<日本プロゴルフ選手権 3日目◇6日◇富士カントリー可児クラブ 志野コース(岐阜県)◇7164ヤード・パー71、7201ヤード・パー72>
「めっちゃ悔しかったです」。初日からボギーフリーのラウンドを続けていた蝉川泰果だが、最終ホールでボギーを喫した。結果は「67」だったが、同じく首位タイからでた杉浦悠太が「65」をマークしたことでムービングデーに一歩後退した。
蝉川、杉浦、清水大成の3人が首位から出た3日目は、蝉川が2番でイーグル、3番でもバーディと一気にスタートダッシュを決めた。「突き放せる展開に持っていけるんじゃないかな」と自身もそう感じた序盤。しかし、思いのほか杉浦を振り切れずにいると、次第に形勢逆転。後半に入ると蝉川が追う立場となった。16番から意地の2連続バーディを奪って見せるも最終18番で痛恨のボギーとして、首位の杉浦とは2打差がついた。
「後半は杉浦選手が4連続バーディを獲ったりして、自分はいいゴルフをしているのになかなか…。途中も13番、14番でいいバーディチャンスを2回ともプッシュしてしまって。あれもラインは浅目に行きたかったので、最初に読んだライン通りに打てていれば入ったのかな…」。振り返るとタラレバが尽きない。ただ、杉浦の先行を許したことよりも「ボギーフリーの記録を作りたかった」と18番のボギーを特に悔やんだ。
ちなみに詳細なデータの残る1985年以降、日本プロで72ホールをボギーなしでラウンドしたプレーヤーは一人もいない。なお、最少ボギー数は『1』で1996年に尾崎将司、2008年に片山晋呉が記録しており、ビッグネームが並ぶ。また、記録でいうと、22年に「日本オープン」、23年に「日本シリーズJTカップ」を制覇している蝉川は、メジャー3冠の期待がかかる。もし蝉川が勝てば23歳178日の達成で、尾崎将司の27歳248日を大幅に更新する、まさに偉業達成がかかる。
最年少3冠記録は蝉川の頭の片隅にはもちろん入っている。「記録を作って優勝の回数を増やしたいです。スタートコールでも優勝回数を何十勝していると言われると嬉しいので、記録に対してそこまでこだわりはないですけど、少しこだわっています」。そして勝利に飢える蝉川のこんな強い意気込みも飛び出した。「とにかく誰よりも勝ちたいとういう気持ちを持ってやりたい。ガチで獲りにいきたいです。そういう気持ちで3日間できたので、4日目も同じ気持ちで頑張りたい」。
これまでツアー通算4勝を挙げる蝉川だが「トップタイか、トップからのスタートでしか優勝したことがない。どうやったら追いかける立場で勝てるのか、しっかり考えたい」。蝉川にとって偉業達成がかかる今大会。ハングリー精神旺盛な23歳は、初の逆転勝利へのシナリオ描く。(文・齊藤啓介)