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「今の若い選手たちにはない」申ジエの技術が光った15番のローフェード【辻にぃ見聞】

グリーンが硬く速くなり、ピンポジションが端に振られた最終日。風も吹く難しいコンディションのなかで、申ジエが勝利を引き寄せたポイントを辻村明志氏が解説する。

所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net

配信日時:2023年3月7日 14時00分

国内女子ツアーの2023年シーズン開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」は、申ジエ(韓国)が巧みな試合運びで2年ぶりとなる通算29勝目(メンバー登録前を含む)を挙げた。勝負を分けたポイントを上田桃子、吉田優利らのコーチを務める辻村明志氏が解説する。

はじめにジエが勝つべくして勝ったデータを紹介しよう。ジエにとってこの開幕戦での勝利は初めてだったが、過去には7度トップ10に入っている得意コースの1つだった。

【申ジエのダイキンオーキッドレディスの成績】
10年 2位タイ
11年 5位タイ
14年 2位タイ
15年 8位タイ
16年 3位タイ
18年 3位タイ
19年 5位タイ
22年 優勝

■どんなコースも苦にしない技術の高さ

女子ツアーでは今大会を含めて、「フジサンケイレディスクラシック」の川奈ホテルゴルフコース 富士コースや、最終戦の「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」が芝目の強いコーライグリーンで開催されており、ジエはフジサンケイで1勝、リコーで2勝を挙げている。コーライグリーンを苦手とする選手も多いが、世界のツアーで63勝を誇り、米女子ツアーの賞金女王に輝いたことがある元世界No.1はまったく苦にしていない。

「世界を股にかけて戦っている選手だから、やっぱり苦手がない。人がてこずるところで上手さを出せるのがジエさんの良さです。今回はグリーンが硬くて11フィートを超えるスピードが出ていた。ジエさんはパワーはないけれど、ヘッドの入れ方とか当て方が抜群に上手いから、ラフに沈んでもカット目に入れたりしてボールを操れる」

沖縄特有の重い風が吹き、グリーンは硬く速く仕上がり、しかも最終日はピン位置が端に切られているホールが多かった。難しいコンディションだったからこそジエが持っている技術と他の選手との差が出たと辻村氏は見ている。そのなかで「ターニングポイントは15番だった」と、ジエの技術が光ったホールを挙げる。

ジエは15番のティショットを左のガジュマルの木に当てると、セカンドはその木が邪魔で普通に打つのではグリーンを狙えない状況だった。「あのラフから大きめのユーティリティを持って、低いフェードを打っていける地術は今の若い選手たちにはない。鬼のように外に上げて、鬼のように外からバチンと当てて、ラフからローカットを打つのはなかなか難しい。結果的に乗らなかったけど、そこに技術の高さが垣間見えた」と話す。

ピンに向かって低くコントロールされたボールは、花道からグリーンを駆け上がっていったが奥にこぼれた。3打目の下りの難しいアプローチは距離感を合わせて4メートルに寄せ、パーパットをしぶとく入れてミラクルセーブ。「あそこでジエさんがボギーにしていたら流れは上田さんになっていたかもしれない。本当にあればビッグセーブだった」と振り返る。ジエは2位の上田桃子に1打リードを保ったまま最終ホールに突入した。

■18番は相手のプレーを見てクラブを持ち替えた

ジエは優勝会見で「自分のスコアよりもボードだけを見てプレーしました」と語っている。1つ前の組を回っていた上田が18番パー5でバーディを取れなかったのを見て、セカンドのクラブを3番ウッドから5番ウッドに持ち替えている。

「奥より手前がいいと思って安全にいきました」とジエ。2打目はグリーンをショートしたものの、22ヤードの3打目のアプローチを、ピンの手前3.5メートルにつけてバーディ締め。絶対にボギーを叩かないマネジメントを見せた。ちなみに、上田の最終ホールはボギーだったが、ジエはパーだと思いこんでいた。実際はジエが最後ボギーでも優勝という状況だった。

「あの場面でジエさんは結果的にバーディだったけど、3打目も無理していない。ちょっと手前であわよくばバーディというチップショットを打った。上田さんのプレーを見て最後をジャッジするのも冷静でしたね。若手なら普通はそんなに落ち着いてできない」。相手の状況を見ながら最善のマネジメントを選択できることもジエの持ち味だろう。

■ベテラン勢が最終日に躍動したのはなぜ?

そして、今大会ではジエや上田のほか、藤田さいき(4位)や稲見萌寧(2位タイ)、鈴木愛(6位タイ)といった複数回の優勝経験がある選手たちが上位に来た。これはなぜなのか。「上田さんも稲見さんもいくところはいくけど、いかないところは徹底していかないというメリハリがあった」と辻村氏はいう。

「最終日はピンポジションが手前や奥にけっこう振ってあって、風も吹いていた。バーディやビッグスコアしか見ていないイケイケゴルフだったら、つまずいていたでしょうね。風とグリーンの硬さとピンポジションに対して、きょうは調子に乗ってはいけないというのを読めたか読めていないか。フォローの手前ピンのときにリスクを考えずに、最高のショットだけをイメージして回っていた人は、間違いなくボギーがついて回ります」

攻撃的なゴルフ一辺倒では泥沼にはまる。そんな最終日のベストスコアは藤田の5アンダー。他の上位選手は2アンダー前後という難しいコンディションだった。

■申ジエと上田桃子の勝負を分けたパー5
 
そのなかで、優勝したジエと2位の上田の差は「パー5」だと辻村氏は見ている。「会場の琉球GCはグリーンの仕上がりが良くて、硬く締まっていたうえに11フィートを超えるスピードが出ていました。パー3やパー4で伸ばすのは難しいから、パー5でしっかり獲っていきたい。ジエさんはパー5でトータル10アンダーのうち8つ伸ばしている。それに対して上田さんは2つ。そこが勝負を分けたのは間違いなくあります」。

4つあるパー5で、ジエは4日間で1イーグル・7バーディ・1ボギーの8アンダー、上田は1イーグル・2バーディ・2ボギーの2アンダーだった。しかも上田は決勝ラウンド2日間、パー5でバーディを1つも獲れずに終わっている。しぶとく粘りながらもパー5で着実にスコアを伸ばしていったジエに、今回は軍配が上がった。それでも上田は琉球GCの難しいパー3で、2バーディ・1ボギーの1アンダーとショットがいいため、2戦目以降も優勝争いに絡んでいくだろう。

最後に今季の展望については、「開幕戦だけでシーズンを占うことはまったくないです。オフシーズンの取り組みが合っていたと思うのか。どこに課題があったと感じるのかだけ」と辻村氏は語る。そして、「これから春先は距離が短めで風は強めで、ショートゲームがしっかりしている選手、経験値が高い選手が上に来る。夏になってグリーンがやわらかくなるとイケイケドンドンが出てくると思っています」と予想する。注目の第2戦は9日に初日を迎える。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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