<ACNチャンピオンシップ 3日目◇7日◇三甲ゴルフ倶楽部 ジャパンコース(兵庫県)◇7295ヤード・パー72>
今月2日に29歳の誕生日を迎えた“日本一曲がらない男”がじわりと追い上げた。稲森佑貴が第3ラウンドを終えてトータル11アンダー・3位タイまで浮上し、好位置で最終日を迎える。
1イーグル・2バーディ・1ダブルボギーで回った「70」のラウンドは、「耐えのゴルフでした」と振り返る。朝一の1番パー4でもティショットはもちろんフェアウェイ中央。だが2打目をグリーン右サイドのガードバンカーに入れてしまい、その場に行くと「大目玉」になっていた。「ピンを狙ったら逆側のバンカーに行ってしまう可能性がありました。なのでピンより右に」と放った大目玉ショットはカップの右側を勢いよく通過してロングパットが残り、3パットのダブルボギーとスタートからスコアを2つ落としてしまう最悪のスタートとなった。
出鼻をくじかれたが、ここで崩れるわけにはいかない。スタート前は「スコアを伸ばそう」と考えていた稲森だが、キャディをつとめる野村拓矢キャディと「残り全部パーでいこう」と気持ちを切り替える。2番からはグリーンを捉えて2パットと安定したプレーでパーを並べると、7番パー5で運がまわってきた。ティショットは安定のフェアウェイで2打目を「ピンを狙ったらたぶんグリーンをオーバーすると思って、キャディさんと話し合ってわざとグリーンの右を狙うことにして」とグリーン右サイドに運んだ。
3打目の15ヤード弱のアプローチは「スネイクラインでした。落としどころからはフックラインで最後はスライス」とエッジにワンバウンドさせたボールはゆっくりと転がりそのままカップに吸い込まれチップインイーグル。そのとき野村キャディは「流れが来たな」と思いつつも「それでも残りは全部パーでいいよっていう気持ち」で後半に挑んだという。
野村キャディは2020年の「日本オープン」で初めて稲森のキャディを担当し、ナショナルオープン2勝目に力を添えた。22年の「中日クラウンズ」でも優勝へと導いている。今大会でも二人が笑い合う姿は多く見られ、ミスをしたときでも前向きに切り替えらる様子がうかがえる。
日に日にコースコンディションが難しくなっている今大会は、順位の入れ替わりが激しい。「トップ10内の選手はみんなチャンスがあると思います。(優勝の)意識はすると思いますけど、普通にできればいいかな」と、この日のように攻めに行くのではなく「パーで行こう」の気持ちで気負わずに最終日に挑む。
この3日間のラウンドでフェアウェイを外したのはたったの4回。“日本一曲がらない男”の力は難コースでこそ力を発揮する。今季初優勝、ペア3勝目を、“勝運”を持つ野村キャディと狙う。(文・高木彩音)