<大東建託・いい部屋ネットレディス 最終日◇23日◇ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(福岡県)◇6540 ヤード・パー72>
河本結がトータル13アンダーの8位タイフィニッシュに、顔をほころばせた。予選2日間はトータル8アンダー・8位タイ。そして最終ラウンドでは6バーディ・1ボギーの「67」をマークし、今季初のトップ10入りを決めた。
3日目は悪天候でサスペンデッドとなり、競技は54ホールに短縮された。最終ラウンドは23日の午前8時から一斉に再開。河本は3番グリーンでのパットから始まった。
「いきなりボギースタートでしたが、気持ちが乗れていました。今までと違う自分、新しい自分を信じる。そう思うことで、やっと自分のゴルフができていたんです。根拠なんかなくてもいいから、自信がほしかった」
確かに予選から好調なゴルフを見せていたが、そう思った理由はほかにあった。コーチとの契約を解消し、この週から何もかも一人で考えてやっているのだという。試合前には過去の成績が良かった頃の自分のスイングと、今の自分のスイングの動画を徹底して見比べて、違いを探ったという。コーチに頼らず、自分でスイングをこれほど分析するのは初めてのことだった。
「過去の自分を見返したら、ギャグかと思えるくらい真逆をやっていたんです。いまは手元を胸の前にキープして振るのが主流じゃないですか。私もそういう指導を受けていました。でも過去の私は、右サイドで手元はちょうど右ワキ腹のあたりなんです。いまの私はフェースを閉じて上げていましたが、過去の私は開いて上げていました」
真逆だったかつての自分に驚かされた河本は、すぐさまスイングを過去のものに戻すことにした。
「最初はフェースを開いて上げるのが怖いくらい。それでも、自分の考えでやるゴルフはこんなに気持ちいいんだと思えたんです。ミスをしても悔しいと思えるようになりました。それまでは『なんで?』という思いばかりだったんです」
ゴルフは個人スポーツだ。プレーのすべては自己責任。コーチがつき、専属のキャディがついたりすると、この基本事項がいつの間にか忘れられて、「ミスをして悔しい」という感情すら湧かず、そうなった理由を探してしまうようになるのだ。
今季、河本はこれまで19試合に出場し、予選落ちが13試合で棄権が2試合。決勝にコマを進めたのは今大会を含めてたったの4試合だ。2019年には賞金ランキング6位になったほどの選手だけに、想像を超えるほど悩み苦しんできたに違いない。その暗く長いトンネルを抜けるきっかけを自身の力でつかんだのだから、喜びもひとしおだ。
「とにかく、ここまで(のいい状態で)また戦えたことが本当にうれしいです。もう無理だと思って『次はレッスンでも始めなくちゃいけないかな』とも思っていたんです。こんなに練習をしているのに、何が悪いのか分からず、もうどうやってクラブを振ればいいのか分からない状態だったんです」
でも今は「こんなに気持ちよくゴルフをしていいんだ」と思えるようになった。そして今大会で結果も出した。これからは信じた道を突き進んでゆくだけだ。そう、常に己の決断を信じて。強い河本結は、すぐに戻ってくるだろう。(文・河合昌浩)