<中日クラウンズ 初日◇2日◇名古屋ゴルフ倶楽部 和合コース (愛知県)◇6557ヤード・パー70>
第64回目を迎える歴史ある大会「中日クラウンズ」が始まっている。この舞台には、年に一度だけレギュラーツアーに出場しているディネッシュ・チャンド(フィジー)の姿があった。主催者推薦を受けての出場が続いているが、ここに足を運ぶたびに「オレの仕事場は“ココ”」とプロゴルファーとしての居場所を改めて感じているという。
フィジー出身で子どものころからキャディのアルバイトをしてゴルフと関わっていた。そんなときに同郷で海外メジャー3勝を遂げているビジェイ・シンと出会う。そこから本格的にゴルフに取り組み19歳でプロ入りを果たした。20歳のときに縁あって来日し、長野県のゴルフ場で練習に励んだ。
25歳当時の1997年に日本のプロテストに合格。翌98年にツアーデビューを果たし、4戦目の「デサントクラシック」で初優勝を遂げている。ドライビングディスタンスでは同年290.82ヤード、99年286.84ヤードを記録し2年連続で1位に輝いた。2002年には「ワールドカップ」にもシンとペアを組んで出場している。04年の「マンダムルシードよみうりオープン」では最終日に1ラウンドで3イーグルを奪って通算3勝目を挙げた。10年は国内男子下部ツアーで2勝して賞金ランキング1位になっている。
11年のシーズンはケガの影響で休養。12年は復活するも、翌年からは下部ツアーが主戦場となった。そして18年からは中日クラウンズのみに出場している。会場では、チャンドの姿を見た谷口徹をはじめとするベテランプロや若手のプロたち、メーカーの方や大会関係者など多くのひとたちが声をかけているシーンが見られる。「試合に出ていたときの時代とは違うけど、みんな挨拶してくれる。うれしいよね」と笑顔で話す。和合は、チャンドにとってツアーの雰囲気を味わえる楽しい場所だ。
現在は千葉県のゴルフ場でラウンドやレッスンを行っている。体の変化もあり、スイングにも影響が出ていた。「振るスピードが出なくなったね。昔は痩せていて、飛ばし屋だったなって今わかる。当時は飛ばし屋だと思ってないからさ。よくやってたよ(笑)」。かつて“飛ばし屋”として戦っていた時代を懐かしく感じている。
競技から離れているチャンドにとって、毎年この時期が唯一“プレーヤー”として働けるとき。98年から長く回っている和合だが「毎年来ているけど、難しい。グリーン周りが難しい。だから和合で予選通るとその年は上手くいくというジンクスがあるほどだよ」と何度回っても“楽”ができないコースだと、苦い表情を見せるが、どこか楽しげだ。
一年ぶりの和合を攻略するために、今週はある一本を準備。「今週のために2番ユーティリティ(18度)をつくってもらった。ドライバーが打てないところはこれを使うよ。苦手だけどね(笑)」。ドッグレッグが多い同コースは、ティショットを刻むことがマネジメントのカギとなる。大会前には、練習場でショットの調整を入念に行った。まだまだ現役選手に負ける気はない。
今回の目標は大切なひとの笑顔を会場で見ること。「娘のために頑張るしかないな。予選通ったら土日に応援来てもらうことになっているんだよ」とうれしそうに話す。愛娘に父親のかっこいい姿を見せたい。そんな気持ちを力に変えつつ「今年が最後だと思って頑張って気合入れていく」と、この先いつ“和合引退”となっても悔いが残らないような一週間にするつもりだ。(文・高木彩音)