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    「沖縄に帰りたかった…」もがき苦しんだ黄金世代・新垣比菜が“涙”の6年ぶりV【記者が見たベストバウト2024】

    現地記者の心に残った2024年“ベストバウト”を紹介する。

    所属 ALBA Net編集部
    神吉孝昌 / Takamasa Kanki

    配信日時:2024年12月25日 07時00分

    • JLPGA
    • 新垣比菜
    兄・夢蔵さんと6年ぶりの優勝をつんだ新垣比菜
    兄・夢蔵さんと6年ぶりの優勝をつんだ新垣比菜 (撮影:佐々木啓)
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    2024年もギャラリーを魅了する熱戦の数々が繰り広げられたゴルフ界。そのなかで記者が現地で心を揺さぶられた一戦を「ベストバウト」として紹介する。今回は6月の国内女子ツアー「ヨネックスレディス」。

    【写真】新垣比菜が純白ドレスに着替えたら…



    大雨が降る新潟で、涙の抱擁を交わす二人の姿を忘れることができない。

    ヨネックスレディスの2週間後には、QTなどで決まった開幕時の出場優先順位をシーズン途中に入れ替える『第1回リランキング』が控えていた。この大会は海外メジャー「全米女子オープン」と同週に開催されたため、上位勢が不在。ランキング下位の選手にとって、一発逆転を狙える絶好のチャンスだった。

    そんな中で輝きを放ったのは、当時25歳、暫定リランキング66位の新垣比菜選手だった。2日目に自己ベスト『63』をマークして首位に浮上すると、最終日に4バーディ・2ボギーの「70」をマーク。2018年の「サイバーエージェントレディス」以来6年ぶりとなるツアー2勝目をつかみ取った。「すごくうれしいというか、ホッとしています」と、優勝会見では本音がこぼれた。

    新垣選手は渋野日向子選手や畑岡奈紗選手らと同じ1998年度生まれの黄金世代。11年には地元・沖縄で行われた開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」に、史上3番目の年少記録となる12歳74日で出場した経験もあるトップアマだった。2017年にプロテスト合格。ルーキーイヤーの2018年には世代一番乗りでツアー優勝を達成した。

    しかし、そこからショットの調子が悪くなり、20-21年シーズンにシード権を喪失。今年はQTランキング13位の資格でレギュラーツアーに出場していた。優勝から遠ざかっていた6年間は「苦しかったですね。沖縄に帰りたかった。どうやったら調子を戻せるのか、上手くなれるのか。はっきりと分からないままゴルフをしていたので、色々と悩んでいました」。22年の9月頃からは青木翔コーチの門を叩き、スイング改善に取り組んできた。その努力が新潟の地で結実した。

    最も印象的だったのは、最終18番でウイニングパットを決めた瞬間だ。新垣選手のキャディを務めた兄・我如古夢蔵(がねこ・むさし)さんが、ピンを握ったまま肩を震わせて“男泣き”。2人がハグをした瞬間、新垣選手の頬にも涙が流れた。

    「兄が泣いているのを見て、私も涙が出てきました。辛くて泣くことはありましたが、うれし泣きは初めてです」

    夢蔵さんは、1990年4月21日生まれの34歳。高校から大学までラグビーに打ち込んだスポーツマンだ。大学時代はラグビーの強豪校、流通経済大学でチームの最後尾に位置するフルバック(FB)としてプレー。大学卒業後は沖縄に戻り、会社員を経験した。

    転機となったのは2021年9月。ゴルフ素人だった夢蔵さんに新垣選手が頼み込み、プロキャディのキャリアをスタートさせた。「キャディを始めたときから、きょうだいで優勝をするということが“夢”だった。それが今回かないました」と勝利の味をかみしめた。

    「ラグビーをやっていたので熱いんですよ」と夢蔵さんの性格は“超ポジティブ”。一方、新垣選手は自他ともに認めるネガティブ思考だ。「マイナス思考にならないように声掛けはしてきました。一人で戦ってるんじゃないよ、って。常に遠回しに言ってました」。

    新垣選手も家族であり、相棒でもある夢蔵さんに感謝の言葉を口にした。「私一人だけだと、落ち込む時間が多かったりとかあるかもしれないですけど、試合中とかツアーを一緒に回っているので、気持ちを上げてくれる存在です」。優勝から遠ざかり、長く苦しい時間もきょうだいで支え合った。二人の悲願がかなったシーンが、脳裏から離れない。(文・神吉孝昌)

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