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岡本綾子が踏み出した史上初の外国人米女子ツアー賞金女王への大きな一歩 1982年アリゾナ・コパー【名勝負ものがたり】

歳月が流れても、語り継がれる戦いがある。役者や舞台、筋書きはもちろんのこと、芝や空の色、風の音に至るまで鮮やかな記憶。かたずをのんで見守る人々の息づかいや、その後の喝采まで含めた名勝負の数々の舞台裏が、関わった人の証言で、よみがえる。

所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net

配信日時:2023年1月11日 08時00分

1980年代の岡本綾子
1980年代の岡本綾子 (撮影:ALBA)
「世界のアヤコ」が、米女子ツアーに刻んだ最初の大きな足跡。それが、1982年アリゾナ・コパーでの米女子ツアー初優勝だった。

ソフトボールで頭角を現し始めた中学時代から「いつか、アメリカに行きたい」という夢を抱いていた。それが実現したのは、ソフトボールの大和紡福井で国体優勝を果たしたご褒美のハワイ旅行だった。エースで主将という優勝の立役者だった岡本は、アメリカへの思いをより強くした。このとき、初めて訪れたゴルフ場でグリーンが土俵に似ていたことから「相撲を取った」というエピソードも明かしている。

ゴルフと出合ったのは、翌年だった。ソフトボール引退後の72年にクラブを初めて握り、2年後の74年にプロテスト合格。ソフトボールで鍛えた体から繰り出す飛距離が群を抜く大型選手として注目を集めた。

■30歳、日本では初の賞金女王を戴冠し米ツアーに本格参戦

翌75年に日本ツアー初優勝。経験を重ね、81年に米ツアーQTを2度目で突破。同じ年、日本で8勝を挙げて初の賞金女王となっていた。30歳。当時のゴルフツアーでは脂が乗り始めると言われる年齢になっていた。前年も米ツアーでプレーはしていたが、この年から本格参戦。すでに4試合に出場し、フロリダ開催のベントツリークラシックで2位となり、フロリダからアリゾナに移動して臨んだシーズン第5戦だった。

舞台のランドルフ・ノースGCがあるツーソンは、砂漠地帯といっていいエリア。「初めての町で、毎日鼻血が出ていたことを覚えている。砂漠で乾燥しているからかな? なんて思っていた」と、振り返る。

ムニシパル(市営)のランドルフ・パークの一部であるゴルフ場は、ノースとサウスの36ホール。フラットな林間コースで、選手の多くは、コースからサウス・アルバーノン・ウェイを渡った目の前にあるホテルに宿泊していた。

歩いて道路を渡ればコースという最高の条件のホテルは、外廊下タイプ。現地入りした岡本が最初に驚いたのは、朝、部屋のドアを開けると目の前に白い犬が座っていたことだった。「(白い犬に)『おはよう』と言ってコースに行く。それが毎朝」。不思議な状況だが、岡本はごく当たり前にそれを受け入れた。

初日は、2番から3連続バーディという幸先のいいスタートを切ったが、6番、7番、9番のボギーで貯金を吐き出してしまった。それでも、18ホール中15ホールでパーオンする好調なショットを武器に、バックナインも攻め続けて2バーディ。2アンダーで首位タイに立った。

大会前に、初の全米女子オープンの招待状が届いたばかり。岡本の狙いは、シーズン最初のメジャー、ダイナ・ショア(現シェブロン選手権)の出場権が得られる可能性のある3位以内に入ること。「あまり欲を出さずにマイペースで行くつもり」というコメントが、当時報じられている。

2日目は、2バーディ・2ボギーとスコアを伸ばせず、5位タイに後退。7つスコアを伸ばして通算8アンダー単独首位に躍り出たのは、後に親友となるパティ・リゾだった。

3日目。ショットの好調さは相変わらずで、パーオン率は100%。バーディチャンスをいくつも逃し、それでも3バーディ・1ボギー。通算4アンダーで首位のリゾに3打差、2位のエミー・オルコットには1打差3位タイの好位置をキープした。

■勝負が動いたのは上がり2ホールだった

リゾ、オルコットと最終組でプレーした最終日。パー5の3番でバーディを獲ったものの、7番でボギーと足踏みしている岡本に対し、オルコットは9番バーディ。差は2打に広がった。岡本同様、初優勝を狙うリゾが優勝争いから脱落する中、13番、14番バーディの岡本は、伸び悩むオルコットをつかまえた。

一方、2組前でプレーするサリー・リトルが猛烈に追い上げていた。先に通算7アンダーでホールアウト。岡本は16番パー5のバーディで通算7アンダーとしていたが、オルコットもバーディで一歩も譲らない。

勝負が大きく動いたのは上がり2ホールだった。17番、18番ともきっちりパーで収めた岡本に対し、オルコットはボギー、ダブルボギー。実力者の自滅で、勝敗の行方はリトルとのプレーオフに持ち込まれた。

サドンデス1ホール目の10番はともにパー。リトルのバーディパットがカップをかすめてひやりとした。2ホール目の11番でも先に打ったリトルのバーディパットはカップすれすれ。これを見た岡本は勝負に出た。6メートルのバーディパットをしっかりと決めて勝負に決着をつけたのだ。

激戦の末に手にした初優勝。「うれしすぎて今日は眠れません」と、国際電話で日刊スポーツの取材に答えた岡本のコメントが残っている。40年経った今、改めて尋ねると「白い犬は最終日までドアの前にいたのよね」と、勝利を運んできた白い犬の記憶のほうが強かった。

この後、岡本は米ツアー17勝を遂げ、87年には米国人以外で初の賞金女王に輝いた。そして2005年には、世界ゴルフ殿堂入りも果たした。その最初に一歩が、アリゾナ・コパーだった。

もうひとつ、この大会では初優勝だけでなく大きな”宝物”も手にしていた。ともに初優勝を争ったリゾとの友情だ。優勝争いに敗れたリゾは4位タイに終わったが、優勝インタビューで苦労している岡本に手を振って応援してくれるような優しさを持つ選手。これをきっかけに仲よくなった。やがてリゾの家族とも親しくなり、米国生活に深くなじむ契機にもなっている。(取材・文/清流舎 小川淳子)
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