悪天候のため初日の競技が中止となり、54ホールの短縮競技となった「長嶋茂雄 INVITATIONALセガサミーカップ」はブラッド・ケネディによる5年ぶりの優勝で幕を閉じた。なぜオーストラリアの44歳は、北の大地で久々に勝つことができたのか。田島創志が深層を語る。
【写真】5年ぶりに勝利を果たした男の笑顔
■勝負を分けた16番 ヒョンソンは青木功の魔法にかかってしまった
指定練習日から雨、そして大会初日に中止となるほどの悪天候となった今大会。それでも大会最終日には、ザ・ノースカントリーGCらしいコンディションを取り戻し、2014年大会の優勝者・石川遼が「今日はコースコンディションが素晴らしかった。グリーンは2〜3フィート速くなっていて、全くタッチを合わせられなかった」というほどにまで回復した。
そんな中、ケネディは「64」をたたき出して、スタート時にあった4打差をひっくり返し逆転優勝。最終的には2位のキム・ヒョンソン(韓国)に3打差をつける快勝劇だった。2人の明暗を分けたのが今大会最高の難易度を誇った16番のパー3。池に囲まれたアイランドグリーンが名物で、最終日は左にピンが切られたこのホールには多くの選手が苦戦した。
そんな難攻不落のパー3をパーとして流れを作り、17番から連続バーディを奪ったケネディに対して、ヒョンソンはボギー。すでにホールアウトしたケネディとの差が3打となり、栄冠が手からすり抜けた。今年もドラマが生まれたこのホールを、田島は「(コース設計・監修を務める)青木功の魔法がかかっている」と表現する。
「ティショットからの視覚的には、フェードで攻めたくなるホール。だけど実際は右からの風が入るので、フェードだと飛ばなくなってしまう。ヒョンソン選手は基本的にフェード一辺倒だから難しかったでしょう」。ヒョンソンは、まさにティショットを手前にショートして、アプローチを寄せきれずボギーとなってしまった。
「攻略法としては、右のバンカーに向いて短いクラブでしっかりとつかまえること。ですが、どうしても右に向きたくない感じがすごい。センターから左を向いてフェードを打ちたくなる。本当に腹が立つくらい(笑)。それがまさに青木さんマジック」
一方のケネディはベテランらしくこれまでの経験と「飛距離はないが、状況によってドローとフェードを両方打ち分けられる選手」というだけあって、臨機応変にピンハイにつけて2パットのパー。ケネディも最終日を振り返り、「今シーズンで一番難しいホールだった。とても緊張した。あのホールが今日のベストプレーだね」と9つ奪ったバーディを差し置いてベストショットに挙げた。
■ケネディは自分の長所を分かっている その上で道具の恩恵を受けた
優勝したケネディとは、アジアンツアーでともに戦っていたころから旧知の仲だという田島。長年見ている中でケネディは「自分を分かっている選手」と評した。
「長所と短所を分かっている選手ですね。ショートゲームやパター、そしてアイアンの精度が彼のストロングポイント。一方でウィークポイントは飛距離ですね。精度でここまで戦ってきた選手です」
そんなケネディは近年飛距離が伸びてきているという。「道具の進化の恩恵を受けている選手の一人と言えるでしょう。元々曲がらない選手で、フェースローテーションが少ない。そんな彼は現代の大きなドライバーのメリットを最大限に得ている。正確性を残しつつ、飛距離を伸ばせていますね」
ケネディはタイトリストの917でもヘッドの大きい460ccのD2を使用。投影面積が大きく、重心距離が長いクラブは44歳のポテンシャルをさらに引き出し、5年ぶりの優勝へ大きなアシストをした。
解説・田島創志(たじま・そうし)/1976年9月25日生まれ。ツアー通算1勝。2000年にプロ転向し、03年『久光製薬KBCオーガスタ』で初日から首位を守り、完全優勝。青木功JGTO(日本ゴルフツアー機構)体制では、トーナメント管理委員会 コースセッティング・アドバイザーを務める
【写真】5年ぶりに勝利を果たした男の笑顔
■勝負を分けた16番 ヒョンソンは青木功の魔法にかかってしまった
指定練習日から雨、そして大会初日に中止となるほどの悪天候となった今大会。それでも大会最終日には、ザ・ノースカントリーGCらしいコンディションを取り戻し、2014年大会の優勝者・石川遼が「今日はコースコンディションが素晴らしかった。グリーンは2〜3フィート速くなっていて、全くタッチを合わせられなかった」というほどにまで回復した。
そんな中、ケネディは「64」をたたき出して、スタート時にあった4打差をひっくり返し逆転優勝。最終的には2位のキム・ヒョンソン(韓国)に3打差をつける快勝劇だった。2人の明暗を分けたのが今大会最高の難易度を誇った16番のパー3。池に囲まれたアイランドグリーンが名物で、最終日は左にピンが切られたこのホールには多くの選手が苦戦した。
そんな難攻不落のパー3をパーとして流れを作り、17番から連続バーディを奪ったケネディに対して、ヒョンソンはボギー。すでにホールアウトしたケネディとの差が3打となり、栄冠が手からすり抜けた。今年もドラマが生まれたこのホールを、田島は「(コース設計・監修を務める)青木功の魔法がかかっている」と表現する。
「ティショットからの視覚的には、フェードで攻めたくなるホール。だけど実際は右からの風が入るので、フェードだと飛ばなくなってしまう。ヒョンソン選手は基本的にフェード一辺倒だから難しかったでしょう」。ヒョンソンは、まさにティショットを手前にショートして、アプローチを寄せきれずボギーとなってしまった。
「攻略法としては、右のバンカーに向いて短いクラブでしっかりとつかまえること。ですが、どうしても右に向きたくない感じがすごい。センターから左を向いてフェードを打ちたくなる。本当に腹が立つくらい(笑)。それがまさに青木さんマジック」
一方のケネディはベテランらしくこれまでの経験と「飛距離はないが、状況によってドローとフェードを両方打ち分けられる選手」というだけあって、臨機応変にピンハイにつけて2パットのパー。ケネディも最終日を振り返り、「今シーズンで一番難しいホールだった。とても緊張した。あのホールが今日のベストプレーだね」と9つ奪ったバーディを差し置いてベストショットに挙げた。
■ケネディは自分の長所を分かっている その上で道具の恩恵を受けた
優勝したケネディとは、アジアンツアーでともに戦っていたころから旧知の仲だという田島。長年見ている中でケネディは「自分を分かっている選手」と評した。
「長所と短所を分かっている選手ですね。ショートゲームやパター、そしてアイアンの精度が彼のストロングポイント。一方でウィークポイントは飛距離ですね。精度でここまで戦ってきた選手です」
そんなケネディは近年飛距離が伸びてきているという。「道具の進化の恩恵を受けている選手の一人と言えるでしょう。元々曲がらない選手で、フェースローテーションが少ない。そんな彼は現代の大きなドライバーのメリットを最大限に得ている。正確性を残しつつ、飛距離を伸ばせていますね」
ケネディはタイトリストの917でもヘッドの大きい460ccのD2を使用。投影面積が大きく、重心距離が長いクラブは44歳のポテンシャルをさらに引き出し、5年ぶりの優勝へ大きなアシストをした。
解説・田島創志(たじま・そうし)/1976年9月25日生まれ。ツアー通算1勝。2000年にプロ転向し、03年『久光製薬KBCオーガスタ』で初日から首位を守り、完全優勝。青木功JGTO(日本ゴルフツアー機構)体制では、トーナメント管理委員会 コースセッティング・アドバイザーを務める