<ゴルフ日本シリーズJTカップ 最終日◇1日◇東京よみうりCC(東京都)◇7002ヤード・パー70>
今季最終戦は、1999年以降の記録だとツアー史上最多人数の6人によるし烈な賞金王争いが大きな話題となったが、河本力と姉・結との姉弟タッグも今大会の目玉の一つとなった。
今大会の出場が決まった場合にタッグを組むことは開幕戦から計画していた。キャディとしての仕事を終えた結は開口一番「疲れた。やばい」。アップダウンのある東京よみうりCCは手引きカートとはいえ、相当な体力を使ったようだ。
長く温めてきたこの計画も、これにて終了。力はトータル4アンダー・10位でシーズンを締めくくった。「シーズン序盤のゴルフの状態から見ると、よくここまで来たな、と。トップ10に入れたことは大きいと思います。来年の課題も明確に見えたのでほっとしています」と、結は弟のプレーをこう振り返った。
その明確な課題とは「ショットは言うことないですけど、パワーがある分、ロフトを寝かせていかないと飛んじゃうにもかかわらず、ハンドファーストが全部強い。ウェッジも高さが出なくて、スピンが効かなかったり」。4日間、キャディとしてプレーを間近で見たからこそ分かった、技術的な課題であった。
そして、結の“ゴルフ脳”が大きく役立つ一幕もあった。6番パー5(519ヤード)では4日間のうちイーグルを3回奪ったが、この裏には結からのあるアドバイスがあった。初日はセカンドが160ヤードほどで、もちろん握ったのはアイアン。セカンドは打ち下ろしとなっており、グリーンはブラインドだ。力はピン方向に狙いを定めるも、結は「左から8メートルのライン」を指示していた。そして、放った一打は「ひっかけたと思った」(力)ショットがナイスオン。「その通りだな」(力)と、助言通りの結果を受けて、ここから姉のマネジメントを信じ切った。
もちろん、力の圧倒的な飛距離があってこそのイーグル奪取だが、飛距離以外を伸ばして欲しいという願いが結にはある。「世界に行くには、飛距離以外でやっていかないといけない。例えば、ドライバーを封印したとしても毎日アンダーで上がってくる技術が必要になると思う」。
さらに「力がベースになっているので」と“免疫”がついてしまったようで、弟の飛距離に驚きはない。むしろ、「『まだまだ飛ばせよ』っていうテンションでいますよ」(力)。ドライビングディスタンスで3季連続1位になった弟へ、姉はプレッシャーをかけている。
長いシーズンを終えて、「勝てたら自信になっただろうけど、勝てていないのでまだまだ。ただ、日本シリーズで戦えたということは、後半戦ですごく成長していると思いました」と振り返る。22年の「バンテリン東海クラシック」から優勝は遠ざかっているものの、2年ぶりに最終戦に出場できたことに手応えを感じながらシーズンを終えることができた。
結は弟のゴルフをこう総括した。「勝てなかったことに意味がある。来年はやれると思います。こんなに力にフォーカスして見る試合はなかったので、(力が)どういう心境でどういう風になるのか理解できた。来年は二人で年間王者になります」。これに対して力も「やります!」と呼応した。姉弟で来シーズンを席巻する青写真を描いた。(文・齊藤啓介)