黄アルムの完全優勝で幕を閉じた今年の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」。表彰式ではそのアルムとともに、単独3位となった松田鈴英も表彰されていた。といっても、3位に入ったからではない。“ルーキー・オブ・ザ・NEC軽井沢72賞”という特別賞を受賞したからだ。『あれっ、松田がプロテストに合格したのは昨年では?』と思う人もいるだろう。実はこのタイトル、2016〜18年にLPGAへ入会した選手と17、18年のLPGA単年登録者を対象としている。つまり、一昨年のプロテスト合格者にまで枠を広げているのだ。ただし、16年以前に一度でも単年登録した選手は対象者から除かれる。例を挙げれば、今年のプロテストにトップ合格したエイミー・コガは16年に単年登録をしているので対象外となる。
【写真】松田鈴英に原英莉花!大会のフォトギャラリーで振り返り
今年は25人が対象選手となったが、新垣比菜、勝みなみといったツアー優勝経験のある選手や賞金ランキング10位(今大会終了後9位)の小祝さくら、ステップ・アップ・ツアーで今季2勝している原英莉花など、実力者が顔をそろえていた。この中で最上位に入った選手がタイトルを獲得できるわけだが、トーナメントに出場する以上、どの選手も優勝しか目指していない。たとえプロテストに合格したばかりの選手といえども、勝利にこだわる気持ちは同じだ。最初から特別賞を狙いにいく選手は皆無なだけに、果たしてこのタイトルにどのような意味があるのだろうかと思った。しかし、何人かの選手に話を聞くと、その考えが間違いであることが分かった。
「私にはいい意味でものすごいモチベーションになりました」と語るのは、昨年5位タイに入って“ルーキー・オブ・ザ・NEC軽井沢72賞”を受賞した永井花奈だ。「もちろん優勝を目標にして戦っていますが、それとは別の目標があることで、さらに頑張ろうという気持ちになりますからね」といい切る。また、15、16年と2年続けて1打足りずにこのタイトルを逃した永峰咲希は、いまだにそのことに対して残念そうな表情を浮かべていた。考えてみれば、トーナメントに出場するレベルの選手は、プロになる前からトップジュニア、トップアマとして活躍していたケースが少なくない。いろんなところで表彰され、タイトルに輝いてきたはずだ。我々が考える以上に、タイトルに対する強い思いやこだわりがあるのだろう。
「“ルーキー・オブ・ザ・NEC軽井沢72賞”があることは知っていました。そうそうたる顔ぶれに自分が仲間入りできることにビックリしています」と、今年の受賞者である松田は喜びを表現していた。確かに、村口史子(1992年)、福嶋晃子(94年)、宮里藍(04年)、ポーラ・クリーマー(05年)、原江里菜(08年)、アン・ソンジュ(11年)、成田美寿々(13年)と、実績を残している選手が名を連ねている。92年から創設されたこの賞だが、どのようなきっかけで生まれたのだろうか。中山啓二大会事務局長は次のように語る。「今大会は新人選手の育成も大会主旨として掲げていますが、当時は個別の大会に新人賞を設けているトーナメントがありませんでした。新人を育成する考え方をどのように大会に反映するかと考えたとき、じゃあ、ルーキー・オブ・ザ・イヤーのタイトルをつくろうということになったんです」。新人や若い選手の励みになればという願いが込められているという。
ツアープロである以上、トーナメントで賞金を稼ぐことが最優先されるべきだが、知名度を上げることも大切だ。このようなタイトルを獲得することが、プロとしての注目を集めるきっかけになる可能性は十分ある。現在、「マンシングウェアレディース東海クラシック」でも特別賞としてルーキー賞が設けられているが、若手選手のモチベーションや知名度を上げる手段になるなら、もっと数が増えてもいいだろう。新人世代を中心とした若手が強くなればなるほど、業界全体の底上げになるのだから。(文・山西英希)
【写真】松田鈴英に原英莉花!大会のフォトギャラリーで振り返り
今年は25人が対象選手となったが、新垣比菜、勝みなみといったツアー優勝経験のある選手や賞金ランキング10位(今大会終了後9位)の小祝さくら、ステップ・アップ・ツアーで今季2勝している原英莉花など、実力者が顔をそろえていた。この中で最上位に入った選手がタイトルを獲得できるわけだが、トーナメントに出場する以上、どの選手も優勝しか目指していない。たとえプロテストに合格したばかりの選手といえども、勝利にこだわる気持ちは同じだ。最初から特別賞を狙いにいく選手は皆無なだけに、果たしてこのタイトルにどのような意味があるのだろうかと思った。しかし、何人かの選手に話を聞くと、その考えが間違いであることが分かった。
「私にはいい意味でものすごいモチベーションになりました」と語るのは、昨年5位タイに入って“ルーキー・オブ・ザ・NEC軽井沢72賞”を受賞した永井花奈だ。「もちろん優勝を目標にして戦っていますが、それとは別の目標があることで、さらに頑張ろうという気持ちになりますからね」といい切る。また、15、16年と2年続けて1打足りずにこのタイトルを逃した永峰咲希は、いまだにそのことに対して残念そうな表情を浮かべていた。考えてみれば、トーナメントに出場するレベルの選手は、プロになる前からトップジュニア、トップアマとして活躍していたケースが少なくない。いろんなところで表彰され、タイトルに輝いてきたはずだ。我々が考える以上に、タイトルに対する強い思いやこだわりがあるのだろう。
「“ルーキー・オブ・ザ・NEC軽井沢72賞”があることは知っていました。そうそうたる顔ぶれに自分が仲間入りできることにビックリしています」と、今年の受賞者である松田は喜びを表現していた。確かに、村口史子(1992年)、福嶋晃子(94年)、宮里藍(04年)、ポーラ・クリーマー(05年)、原江里菜(08年)、アン・ソンジュ(11年)、成田美寿々(13年)と、実績を残している選手が名を連ねている。92年から創設されたこの賞だが、どのようなきっかけで生まれたのだろうか。中山啓二大会事務局長は次のように語る。「今大会は新人選手の育成も大会主旨として掲げていますが、当時は個別の大会に新人賞を設けているトーナメントがありませんでした。新人を育成する考え方をどのように大会に反映するかと考えたとき、じゃあ、ルーキー・オブ・ザ・イヤーのタイトルをつくろうということになったんです」。新人や若い選手の励みになればという願いが込められているという。
ツアープロである以上、トーナメントで賞金を稼ぐことが最優先されるべきだが、知名度を上げることも大切だ。このようなタイトルを獲得することが、プロとしての注目を集めるきっかけになる可能性は十分ある。現在、「マンシングウェアレディース東海クラシック」でも特別賞としてルーキー賞が設けられているが、若手選手のモチベーションや知名度を上げる手段になるなら、もっと数が増えてもいいだろう。新人世代を中心とした若手が強くなればなるほど、業界全体の底上げになるのだから。(文・山西英希)