スイングの軌道に加えて、新垣の成長は上体のリキミのなさにも見られるという。「調子が悪くてドライバーショットが曲がっているときもありましたが、今回は特に上体のリキミが抜けているように見えました。上体に力が入ると、下半身、おなかに力が入らず、腕だけで振ろうとしてしまう。そうなると球が散る原因になります。16番のティショットで右にプッシュアウトしたときは悪いクセが出たように見えましたが、そこから修正していたのも成長した証拠です」と、ルーキーながら安定したパフォーマンスを見せた新垣を賞賛した。

優勝直後の新垣にも話を聞いてみたが、「腕の力だけで振る悪いクセを修正できています」と辻村氏のいうポイントを自らも指摘。また、「距離のコントロールがうまくなっているように見えました」と辻村氏がいえば、新垣本人も「ハーフショットなどで、距離も決めて打つ練習を多くしています」と、バーディチャンスにつけるための必須条件、距離を合わせる縦の距離感が向上しているという。自ら考えて練習してきたことが見事にはまった今回の優勝。黄金世代を引っ張っていく存在になりそうだ。

■同期で同郷、永峰咲希の優勝が刺激になった柏原明日架の優勝も近い

2位に入ったのは、最終日にノーボギーで回った柏原明日架。これまでも上位に度々顔を出していたが、最終日はスコアを伸ばせない展開に苦しめられていた。それが今回は1アンダーとはいえ、優勝戦線にとどまったのは大きな成長。「間違いなく同期で同郷の永峰咲希さんの初優勝が刺激になっていると思います」と、今後の活躍に期待が持てるという。「永峰さんが優勝したからといって、その1週間で、何か技術的なことを変えられるわけではありません。柏原さんはもともと実力がありますし、若手の中では1番のアスリートタイプ。この力は持っているので、それをどう出すかが優勝へのポイントです」。

意外なことに、柏原は前週まで21ラウンドで60台が一度もなかった。それが初日、2日目に「69」、「68」と立て続けに60台を連発。「技術だけでなく、気持ちの面も大きいと思います。宮里藍選手と横峯さくら選手、上田桃子選手と諸見里しのぶ選手、今回優勝した新垣さんと勝みなみさん。いつの時代にもライバル関係はあって、そういう面でも柏原さんのお尻に火がついたのではないでしょうか」。

解説・辻村明志（つじむら・はるゆき）/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。