河本の3打目。幸いにも前は開けていた。上にある木の枝を避けて、低い球で打ったアプローチをピンの手前3メートルに寄せた。サンヒの距離のあるバンカーショットはピンをオーバーして4メートルに。この返しのバーディパットは惜しくもカップの右フチをなめたが、入らず。

今大会最後の一打は河本のバーディパット。決めれば優勝だ。「すごく緊張して震えていました」という大きく右に曲がるスライスラインを見事に読み切り、河本に軍配が上がった。

グリーン脇では昨年まで在籍していた日体大の同期、石川航の姿が。河本が気づくと二人はしっかりと抱き合い、喜びを分かち合った。「おめでとうしか覚えてないですけど、一緒に喜んでくれてうれしいです」とはにかんだ。

3年前、姉の河本結がツアー初優勝を挙げたとき、河本はキャディとして隣にいた。そんな姉は最終日を前に、『楽しんで（ハートマーク）』と弟にメッセージを送っていた。そして、あす29日は、姉の24回目の誕生日。「いい誕生日プレゼントになったかなと思います。多分、きょうの夜会うので、いろいろ話したいと思います」と、特別な史上4組目の男女きょうだいツアー優勝となった。

そして、「今までサポートしてくれる人たちがいなかったら、この優勝はないので、感謝してもしきれないくらいですね」と話すと、183センチの大きな体を震わせた。涙があふれ出る。「まずはじめにお父さんとお母さんに電話したい」。その雄姿を見てたであろう両親に感謝を伝えた。

昨年のQTで失敗し今年は下部ツアーが主戦場だったが、主催者推薦のチャンスで得た大会最年少優勝によって、今後はレギュラーツアーにフル参戦できる。最後は「今シーズンはこれからどんどん試合に出させてもらうので、いずれはアメリカでメジャー優勝したいと思っている。ぜひ応援をお願いいたします」と涙でつまりながらも、将来の大きな目標をしっかり自分の言葉で伝えた。現在のドライビングディスタンスは平均323.75ヤードで堂々1位。この勝利によって、ワールドクラスの飛ばし屋が世界に飛び立つ日が近づいた。