『江川の空白の一日』ではないが、この1カ月の間に何があったのか。当時の関係者等から、その真相を聞いた。

「ブリヂストンスポーツは、宮里家の長男の聖志プロと次男の優作プロとは学生時代からモニターとしてサポートをしていました。それが2002年に優作プロは宣言をする前に『他社も試してみたい』といった相談があったそうです」。それに対してブリヂストンスポーツは「もちろん結構です」と回答したという。

結局、優作はアマチュア時代から付き合いがあるブリヂストンと契約をするのだが、このときのやりとりが、藍の契約の時の大どんでん返しにつながるのである。

「藍さんがプロ転向をする前に、当時の担当者が（父親の）優プロに『藍さんにブリヂストンのクラブを試すチャンスをいただけませんか』とお話しをしたら、優作君の一件があったからか、『それはそうですね。わかりました』ということになったと聞いています」。それでブリヂストンにチャンスが巡ってきた。

この巡ってきたチャンスを、当時のブリヂストンスポーツのスタッフはいかにして『大どんでん返し』に結びつけることができたのか。

「通常は現場にクラブを1本持って行き、打ってもらって感想を聞き、持ち帰って修正して、また翌週という感じなのですが、このときは、3〜4本持って行き、要望が出たらすぐに修正して持って行くという態勢で臨んだところ、まず、その対応の迅速さを評価してもらったということです。さらに、既にプロ入りした聖志プロ、優作プロの兄2人とは、アマチュア時代から宮里家とは『信頼関係』が築けていたことなどにより、ブリヂストンに決めていただいたということのようです」