コースで起こっていることを“遮断”し、グリーン上で45分間ほど、黙々とパターを振り続けた。練習グリーンの周りも、多くのギャラリーが囲んだが、自分の世界に入り込み、真剣な顔で球を転がし続ける姿は印象的だった。
最終組が18番に入ったのが午後1時30分。16番でボギーを喫したジエは、すでに2打のビハインドがあり、セカンドショットが外れた時点で優勝争いから脱落した。あとは、1打差のテレサを残すのみとなった。そのテレサは、セカンドをグリーン左に待ち構える池とピンとの間に落としカップから4mほどの位置につけた。渋野が、歓声を聞いて『寄ったのかな?』と思ったのはこのシーンだった。ピッタリついたというほどでもないが、テレサならあっさり決めそうな予感もするバーディパットだった。
外せば渋野の優勝。決めればプレーオフ。1度、風でボールが動いて仕切りなおしがあったが、再びテレサがアドレスに入ると、グリーンを囲む大観衆も固唾を飲んで見守った。会場の雰囲気がピンと張り詰めるなか打ったボールは、カップの左をすり抜けていった。この瞬間、渋野の大逆転勝利が決まった。真剣だった表情が一瞬でほころび、キャディとハイタッチを交わして喜びを分かち合った。時計の針は、この時午後1時45分を指していた。
「いや〜、終わった。ほんとに良かったなって、ホッとしました」。こうしてホールアウトから1時間30分後、再び18番グリーンに戻って、渋野は高々と今年“4つ目”のトロフィーを掲げた。緊張と興奮が入り混じった時間が終わった。
今考えても、不思議なことばかりだった。はかったかのように、渋野のラウンド後に風が強まってきたこともそうだし、左足首を負傷していたとはいえ、あのジエがバーディなしでラウンドを終えるのも珍しい話。他にも三ヶ島かなや、濱田茉優らが優勝を追うなか、結果的に誰ひとりとして、渋野に並ぶことすらなかったこともそのひとつ。そして何よりも、このドラマを生み出したのが、渋野日向子だったということも、そうだ。あの1時間30分の“攻防”は、とても胸躍る濃密な時間だった。(文・間宮輝憲)
最終組が18番に入ったのが午後1時30分。16番でボギーを喫したジエは、すでに2打のビハインドがあり、セカンドショットが外れた時点で優勝争いから脱落した。あとは、1打差のテレサを残すのみとなった。そのテレサは、セカンドをグリーン左に待ち構える池とピンとの間に落としカップから4mほどの位置につけた。渋野が、歓声を聞いて『寄ったのかな?』と思ったのはこのシーンだった。ピッタリついたというほどでもないが、テレサならあっさり決めそうな予感もするバーディパットだった。
外せば渋野の優勝。決めればプレーオフ。1度、風でボールが動いて仕切りなおしがあったが、再びテレサがアドレスに入ると、グリーンを囲む大観衆も固唾を飲んで見守った。会場の雰囲気がピンと張り詰めるなか打ったボールは、カップの左をすり抜けていった。この瞬間、渋野の大逆転勝利が決まった。真剣だった表情が一瞬でほころび、キャディとハイタッチを交わして喜びを分かち合った。時計の針は、この時午後1時45分を指していた。
「いや〜、終わった。ほんとに良かったなって、ホッとしました」。こうしてホールアウトから1時間30分後、再び18番グリーンに戻って、渋野は高々と今年“4つ目”のトロフィーを掲げた。緊張と興奮が入り混じった時間が終わった。
今考えても、不思議なことばかりだった。はかったかのように、渋野のラウンド後に風が強まってきたこともそうだし、左足首を負傷していたとはいえ、あのジエがバーディなしでラウンドを終えるのも珍しい話。他にも三ヶ島かなや、濱田茉優らが優勝を追うなか、結果的に誰ひとりとして、渋野に並ぶことすらなかったこともそのひとつ。そして何よりも、このドラマを生み出したのが、渋野日向子だったということも、そうだ。あの1時間30分の“攻防”は、とても胸躍る濃密な時間だった。(文・間宮輝憲)