<ソニー 日本女子プロ選手権 最終日◇8日◇かねひで喜瀬カントリークラブ(沖縄県)◇6670ヤード・パー72>
「まだ実感は湧かないんですけど、4日間すごく長かった。ホッとしています」
会見場に現れた竹田麗央は、初めて手にしたメジャー大会のトロフィーを前に、いつも通りの柔和な表情。しかし、ほんのちょっと前まで激闘のなかに身を置いていた。
初日からの首位を守り、2位以下に3打差をつけ最終日のラウンドはスタートした。「きのうは硬くなって思い通りのスイングができなかった。それだけは避けたいと思って、なるべく力を抜きました」。4番で6メートルのフックラインを決めバーディが先行。ここは「すごく楽になりました」と振り返る場面だ。
その後も効果的にバーディを奪ったが、前の組でプレーしていた“女王”山下美夢有がジリジリと詰め寄ってくる。「途中途中でボードを見て美夢有さんが伸ばしていることは分かりました。でも、それは想定内。20アンダーにすることだけ考えていました」。一足先にプレーを終えた山下は、1打差でフィニッシュ。最終18番パー5でボギーを叩くとプレーオフ…という状況になったが、最後はピタッと寄せたパーパットを沈め、逃げ切りで完全優勝を果たした。
初優勝した4月の「KKT杯バンテリンレディス」から、わずか5カ月での6勝目。ツアーで初優勝を挙げたシーズンに6勝するのは、現在の日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)会長の小林浩美が1989年に達成して以来、ツアー史上2人目の快挙だ。「小林会長に並べたのは光栄。毎週試合があるので振り返ることもなく、次へ次へとやれているのがいいのかな」。失敗を引きずらず、大きな成果を手にし続けた結果が今だ。
この優勝で得たものは多い。まずポイントレースでの首位固めにつながる400ptを追加。これで累計を2574.51ptまで伸ばした。ランク2位につけていた山下も単独2位で大会を終えたため、240ptを上積み。2107.9ptで食らいつくが、その差は466.61ptに広がった。「目指せる位置にいると思う。毎週ベストを尽くして、その結果女王になれたら」。もちろん、そこも意識する季節に差しかかっている。
またこの1勝で“メジャー特典”ともいえる3年間のシード権も獲得。将来的に希望する米国ツアー進出に向けても、「獲れたことで挑戦しやすくなった。特に来年とかは考えてないけど、いつかは挑戦したい」と背中を押す権利になる。トータルスコアの19アンダーは2019年大会の稲見萌寧に並ぶ72ホールの最少ストローク(パー72)。優勝賞金3600万円も手にし、賞金ランクでも1位に躍り出た。
さらに、こんな豪華な戦利品もゲット。今年から大会の冠スポンサーがソニーになり、副賞として同社製品のセットが優勝者には贈られる。その中身は4K大型液晶テレビ『BRAVIA9』や、音響器具の『BRAVIA Theatre Bar 9』など8点のA賞と、デジタル一眼カメラ『α9 III』や広角ズームレンズ、その他周辺機器14点のB賞があり、好きなものを選ぶことができる。「まだ決めてないです」と悩んでいる様子だったが、この秋に熊本県内に新居が建つこともあり、そこで最高の環境のなか映画などを楽しめるA賞をチョイスすることになりそうだ。
次の目標を聞かれると、「来週ドラコン大会があるのでそれを頑張りたい」と言って笑いを誘う。これは「住友生命Vitalityレディス 東海クラシック」の大会期間中に行われる恒例イベントのことで、「去年優勝できたので連覇目指して頑張りたい」と、これを当面は目指していく。
「最後(18番)は絶対にバーディを取りたかったので、そこがマイナス1点です」という理由で「99点」の自己評価を与えた最終日だったが、成果は“満点”と言っていいだろう。“竹田時代”が到来していることを、さらに印象づけるメジャー制覇だった。(文・間宮輝憲)