<アクサレディス宮崎 最終日◇24日◇UMKカントリークラブ(宮崎県)◇6545ヤード・パー72>
午前10時50分に最終ラウンド中止のアナウンスが流れると、クラブハウス内に拍手が響き渡る。その祝福の中心にいたのは、ツアー初優勝が決まった臼井麗香。涙を流しながら、選手、関係者らの『おめでとう』の声にこたえる。
「30歳までゴルフをやると決めているから…」 泣きながら過ごした“苦難の2年間”を支えた臼井麗香の信念
長く苦しいスランプを乗り越えた臼井麗香が歓喜の初優勝を果たした。
配信日時:2024年3月24日 05時01分
<アクサレディス宮崎 最終日◇24日◇UMKカントリークラブ(宮崎県)◇6545ヤード・パー72>
午前10時50分に最終ラウンド中止のアナウンスが流れると、クラブハウス内に拍手が響き渡る。その祝福の中心にいたのは、ツアー初優勝が決まった臼井麗香。涙を流しながら、選手、関係者らの『おめでとう』の声にこたえる。
「すごくうれしいのが一番。まだ夢みたいです。(涙は)すぐに出ましたね」。2018年のプロテスト合格から7年。さまざまな思いがこみ上げてくる。
プロ生活は、順風満帆な滑り出しといえた。19年からレギュラーツアー27試合に出場し、3度トップ10入り。そのうちの一試合が、最終日最終組を回った「アクサレディス」の6位だった。さらに新型コロナウイルスの影響で2年間が統合された20-21年シーズンは、メジャー大会の「ワールドレディスサロンパスカップ」など2試合で2位になり、このシーズンには初シードを獲得している。
歯車が狂ったのが、22年シーズン前のオフだ。前述した2度の2位が“重荷”になったと今振り返る。「2位止まりなのが悔しかった。1位と2位のカベは高い。そこには10打くらいの差があると思った」。その“差”を埋めるために着手したのがスイング改造だったが、これで自分のゴルフを見失った。
初シード選手として臨んだ22年は「一番苦しかった時期」と振り返る。思い通りの球が打てず、曲がらないようにと思えば思うほど、ボールが左右に散らばる日々。20-21年シーズンに233.74ヤードだった飛距離も、20ヤードほど落ちた。「練習ラウンド初日の時点で『やめたい』って、毎週毎週泣きながらやっていました。それくらいキツかった」。結局、34試合に出場したこの年はメルセデス・ランキング115位に終わりシードを喪失。昨年も同134位と浮上できないまま、2年間を過ごした。
そんな失敗も踏まえ、大振りだったスイングは小さく強くという意識にシフト。「強烈だった」というダウンブローもレベルスイングにした。さらに今季を迎える前には、技術だけではなくトレーニングも重視し、弱かった上半身を徹底的に鍛えぬきバランスを整えた。「もともと逆玉は出ないタイプなのに、右に出るミスが多くて。その恐怖をなくすのが難しかった」。こういった困難と課題を乗り越えつかんだ、初優勝だった。
苦しい時でもゴルフを諦めなかった理由について聞かれると、「30歳までゴルフをやると決めている。そこまでは100%の努力をしたい」と答える。「なんか諦めることができなかったんです」。不調のまっただなかでも、打撃練習場に5時間いて打ち込み、そこから練習ラウンドに向かうというコース生活を過ごしてきた。
はじめて受験したプロテストに失敗した17年には、今後のゴルフ人生で成し遂げるべきものを書き出した『目標シート』を作成したが、それも大きな支えになった。そこには21年でツアー初優勝、同じ年に米国ツアーの予選会を受けるなどの青写真を書き出していった。「21年の8月までに賞金4000万円を稼いだらアメリカのQTを受けるって決めたけど、3200万円くらいと届かなくて受けられなかった。そこから全部狂いましたね」。
米国行きは「22年から3年間くらいで、日本に戻ってくる設計だった」ため、断念することになりそうだと明かすが、例えば27歳で戴冠すると決めた女王は、ここから目指していく目標のひとつ。現役生活のリミットと決めている30歳まではあと5年。そこまではしっかりと努力を続けていく。
イメージしていたのは、18番グリーンで大きな歓声と拍手に包まれる初優勝劇だった。「私の中では。宝塚のイメージが強くて、舞台に登壇するようにグリーンに上っていくことを想像していた。2勝目はそうなりたいですね」。想像していたものとは違えど、“初優勝”の価値は変わらない。
自分で「スポーツマンらしくない」という見た目も「形から入って、ゴルフに携わる女性が増えたらなという思いもありますし、黄金世代で小さい頃からすごい選手がいて、自分の個性を出すことにつながる」とこだわっている部分。「(短縮競技で)2日間だから、まぐれだろうと思われないように。次の試合から2勝目を1勝目だと思ってやっていきたいです」。世代14人目の優勝者からは、逆境を信念で乗り越える芯の強さを感じた。(文・間宮輝憲)
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