<ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント! 最終日◇23日◇PGM石岡ゴルフクラブ(茨城県)◇7039ヤード・パー70>
日本で初めて行われた欧州ツアー。その歴史的な大会を制したのは、オーストラリアの27歳、ルーカス・ハーバートだった。アーロン・コッカリル(カナダ)とのプレーオフにもつれた最後は3.5メートルのバーディパットを沈めてガッツポーズ。キャディのニック・ピューさんと抱き合って喜びを爆発させた。
首位を1打差で追ってスタートした最終日。1番のバーディで首位に並ぶと、5番パー5でイーグルを奪って首位に躍り出た。「ゲームをコントロールしている感覚はあったので、優勝できると思ってプレーしていた」。その後、12番までに2バーディ・2ボギーとスコアは停滞し、13番からはスコアが動かなかったが、「後続の選手が追いつけると思わないように、自分のゴルフを信じていた」と強い気持ちを保ち続けた。
そんな心が揺らいだのは、インで唯一のパー5、16番で2メートルのバーディパットを外した場面。同じトータル15アンダーで並んでいたコッカリルは、1つ後ろの最終組で最後のパー5を残していた。「17番と18番はバーディを獲るのが大変だと思っていたので、16番で獲れなかったときは勢いを失ったことを恐れていた」と語る。しかし、コッカリルもバーディを獲れず。2人とも難しい17、18番をパーとしてプレーオフに突入した。
18番の繰り返しで行われたプレーオフ1ホール目は、ともにバーディトライがカップをかすめてパー。2ホール目にハーバートはティショットを大きく右に曲げて林の中に。コッカリルはフェアウェイをとらえて窮地に立たされた。しかしハーバートの落ちた場所がよかった。カート道で救済を受けることができたのだ。「ドロップすることができて木も邪魔にならず、しかも少し浮いている状態でライが良かった。距離もサンドウェッジのフルショットでピッタリだった」。
ベアグラウンドからの勝負の2打目は、「あのライからは思い通りの完璧なショットが打てた」とピン手前3.5メートルにピタリ。コッカリルは先に下りのバーディパットを外してパー。入れれば優勝のウイニングパットを「手が震えたけど、落ちて入ってくれたのはクールだった」としっかり決めて欧州ツアー3勝目、ポイントランキング4位に浮上した。
世界をまたにかけてプレーするハーバートは、2021年10月の「バターフィールド・バミューダ選手権」で米国男子ツアー初優勝。現在は米ツアーを主戦場としている。世界ランキングは今大会出場選手中最上位の59位。「この1週間は、自分がここのベストランカーだと言い聞かせるようにしたんだ。そのおかげで、思い通りのショットを打つ自信がない厳しい場面も乗り切ることができた」。
アマチュア時代には「日本オープン」、プロになってからも「アジアパシフィック ダイヤモンドカップゴルフ」と、日本でプレーした経験がある。「日本はコースも食べ物も街もすべて素晴らしいので、勝てて本当にうれしい」と笑顔を見せる。日本ツアーと欧州ツアーの共催で日本でのシード権も得た。「スケジュールが合えばいつでも日本に来てプレーしたい気持ちはある」としながらも、「主軸はPGAツアーなので、アメリカでプレーすることが多くなると思う」と話す。
今後の目標については「ミドリが好きなのでマスターズに勝てたらうれしいけど、欲張らずにメジャーならどの大会で勝ってもうれしい」とメジャー制覇を挙げる。「同じ境遇でプレーしてきたという意味では、一番親近感があるアダム・スコットがヒーロー」という27歳が、昨年の「全英オープン」を制したキャメロン・スミスに続いて、オーストラリア勢のメジャー優勝者に名を連ねるかもしれない。(文・下村耕平)