<ヨネックスレディス 最終日◇2日◇ヨネックスカントリークラブ(新潟県)◇6339ヤード・パー72>
25歳の新垣比菜が2018年以来となるツアー2勝目を飾った「ヨネックスレディス」。大雨のなか行われたこの試合で最も印象的だったのは、最終18番でウイニングパットを決めた瞬間だ。新垣のキャディを務めた兄・我如古夢蔵(がねこ・むさし)さんが、ピンを握ったまま肩を震わせて“男泣き”。2人がハグをした瞬間、新垣の頬にも涙が流れた。
「兄が泣いているのを見て、私も涙が出てきました。辛くて泣くこととかはありましたが、うれし泣きは初めてです」
夢蔵さんは、1990年4月21日生まれの34歳。高校から大学までラグビーに打ち込んだスポーツマンだ。大学時代はラグビーの強豪校、流通経済大学でチームの最後尾に位置する最後の砦・フルバック(FB)としてプレー。大学卒業後は沖縄に戻り、会社員を経験した。
転機となったのは、新垣がシード喪失していた2021年9月。ゴルフ素人だった夢蔵さんに新垣が頼み込み、プロキャディのキャリアをスタートさせた。「キャディを始めたときから、きょうだいで優勝をするということが“夢”だった。それが今回かないました」とこの勝利を噛みしめる。
「ラグビーをやっていたので熱いんですよ」と夢蔵さんの性格は“超ポジティブ”。一方、新垣は自他ともに認めるネガティブ思考だ。「マイナス思考にならないように声掛けはしてきました。一人で戦ってるんじゃないよ、って。常に遠回しに言ってました」。
新垣も家族であり、相棒でもある夢蔵さんに感謝の言葉を口にする。「私一人だけだと、落ち込む時間が多かったりとかあるかもしれないですけど、試合中とかツアーを一緒に回っているので、気持ちを上げてくれる存在です」。優勝から遠ざかり、長く苦しい時間もきょうだいで支え合った。“二人三脚”でつかんだツアー2勝目は格別の味だった。(文・神吉孝昌)