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    世界のオカモトに逆転勝ちした公式戦2勝目 原田香里にとって岡本綾子との濃厚な時間はゴルフ人生に貴重な出来事となった【名勝負ものがたり】

    歳月が流れても、語り継がれる戦いがある。役者や舞台、筋書きはもちろんのこと、芝や空の色、風の音に至るまでの鮮やかな記憶。かたずを飲んで見守る人の息づかいや、その後の喝采まで含めた名勝負の舞台裏が、関わった人の証言で、よみがえる。

    配信日時:2022年9月20日 23時00分

    • JLPGA
    1993年「JLPGA明治乳業カップ」で逆転優勝した原田香里
    1993年「JLPGA明治乳業カップ」で逆転優勝した原田香里 (撮影:ALBA)
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    ツアー通算7勝の原田香里が岡本綾子とのラウンドを強烈に記憶しているのは、1993年「JLPGA明治乳業カップ」年度最優秀女子プロ決定戦だという。前年まで千葉のオークヒルズCCで行われていた最終戦が、宮崎の青島GCに舞台を移した最初の年の試合だ。

    その年のツアー優勝者など出場選手は限られており、集結したのは40人。現在、宮崎CCで行われているJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップの前身ともいえる大会は、3日間54ホールだが、シーズン最後の公式戦だった。

    ■優勝以上に岡本さんと回った印象が強く残っている■

    原田は前年に初優勝を遂げ、この年9月の日本女子プロゴルフ選手権で初めての公式戦を制覇。勢いに乗る26歳の新鋭として乗り込んでいた。初日の首位は岡本綾子。8バーディー・3ボギーの5アンダー“67”でプレーして単独首位に立った。一方の原田は、5バーディー・2ボギーで岡本に2打差2位発進だった。

    原田には、優勝以上に強い記憶がある。「岡本さんと一緒に回ったという印象が強く残っています」と話す。

    80年代に米ツアーを中心にプレーし、87年に米国人以外で初めて米ツアーで賞金女王となった岡本が、日本でプレーする機会は多くなかった。岡本より15歳年下で、山口県出身の原田は、高校時代に広島CC八本松Cで行われた日米両ツアー共催の「松田ジャパンクラシック」(1994年)を両親と観戦している。このとき、初めて岡本をナマで見た。「大ファンだった母が『岡本さ〜ん』と声をかけると手を振ってくれたスパ―スターでした」と、原田はいう。

    原田が89年にプロ転向した後も日本でのプレー機会が少ない岡本だった。それだけに2日目以降は優勝争いをしているにもかかわらず、原田の記憶は岡本とのプレーに終始している。

    「ドキドキして緊張しました。飛ばし屋さんの岡本さんは右に大きな池がグリーンまで続くホールで、隣りのホールに打っていくルートを見つけてそこから攻めたんです。私には(池を避けた)左ルートしかないので、ティーショットを打った後は『じゃあ、原田。グリーンでね』って言われましたね」と、振り返って笑う。

    岡本は、アドレスに入ってから集中するプレースタイル。米国でも日本でも、それ以外の時間は同伴競技者やキャディ、場合によってはロープの外にまで声をかけるほど、リラックスしてメリハリをつけながらプレーする。この試合でも、原田はいろいろと話しかけられた。

    「『誰に習ってるの?』って聞かれて『父です』と答えると『ふ〜ん』と言われたりしました」と、雲の上の大先輩とのプレーを緊張しつつも楽しんだと明かす。

    2日目、原田は3バーディー・1ボギーで通算5アンダーまでスコアを伸ばした。一方の岡本は、3バーディー・2ボギーで6アンダー。差は1打に縮まった。

    海からの強風でタフなコンディションとなった最終日。優勝に最も近い位置にいるふたりも、例外ではなく苦しんだ。原田、岡本ともにフロントナインは3オーバー。バックナインは、16番までに1バーディー・2ボギーで1アンダーまでスコアを落とした岡本に対して、原田は10番ボギーの後、ガマンを重ね、16番でバーディーを取って2アンダーにして逆転。大詰めを迎えた。

    17番はともにパー。勝負のかかった18番も岡本はボギーを叩いた。上からのパーパットを残していた原田も、これを外してボギー。それでも優勝が決まった。アテストする前に岡本から、「原田〜。もう『4』って書いちゃったじゃないの」と言われ「すいません」と応えたエピソードもある。

    ■岡本綾子から何かを盗みとりたかった■

    優勝争いの中でも「技術的に何か盗みたい」という気持ちももちろんあった。「リキミのないキレイなスイング、柔らかいヒザの動き。マネしたいけどなかなかできない。アプローチもじっと見ていました」。いつもなら、試合中はずっと、眉間にしわを寄せるほど集中している原田が「確かにあのときは”怖い顔“してないですね。岡本さんとのプレーは楽しかったんですもん」と笑う、夢のような優勝争いだった。

    この年、賞金ランキング6位と躍進した原田は、後に96年、98年と賞金女王争い(ともに結果は2位)をする選手に成長。メジャーのダイナ・ショア(現シェブロン選手権)にスポット参戦した際、練習ラウンドを一緒にプレーした岡本から、レッスンを受けたこともある。93年最終戦、岡本と共有した濃い時間の中での優勝争いは、原田のゴルフ人生に貴重な出来事として刻まれている。(文・清流舎 小川淳子)
    ツアー通算7勝の原田香里が岡本綾子とのラウンドを強烈に記憶しているのは、1993年「JLPGA明治乳業カップ」年度最優秀女子プロ決定戦だという。前年まで千葉のオークヒルズCCで行われていた最終戦が、宮崎の青島GCに舞台を移した最初の年の試合だ。

    その年のツアー優勝者など出場選手は限られており、集結したのは40人。現在、宮崎CCで行われているJLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップの前身ともいえる大会は、3日間54ホールだが、シーズン最後の公式戦だった。

    ■優勝以上に岡本さんと回った印象が強く残っている■

    原田は前年に初優勝を遂げ、この年9月の日本女子プロゴルフ選手権で初めての公式戦を制覇。勢いに乗る26歳の新鋭として乗り込んでいた。初日の首位は岡本綾子。8バーディー・3ボギーの5アンダー“67”でプレーして単独首位に立った。一方の原田は、5バーディー・2ボギーで岡本に2打差2位発進だった。

    原田には、優勝以上に強い記憶がある。「岡本さんと一緒に回ったという印象が強く残っています」と話す。

    80年代に米ツアーを中心にプレーし、87年に米国人以外で初めて米ツアーで賞金女王となった岡本が、日本でプレーする機会は多くなかった。岡本より15歳年下で、山口県出身の原田は、高校時代に広島CC八本松Cで行われた日米両ツアー共催の「松田ジャパンクラシック」(1994年)を両親と観戦している。このとき、初めて岡本をナマで見た。「大ファンだった母が『岡本さ〜ん』と声をかけると手を振ってくれたスパ―スターでした」と、原田はいう。

    原田が89年にプロ転向した後も日本でのプレー機会が少ない岡本だった。それだけに2日目以降は優勝争いをしているにもかかわらず、原田の記憶は岡本とのプレーに終始している。

    「ドキドキして緊張しました。飛ばし屋さんの岡本さんは右に大きな池がグリーンまで続くホールで、隣りのホールに打っていくルートを見つけてそこから攻めたんです。私には(池を避けた)左ルートしかないので、ティーショットを打った後は『じゃあ、原田。グリーンでね』って言われましたね」と、振り返って笑う。

    岡本は、アドレスに入ってから集中するプレースタイル。米国でも日本でも、それ以外の時間は同伴競技者やキャディ、場合によってはロープの外にまで声をかけるほど、リラックスしてメリハリをつけながらプレーする。この試合でも、原田はいろいろと話しかけられた。

    「『誰に習ってるの?』って聞かれて『父です』と答えると『ふ〜ん』と言われたりしました」と、雲の上の大先輩とのプレーを緊張しつつも楽しんだと明かす。

    2日目、原田は3バーディー・1ボギーで通算5アンダーまでスコアを伸ばした。一方の岡本は、3バーディー・2ボギーで6アンダー。差は1打に縮まった。

    海からの強風でタフなコンディションとなった最終日。優勝に最も近い位置にいるふたりも、例外ではなく苦しんだ。原田、岡本ともにフロントナインは3オーバー。バックナインは、16番までに1バーディー・2ボギーで1アンダーまでスコアを落とした岡本に対して、原田は10番ボギーの後、ガマンを重ね、16番でバーディーを取って2アンダーにして逆転。大詰めを迎えた。

    17番はともにパー。勝負のかかった18番も岡本はボギーを叩いた。上からのパーパットを残していた原田も、これを外してボギー。それでも優勝が決まった。アテストする前に岡本から、「原田〜。もう『4』って書いちゃったじゃないの」と言われ「すいません」と応えたエピソードもある。

    ■岡本綾子から何かを盗みとりたかった■

    優勝争いの中でも「技術的に何か盗みたい」という気持ちももちろんあった。「リキミのないキレイなスイング、柔らかいヒザの動き。マネしたいけどなかなかできない。アプローチもじっと見ていました」。いつもなら、試合中はずっと、眉間にしわを寄せるほど集中している原田が「確かにあのときは”怖い顔“してないですね。岡本さんとのプレーは楽しかったんですもん」と笑う、夢のような優勝争いだった。

    この年、賞金ランキング6位と躍進した原田は、後に96年、98年と賞金女王争い(ともに結果は2位)をする選手に成長。メジャーのダイナ・ショア(現シェブロン選手権)にスポット参戦した際、練習ラウンドを一緒にプレーした岡本から、レッスンを受けたこともある。93年最終戦、岡本と共有した濃い時間の中での優勝争いは、原田のゴルフ人生に貴重な出来事として刻まれている。(文・清流舎 小川淳子)
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