇太=平均飛距離 305.75ヤード(17位)
2位(-6):チャン・キム=平均飛距離 326.13ヤード(2位)
3位(-4):パク・サンヒョン=平均飛距離 290.25ヤード(53位)
3位(-4):ガン・チャルングン=平均飛距離 304.50ヤード(18位)
ここで全英出場を決めた、上位4人の大会期間のドライビングディスタンスは以上の通り。かなりのバラつきが見てとれる。では逆に飛距離上位者の最終順位を見てみると、どうだろうか(2位のキムは上記してあるため割愛)。
1位(332.63ヤード):幡地隆寛=最終順位52位タイ(+10)
3位(321.25ヤード):星野陸也=最終順位24位タイ(+4)
4位(320.00ヤード):リチャード・ジョン=最終順位41位タイ(+7)
5位(318.75ヤード):アンソニー・クウェイル=最終順位24位タイ(+4)
これは4日間を終えた時のスタッツで、予選落ちした亀代順哉(329.50ヤード)、ザック・マリー(324.25ヤード)も2日目終了時点で飛距離のトップ5入りを果たしていた。また最後まで全英行きを争いながらも5位タイで大会を終えたキム・キョンテ(韓国)が、決勝進出者のなかではドライビングディスタンス最下位の268.75ヤード(2日目終了時点で136位)というのも目に入ってくる。これらを見ると、飛距離はやはり“オプション”という面が強い気がする。
では実際に戦った選手はどう思ったのか?今季のドライビングディスタンスで12位につける飛ばし屋の一人、永野竜太郎は「距離が長いからといって、飛ばし屋が有利とは言えない」と語る。「ここはグリーン周りも難しく、グリーン自体もアンジュレーションがあって硬くて、速い。結局はパットやショートゲームの勝負になる」とその感想を語り、飛距離による恩恵は「5%くらいかな」という見解を示した。
一方、会場のザ・ロイヤルゴルフクラブのコース監修をし、大会役員も務める鈴木規夫は、「もちろん飛距離はアドバンテージにはなる」と話す。例えばラフ。昨年は、予定した75ミリよりも長い95ミリまで育ったラフが、距離以上に “モンスター”として選手を苦しめた。しかし今年は「気温が上がらず、50ミリと思ったよりも伸びなかった」と逆の様相。これにより多少フェアウェイを外しても、昨年ほど“大きなダメージ”にはならなかった。距離は長いがコース自体がフラットでワイド。OBも少ないとあれば、セカンドショット以降、より短い番手でグリーンを狙える飛ばし屋は、当然有利というわけだ。
だが、距離の出ない選手もしっかりと戦える工夫がコースには張り巡らされている。まずフェアウェイ。他のトーナメントではおおよそ12ミリくらいの芝の刈り高が、今大会は約8ミリに設定。これで、いわば“ガラスのフェアウェイ”が完成し、ランが出やすい状態に仕上げられた。
またコース図を見ると、グリーン近くや、花道前のフェアウェイが膨らみ、すこし広めのスペースが造られていることに気づく。グリーンに乗らない選手がここを落としどころにし、アプローチでスコアメイクができるようにと考えられた場所だ。「マネジメント次第でしっかりスコアを作れるような計算はしてある」と鈴木。ショットメーカー達の攻略ポイントもちゃんと用意されていたのだ。先ほどラフが昨年よりも短いと書いたが、50ミリだったラフは「曲がれば曲がるほどしんどい」(鈴木)と、大きく外れれば100ミリ以上伸びている場所も。当然そこに入れれば、飛ばし屋だろうが誰だろうが頭を抱えざるを得ない。また広いグリーンには面が3〜4つあり、外しどころを間違えるとたちまちノーチャンスとなる。
優勝した池田が「飛ばし屋に飛距離が及ぶことはない。そこをカバーするのがセカンドショットの精度。彼らが残り100ヤードを打つ時に、僕は130ヤードを打たないといけない。この30ヤードの差をアイアンの精度で埋めないといけない」と語ったように、どれだけの距離を誇っても、やはりセカンドショット、さらにその後のプレーがカギになるのは言うまでもない。全英出場組をみるとパーオン率で池田は13位、キムは5位、パクは4位、チャルングンは1位。同様に平均パットも池田3位、キム7位、パク8位、チャルングン14位と、フィニッシュに至るまでのスタッツは、飛距離のようなバラつきは少なく、いずれも上位といえる。
もちろん4日間で唯一8016ヤードに設定された土曜日には、「早くティを下げてほしかった。距離が伸びれば有利な点が増える」と「69」をマークしたキムや、国内最長の16番パー5(705ヤード)で初のイーグル達成者となった竹内廉など、飛ばし屋としての恩恵を受けた選手もいる。竹内のここでのティショットは、公式記録で355ヤードを記録したのだが、この飛距離があって初めてツーオンが狙える。また星野陸也の「日本のコースでは距離にスイングを合わせて、振り切れないことが多いけど、ここはしっかりと振れる。長い番手を持つのも新鮮だし。楽しい」というのも飛ばし屋ならではの言葉だろう。
目の前にいろいろとデータを並べ、選手らの声をまとめ、あーでもない、こーでもないと検証してみたが、昨年大会で予選通過を果たしたベテラン鈴木亨が開幕前に口にした言葉を思い出したとき、何か腑に落ちた気がした。「距離は長いけど…ゴルフは上がってなんぼでしょ」。周囲がなんと言おうと、そして自身が飛ばし屋か否かに関わらず、選手は持てる技術をフルに発揮し日々戦っている。(文・間宮輝憲)