<ダンロップフェニックス 3日目◇18日◇フェニックスカントリークラブ(宮崎県)◇7042ヤード・パー71>
歴史と伝統ある大会は、今年50回の節目を迎える記念大会。松山英樹、ブルックス・ケプカ、ウィンダム・クラーク(ともに米国)ら海外メジャーチャンプもフィールドに揃うなか、22歳のアマチュア・杉浦悠太(日大4年)が首位を快走。2位とは4打差をつけるトータル12アンダーで最終日を迎える。
突風が断続的に吹いたムービングデーもアンダーにまとめ、初日から「64」、「68」、「69」と3日連続で60台をマーク。自身の調子のよさが、そのままスコアに表れていることに胸を張る。
アマチュアVに王手をかけた。残り18ホールを逃げ切って制すれば、史上7人目(8回目)の快挙達成。その偉業を成し遂げている“先輩”たちは、杉浦の奮闘をどのように見ているのか。
福井工大付属福井高2年生だった2018年には「日本ジュニア」で優勝。高校時代から輝かしい成績を収めているが、その1年前、17年には「石川遼インビテーショナル ジャパンジュニアマスターズ」の初代王者になった。石川は杉浦の印象について「当時から全く曲がらない子だったけれど、そのまま飛距離が出ているのを感じた。これからもっともっと期待できる選手」と成長を感じている。
石川は当時15歳245日だった07年に「マンシングウェアオープンKSBカップ」でアマチュア優勝を飾り、それは1980年の倉本昌弘に次ぐ史上2人目のことだった。その時『今後アマチュアで優勝する選手が表れるのだろうか』と話題になったが、11年に松山英樹が続くと、19年の金谷拓実からは21年の中島啓太、22年の蝉川泰果(2勝)と、若き逸材が輝きを放ち続けている。「ジュニアゴルファーの層が厚く、レベルが全体的に上がっている。年を追うごとにアマチュア優勝の間隔が短くなっているのが物語っている」と話す。
松山は「一度も回ったこともないですし、どういうプレーをするのか分からないですけれど」としながら、「崩れそうもない」と22歳の快進撃に舌を巻く。そして「彼にも頑張ってほしいと思いますし、追いつけるように最善の準備をしたい」と日本のエースとしてエールを送りながらも、壁としても立ちはだかりたい。
同時期にJGA(日本ゴルフ協会)ナショナルチームに在籍し、杉浦のひとつ先輩にあたる中島は「テンポが良くて、あまりズルズル崩れない」という安定感を印象に抱いている。エース格だったふたりは、ともにチームを引っ張っていった存在。「(他の)後輩からは『(啓太)さん』と呼ばれるけど、彼(杉浦)だけは『くん』で呼んでくれる」と中島は少しうれしそうに笑ったが、最終日は最終組で可愛い後輩と直接対決を繰り広げる。
史上初のアマ2勝を飾った蝉川は、杉浦よりも学年がひとつ上。それでも「僕よりも先にナショナルチームに入っていて、実績は上だった。高校時代から本当にうまくて、すごく認めている存在」という。蝉川が制した「日本オープン」ではともにアマチュアとして優勝争いを演じた(杉浦は3位)。「経験値としては一番持っている。崩れないと思うけど、少しでも食らいついていきたい」と好敵手に挑む。
再来週にサードQTを控える杉浦にとって、これがアマチュア人生最後の試合。目指してきたアマ優勝を叶える好機を作った。「最後の最後でチャンスがきた。しっかりつかみ取りたい」。国内外のトッププレーヤーが歴代覇者に名を連ねる伝統ある大会、そして日本ツアーの歴史に、新たな1ページを刻んでほしい。(文・笠井あかり)