<明治安田生命レディス ヨコハマタイヤ 最終日◇12日◇土佐CC(高知県)◇6228ヤード・パー72>
待ちわびていた初優勝の瞬間。喜びと同時に湧き上がってきたのは、ドライバーが曲がり、飛距離が一時190ヤードほどまで落ちた苦しみの日々の記憶だった。プロ7年目でようやくつかんだ1勝に、吉本ひかるは「長かったです」とポツリ。仲間、そして家族のもとに駆け寄った時には、目が真っ赤。「泣き虫」の吉本が、ようやく流した歓喜の涙だった。
飛距離190ヤード、曲がるショット…大不振乗り越えつかんだ初優勝 “泣き虫”吉本ひかるがようやく流した歓喜の涙
黄金世代の吉本ひかるが念願のツアー初優勝を果たした。
配信日時:2023年3月12日 08時40分
<明治安田生命レディス ヨコハマタイヤ 最終日◇12日◇土佐CC(高知県)◇6228ヤード・パー72>
待ちわびていた初優勝の瞬間。喜びと同時に湧き上がってきたのは、ドライバーが曲がり、飛距離が一時190ヤードほどまで落ちた苦しみの日々の記憶だった。プロ7年目でようやくつかんだ1勝に、吉本ひかるは「長かったです」とポツリ。仲間、そして家族のもとに駆け寄った時には、目が真っ赤。「泣き虫」の吉本が、ようやく流した歓喜の涙だった。
2打リードの単独首位で迎えた最終日。逃げ切りを図ったが、ショットはピンに絡まず、チャンスでもわずかにパットが外れる。「朝起きてからは緊張してるな。いつもは1番でティショットを打ったらいい緊張感になるのに…」。昨年8月の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」以来となる自身7度目の最終日最終組。だが、やはり思うように体は動いてくれない。
いいテンポでバーディを積み上げ追いかけてくるささきしょうこに対し、吉本はパーを並べ続ける。そして9番のセカンドショットがシャンクし、ボギーが先にやってきた。「左足下がり、つま先上がりで、シャンクするライ。『出ちゃった』みたいな感じでした。緊張というより、苦手なんです」。ただボールが木に当たったことで“大ケガ”につながらなかったのは不幸中の幸いといえた。それでも後半は、ささきに最大3打のリードを許す時間も。「いろんなことが頭を巡りました。逆転されて負けるのかな、とか」。それでも諦めることなく16番のバーディで再逆転する意地も見せた。最終的には同スコアのトータル19アンダーでホールアウト。勝負の行方はプレーオフまでもつれこんだ。
「もうこのままゴルフを楽しくやれないのかな、とか、いろいろなことを考えた時期もありました」。初シードを獲得した2019年。この頃には本人も優勝を意識していたが、新型コロナウイルスの影響で2年間が統一された翌シーズンに大不振に陥った。それを自覚したのは、21年の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」だったという。「雨が降っていたんですけど、1番ティで思い切り右にプッシュしたんです」。予選落ちが続くようになり、シードを喪失。同年末のQTは38位になったものの、それも長いパットを沈めてようやくパーを拾うなど苦しんでつかみとったものだった。「一番つらかった時期ですね」。ガマンしてチャンスを待つ吉本のプレースタイルの根幹が崩れていた。
そこから中島敏雅コーチ、そして松山英樹のトレーナーも務める飯田光輝氏を迎え入れて再起の道を歩くことに。これまで以上にトレーニングに励み、感覚だよりだったスイングのことをしっかりと考えるようにもなった。「調子が悪くなってから、いろんな経験をしました。これまでなら(シャンクが出た)9番で落ちていたと思う。でもその経験があって、諦めずに最後までやりきれました」。時間はかかったが、徐々にプレーにも変化が現れ、飛距離も戻ってきた。
この日、プレーオフの2ホール目でピン左奥9メートルからのバーディトライが、結果的にウイニングパットになったが、これも「手ではなく背中でしっかり打とう」という中島コーチの教えを意識したことで生まれたビッグプレーだった。プレッシャーのなかでも笑顔でプレーを続けたのは飯田トレーナーから、『苦しい時こそ笑ってください』というメッセージを受け取ったから。「不思議な光景。優勝ってこんな感じなんだな。まさかプレーオフで勝つとは思ってなかったです」。苦しんだ日々がようやく報われた瞬間だった。
「(19年は)優勝を目指してやっていたけど、自分の考えが甘かったなって思います。今の方がスイングも分析してやるようになったり、ゴルフのことをしっかり考えています」。19年の「フジサンケイレディス」で優勝争いに敗れた時や、不振が続いた時など何度も悔し涙を流した。しかし一見遠回りしたように思える日々が、この日のうれしい涙につながった。
「プレーオフは緊張して(ティショットが)曲がっていた。1勝したけど、もっと優勝できるように頑張ります」。これが黄金世代12人目の優勝。今まで同級生の喜ぶ姿を何度も見届けてきた24歳が、ようやく主役になる日が訪れた。(文・間宮輝憲)
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