<日本オープン 最終日◇15日◇茨木カンツリー倶楽部 西コース(大阪府)◇7315ヤード・パー70>
石川遼の1つ前を回っていた岩崎亜久竜は、トータル8アンダー・単独首位でホールアウトしていた。最終18番パー5、フェアウェイからのセカンドショットは残り205ヤード。2日目にイーグルを奪っているホールで、再びイーグルを獲れば追いつけるという場面だった。だが、痛恨の“ダフり”でボールはグリーンに乗らず。3打目のアプローチが入らなかった時点で、敗戦が決まった。
取材エリアに現れた石川の目には涙が浮かんでいた。前半はボギーが先行し、2バーディ・2ボギーと伸ばせなかったが、後半14番ではピンを果敢に攻めて1メートルにつけ、16番では5メートルの下りパットを沈めて首位の岩崎に1打差と迫った。「本当にいいゴルフができたっていう…それだけですね」と涙ぐみながら話した。
首位と2打差で出た最終日。1番、2番ホールではいきなりトラブルに見舞われた。1番ではウェッジでのセカンドショットが「フェースが開いていたっぽい」と大きく右に飛んでラフへ。左足下がりから近いピンに打つアプローチが寄らず、ボギースタートとなった。
続く2番パー5ではドライバーのティショットがあわやOBかというほど右に飛び、暫定球も打ったが、何とか1球目が見つかる。セカンドショットもフェアウェイに戻せず右ラフ。3打目もピンの右に飛ぶも、何とかパーでおさめた。意図しない“右”が4球続く立ち上がり。今大会を通じて3番目にやさしい1番と、最もやさしい2番の伸ばしやすい2ホールで1つ落としたのは痛かった。
「自分でもビックリな1番、2番だった。きょう一日が長そうだなと思った」と追撃プランは狂った。「わけの分からないショットが出て、ヤバイヤバイと。何でこんなに変なところからクラブが下りているんだろうと」。石川の頭は混乱したが、その後はなんとか立て直す。サンデーバックナインは13番で左のカート右に飛んだのを除いて、6ホールでフェアウェイをとらえ、ボギーなしの2バーディで岩崎に1打差まで迫った。
1打差で迎えた最終18番パー5。セカンドのライは問題なく、石川ならイーグルを獲るかもしれないという雰囲気もあった。しかし、スライスが出やすいツマ先下がり、左足下がりから、左のピンに対してドローで狙ったことが、“ダフり”につながってしまった。自分から見てボールの右側と手前側が高いため、インからヘッドを入れてドローを打ちにいくとダフりやすいのだ。
まさかのミスショットに「そのリスクがあるとは思っていなくて。あそこまでのダフりというのは…」と肩を落とす。セカンド地点では前の組の岩崎がバーディで上がったと認識しておらず、「ピンの右5メートルのイーグルパットを打って、バーディでも追いつける」と考えていた。結局18番はパーに終わり、岩崎には2打届かず。トータル6アンダー・2位でホールアウトした。
今大会のテーマにも掲げていたように、4日間を通してパー3以外のホールは全ホールでドライバーを握った。「何回かちょっと(ドライバー以外も)よぎりましたけど(笑)。でも3番ユーティリティに手を置くところまではいかなかったです」と笑う。ブレずに決めたことを貫き単独2位。「ドライバーで打つのが怖くなって、全部刻むことも自分のなかで多少なりともあった。(その中で)自分の力を信じてやることができた。どの試合でも変わらないと思います」と、次の試合につながる手応えをつかんだ。
これで単独2位の賞金2310万円を加算して、賞金レースは14位から7位に浮上。今大会終了後の上位8人の資格で、次週の「ZOZOチャンピオンシップ」の出場権を手に入れた。「自分の修正力だったり、ズルズル行かないところ。それを自分の生命線でやっていけたら、さらに楽しいのかなと思います」。顔を上げて日本開催の米ツアーに挑む。(文・下村耕平)