賞金総額2億円、優勝賞金3600万円のビッグトーナメント、「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」を制したのは19歳のルーキー・川崎春花だった。それも1カ月前の「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」で初優勝を挙げたばかりの2勝目。川崎の強いゴルフのヒミツを、上田桃子、松森彩夏、吉田優利らを指導するプロコーチの辻村明志氏に聞いた。
回転に注目!川崎春花のスイング【連続写真】
■淡々とプレーする姿からはスキが見えない
「戦前に予想した優勝スコアは14〜15アンダーで、勝利した川崎さんのスコアが15アンダー。予想どおりでしたが、川崎さんをはじめ選手みんなの技術が上がっているなと感じました」と辻村氏。
というのも昨年大会では予選カットラインが2オーバーだったのが、今大会のカットラインは1アンダー。予選を通過した46位タイまでの54人全員がアンダーパーだった。その中で15アンダーまでスコアを伸ばし、勝利をつかみ取った川崎のゴルフはある意味、圧巻だった。川崎の何がすごいのか? 辻村氏は次のように話す。
「とにかく一喜一憂しない。淡々とプレーをする姿からまったくスキが見えない。表情からは見えないけど、スイングからは強気が見える。最後までインパクトがゆるむことなく、誰もが緊張する優勝争いの中の最終18番ホールでも、ティショットからパッティングまでしっかり振り切れていました。最後までスイングのよどみもないし、迷いもありませんでした」
やわらかい表情でプレーをしているように見える川崎だが、スイングからは強気で攻めるゴルフを感じたという。川崎本人も「マッチプレーが好き。1ホールごとに決着がつくマッチプレーは、いくらでも攻められるから」と言っていたし、パー5でボギーを叩いた後は「チャンスホールを落として腹が立ったし、次のホールで絶対にバーディを獲る」と、怒りをスコアに変えたことをホールアウト後に明かしている。
「ゴルフにブレがないんです。スイングもプレーも、実にシンプル。常に同じ間合いでイヤな雰囲気をつくらないから、自滅することがない。マスターズGCはどちらかといえば難しいコース。そして高額賞金がかかり、誰もが優勝を狙っている大きな大会。そこで勝てるということは、自分のゴルフスタイルを確立している強さが川崎さんにはあったということです」
■曲がらないティショットで流れをつくる
今大会では長く伸びたラフが選手たちを苦しめた。川崎は4日間で56回中50回フェアウェイをキープ。最終日に至ってはフェアウェイを外したのはたったの1回だった。
「曲がらないということは、ティショットで流れをつくることができて、ゲームを作りやすいということ。そして川崎さんは飛距離でも十分に戦える。最終日の計測ホールでは267ヤードを記録しています。18ホールを回っても余裕を感じさせる体幹の強さもある。鋭いボディターンが特長ですが、回転がいいということは、重心位置が安定しているということです」
■ゴルフ脳の高さを感じる
優勝争いの緊張感の中、体の軸がネジれてミスをするということもまったく見られなかった。最終日に川崎が叩いたボギーは二つ。その二つともショットが乱れて叩いたわけではない。3パットのボギーだった。だがそれも攻めた結果、決してパッティングが悪いというわけではない。最終日は30パット叩いているが、3日目は24パット。4日間の平均パット数は27.25だった。
パッティングについて川崎は「初優勝の後にパッティングが悪くなって調子を落としていたんですが、大会前の練習日に遠くに立ってしまう悪いクセがでていることに気づいて、指4本分ボールに近づいて立つようにしたらよくなりました」と、3日目のラウンドを終えた後に話している。
「回転で打つタイプの選手は、鋭い回転であるが故に遠くに立ちやすいんです。そこに気づけたことがスゴい。ベテラン選手だって、気づけないことは多いです。気づきを成績につなげた川崎さんのゴルフ脳の高さを感じます。それはシンプルにプレーができる判断力の高さにも表れています」
今シーズン川崎は、これまで17試合に出場。規定ラウンド数を満たしていないため各スタッツのランキングからは除外されているが、川崎のポテンシャルの高さは「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」で初優勝を遂げたことでうかがえるし、それは今大会で確信に変わった。それは辻村氏も強く感じていた。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
回転に注目!川崎春花のスイング【連続写真】
■淡々とプレーする姿からはスキが見えない
「戦前に予想した優勝スコアは14〜15アンダーで、勝利した川崎さんのスコアが15アンダー。予想どおりでしたが、川崎さんをはじめ選手みんなの技術が上がっているなと感じました」と辻村氏。
というのも昨年大会では予選カットラインが2オーバーだったのが、今大会のカットラインは1アンダー。予選を通過した46位タイまでの54人全員がアンダーパーだった。その中で15アンダーまでスコアを伸ばし、勝利をつかみ取った川崎のゴルフはある意味、圧巻だった。川崎の何がすごいのか? 辻村氏は次のように話す。
「とにかく一喜一憂しない。淡々とプレーをする姿からまったくスキが見えない。表情からは見えないけど、スイングからは強気が見える。最後までインパクトがゆるむことなく、誰もが緊張する優勝争いの中の最終18番ホールでも、ティショットからパッティングまでしっかり振り切れていました。最後までスイングのよどみもないし、迷いもありませんでした」
やわらかい表情でプレーをしているように見える川崎だが、スイングからは強気で攻めるゴルフを感じたという。川崎本人も「マッチプレーが好き。1ホールごとに決着がつくマッチプレーは、いくらでも攻められるから」と言っていたし、パー5でボギーを叩いた後は「チャンスホールを落として腹が立ったし、次のホールで絶対にバーディを獲る」と、怒りをスコアに変えたことをホールアウト後に明かしている。
「ゴルフにブレがないんです。スイングもプレーも、実にシンプル。常に同じ間合いでイヤな雰囲気をつくらないから、自滅することがない。マスターズGCはどちらかといえば難しいコース。そして高額賞金がかかり、誰もが優勝を狙っている大きな大会。そこで勝てるということは、自分のゴルフスタイルを確立している強さが川崎さんにはあったということです」
■曲がらないティショットで流れをつくる
今大会では長く伸びたラフが選手たちを苦しめた。川崎は4日間で56回中50回フェアウェイをキープ。最終日に至ってはフェアウェイを外したのはたったの1回だった。
「曲がらないということは、ティショットで流れをつくることができて、ゲームを作りやすいということ。そして川崎さんは飛距離でも十分に戦える。最終日の計測ホールでは267ヤードを記録しています。18ホールを回っても余裕を感じさせる体幹の強さもある。鋭いボディターンが特長ですが、回転がいいということは、重心位置が安定しているということです」
■ゴルフ脳の高さを感じる
優勝争いの緊張感の中、体の軸がネジれてミスをするということもまったく見られなかった。最終日に川崎が叩いたボギーは二つ。その二つともショットが乱れて叩いたわけではない。3パットのボギーだった。だがそれも攻めた結果、決してパッティングが悪いというわけではない。最終日は30パット叩いているが、3日目は24パット。4日間の平均パット数は27.25だった。
パッティングについて川崎は「初優勝の後にパッティングが悪くなって調子を落としていたんですが、大会前の練習日に遠くに立ってしまう悪いクセがでていることに気づいて、指4本分ボールに近づいて立つようにしたらよくなりました」と、3日目のラウンドを終えた後に話している。
「回転で打つタイプの選手は、鋭い回転であるが故に遠くに立ちやすいんです。そこに気づけたことがスゴい。ベテラン選手だって、気づけないことは多いです。気づきを成績につなげた川崎さんのゴルフ脳の高さを感じます。それはシンプルにプレーができる判断力の高さにも表れています」
今シーズン川崎は、これまで17試合に出場。規定ラウンド数を満たしていないため各スタッツのランキングからは除外されているが、川崎のポテンシャルの高さは「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」で初優勝を遂げたことでうかがえるし、それは今大会で確信に変わった。それは辻村氏も強く感じていた。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、松森彩夏、吉田優利などを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。