<カシオワールドオープン 最終日◇28日◇Kochi黒潮カントリークラブ(高知県)◇7335ヤード・パー72>
初日からの首位を守りきった堀川未来夢が2019年の「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」以来となるツアー2勝目を飾った。「長かった」と振り返ったこの2年半。最終ホールでバーディパットを決めて、両手を高々と挙げて、トータル19アンダーで逃げ切ってみせた。
“アイツ”との勝負も決着!? 堀川渾身のガッツポーズ
終わってみれば2位との差は2打。最終ホールをバーディとして優勝を決めたが、その道のりは険しかった。パッティングイップスを公言する堀川にとって、プレッシャーのかかる1日になることは分かっていた。最終組で同組となったのは今平周吾と金谷拓実。勢いも実績もある二人。金谷が1番でバーディを奪うと、今平も2番から連続バーディ。先制パンチをくらった。
今平に1打差に詰め寄られたが、4番で3メートルを沈めると、6番、7番で連続バーディ。9番パー4では2打目を50センチにつけるスーパーショットでバーディ。4打リードしサンデーバックナインに入った。
勢いは堀川にあったが、徐々に雲行きは怪しくなる。10番のパー5こそバーディを奪ったが、ここは金谷、今平ともにバーディ。そこからパーを重ねて迎えた15番パー4。「上りの6メートルを打った瞬間、『確実に出たな』と思った」。右手の動きがおかしくなる“症状”が飛び出した。優勝争いの終盤でイップスが顔を出すという緊急事態。不安ななかで最終盤に突入する。
そんな堀川を横目に、今平が15番から猛ラッシュ。17番までに3連続バーディ。対する堀川には、17番のバーディパットで再び異変が起きた。「左カップいっぱいと思って打ったらあきらかに左に行った」と1.5メートルのパーパットを外しトータル18アンダー。この時点ですでにホールアウトしている宮里優作がトータル17アンダーでホールアウト。そして今平、金谷がトータル16アンダーという状況で最終ホールに入った。
緊張感が最高潮に達したその最終パー5。堀川は見事に2オンに成功し、やっかいな“あいつ”が現れることなく、2パットでバーディ締め。「ずっと気持ちよくは(パッティングを)打てていないけど、この状況で最後までできたのは収穫」と、胸をなで下ろした。
イップスの症状に陥ったプロはこれまで何人もいた。堀川も先輩たちに話しを聞いて回った。「症状が軽い」、「その程度なら大丈夫」と言われることもあったが、本人の感覚は本人にしか分からない。堀川は自身をイップスと自己診断し、うまく付き合う方法を模索した。その一例が、「イップスの感覚を練習でも出せるようになれば対策をうてる」と、練習でもイップスになる方法を探した。
練習は試合のように、試合は練習のようにと言われるが、実際にはそんなに甘いものではない。ましてや、自分の意志に反して動く右手をどうコントロールするかという繊細なパッティングイップスは、ラウンド中に起きてしまえば怖くて打てなくなる。その怖さを打開するために、堀川はイップスととことん付き合う方法をとった。
その結果、「対策法は3つある」と、症状が顔を出したときには、「内容は秘密(笑)」という対策法を駆使してきた。「もちろんイップスを治す気でいます。必ず何か(原因)があるので、それを探したい」と、いまは「イップスになってよかった」とさえ思うようにしている。「悩みが出てからは、練習に打ち込めている。治すために、パッティングを探求しているので、治ったら楽しみです」と、この苦しみの先には明るい未来が待つと信じている。
数年前までは若手の分類だった堀川も、来月16日に29歳の誕生日を迎える。「いまの若手は、1世代若返った感じ。彼らには負けたくない気持ちがある。若手におされるのは悔しい。ゴルフの練習量、熱量は負けたくない」。苦しんでいるからこそ、ゴルフへの情熱はますます増していく。「今年は無理だけど、来年は賞金王を目指してやっていきたい」。暗中模索でもステップを上がった。来年は、“憎いあいつ”とおさらばし、さらに次のステップへと上がっていく。(文・高桑均)
初日からの首位を守りきった堀川未来夢が2019年の「日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills」以来となるツアー2勝目を飾った。「長かった」と振り返ったこの2年半。最終ホールでバーディパットを決めて、両手を高々と挙げて、トータル19アンダーで逃げ切ってみせた。
“アイツ”との勝負も決着!? 堀川渾身のガッツポーズ
終わってみれば2位との差は2打。最終ホールをバーディとして優勝を決めたが、その道のりは険しかった。パッティングイップスを公言する堀川にとって、プレッシャーのかかる1日になることは分かっていた。最終組で同組となったのは今平周吾と金谷拓実。勢いも実績もある二人。金谷が1番でバーディを奪うと、今平も2番から連続バーディ。先制パンチをくらった。
今平に1打差に詰め寄られたが、4番で3メートルを沈めると、6番、7番で連続バーディ。9番パー4では2打目を50センチにつけるスーパーショットでバーディ。4打リードしサンデーバックナインに入った。
勢いは堀川にあったが、徐々に雲行きは怪しくなる。10番のパー5こそバーディを奪ったが、ここは金谷、今平ともにバーディ。そこからパーを重ねて迎えた15番パー4。「上りの6メートルを打った瞬間、『確実に出たな』と思った」。右手の動きがおかしくなる“症状”が飛び出した。優勝争いの終盤でイップスが顔を出すという緊急事態。不安ななかで最終盤に突入する。
そんな堀川を横目に、今平が15番から猛ラッシュ。17番までに3連続バーディ。対する堀川には、17番のバーディパットで再び異変が起きた。「左カップいっぱいと思って打ったらあきらかに左に行った」と1.5メートルのパーパットを外しトータル18アンダー。この時点ですでにホールアウトしている宮里優作がトータル17アンダーでホールアウト。そして今平、金谷がトータル16アンダーという状況で最終ホールに入った。
緊張感が最高潮に達したその最終パー5。堀川は見事に2オンに成功し、やっかいな“あいつ”が現れることなく、2パットでバーディ締め。「ずっと気持ちよくは(パッティングを)打てていないけど、この状況で最後までできたのは収穫」と、胸をなで下ろした。
イップスの症状に陥ったプロはこれまで何人もいた。堀川も先輩たちに話しを聞いて回った。「症状が軽い」、「その程度なら大丈夫」と言われることもあったが、本人の感覚は本人にしか分からない。堀川は自身をイップスと自己診断し、うまく付き合う方法を模索した。その一例が、「イップスの感覚を練習でも出せるようになれば対策をうてる」と、練習でもイップスになる方法を探した。
練習は試合のように、試合は練習のようにと言われるが、実際にはそんなに甘いものではない。ましてや、自分の意志に反して動く右手をどうコントロールするかという繊細なパッティングイップスは、ラウンド中に起きてしまえば怖くて打てなくなる。その怖さを打開するために、堀川はイップスととことん付き合う方法をとった。
その結果、「対策法は3つある」と、症状が顔を出したときには、「内容は秘密(笑)」という対策法を駆使してきた。「もちろんイップスを治す気でいます。必ず何か(原因)があるので、それを探したい」と、いまは「イップスになってよかった」とさえ思うようにしている。「悩みが出てからは、練習に打ち込めている。治すために、パッティングを探求しているので、治ったら楽しみです」と、この苦しみの先には明るい未来が待つと信じている。
数年前までは若手の分類だった堀川も、来月16日に29歳の誕生日を迎える。「いまの若手は、1世代若返った感じ。彼らには負けたくない気持ちがある。若手におされるのは悔しい。ゴルフの練習量、熱量は負けたくない」。苦しんでいるからこそ、ゴルフへの情熱はますます増していく。「今年は無理だけど、来年は賞金王を目指してやっていきたい」。暗中模索でもステップを上がった。来年は、“憎いあいつ”とおさらばし、さらに次のステップへと上がっていく。(文・高桑均)