<アース・モンダミンカップ 初日◇22日◇カメリアヒルズカントリークラブ(千葉県)◇6650 ヤード・パー72>
今週の国内女子ツアー第17戦は賞金総額3億円、優勝賞金5400万円のビッグトーナメント。前週に引き続いて千葉県での開催で、カメリアヒルズカントリークラブを舞台に4日間競技で行われる。高額賞金に目の色を変える選手も少なくない今大会の見どころを、青木瀬令奈のコーチ兼キャディを務める大西翔太氏が語る。
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■深いラフから硬いグリーンには止められない
「今季イチ長く伸びた深いラフが大きな障害となって、選手たちを苦しめるでしょう。ティショットを曲げた時点で、バーディチャンスがなくなります。初日は雨予報ですが、メンテナンスがしっかりしているコースだけに、日を追ってグリーンは硬く締まってくると予想されます。そうなるとラフからピンそばに寄せるのはほとんど不可能に近くなってきます」
昨年大会はピンをなぎ倒すのではないかと思われるほどの強風が、ハザードとなって選手たちを苦しめた。今大会は強く長い芝が密集したラフに入れないことが、コース攻略のカギとなる。
「ティショットをフェアウェイにしっかり運べる選手が上位に来るはずです」。昨年は木村彩子、一昨年は菊地絵理香が制した大会。「飛ばなくてもいい。ティショットをドライバー一択ではなく、いろんな番手を持てる選手が、より多くのチャンスを作ることでしょう。飛ぶなら飛ぶで、飛ばさない技術と勇気が求められるということです」。
■本命・山下美夢有の対抗馬はツアー未勝利の2人
大西氏は注目選手として3人の名前を挙げた。まず一人目は、前週の「ニチレイレディス」で3位タイの佐久間朱莉。ツアー未勝利だが、直近の4試合でトップ3が3度と好調をキープしている。「刻むべきところは刻んでくるメリハリのあるゴルフをする選手です。ここ数試合はいつ優勝してもおかしくないスコアを出しています」と、理由を挙げる。
二人目は、最新のリランキングで5位に入った安田祐香。「ショット力を上げてきています。そのうえ、大きな試合で強いメンタルを持ち合わせている。ジュニア時代から世界で戦ってきた経験が、技術はもちろん、いい意味で駆け引きに長けていて勝負強さになっています」。今季は3度のトップ5があり、ツアー初優勝に手が届きそうな試合もあった。
そして、やはり本命に挙げるのが、前週のニチレイレディスで今季4勝目を挙げたばかりの山下美夢有。「絶対女王の貫禄が出てきています。優勝争いを毎試合続けていると心身ともに疲れが出てくるはずですが、それを補う体調管理が出来ているのでしょう。千葉県での2週連続開催となりますが、いったん地元大阪に帰って実家で休んできたと聞きました。試合を戦うための準備を山下さんなりにやっているということ。自分のゴルフができれば、圧倒的な強さを見せてくれるでしょう」と、頭ひとつ抜けた存在となる。
山下は今季ここまで全16試合に出場して予選落ちなし。優勝4回を含むトップ10が10回と、昨年に続いて抜群の強さを発揮している。
今大会で上位争いするには、とにかくラフに入れないこと。入れたら入れたで、絶対に無理をしないこと。「コースレイアウト自体は、そんなに難しくありません。それをトーナメント仕様のセッティングで、難度の高いコースに仕上げている。だからこそ頭を使わなければならない。ある意味、頭脳戦にもなります」。だからこそ技術だけではない、冷静な判断が必要となってくるという。
そして最後に大西氏は、ツアー最高額の賞金についても触れる。「大金がかかっているからこそ、フラットな精神状態の人が勝つ。鼻息を荒くなると、余計なリキミが生じてスイングのリズムを崩すのは必定です。これはプロゴルファーも、アマチュアも同じ。欲をかかず、目の前の一打にいかに集中するかが勝負の分かれ目です」。
解説・大西翔太(おおにし・しょうた)/1992年6月20日生まれ。名門・水城高校ゴルフ部出身。2015年より青木瀬令奈のキャディ兼コーチを務める。16年にはキャディを務める傍らPGAティーチングプロ会員の資格を取得した。ゴルフをメジャースポーツにと日夜情熱を燃やしている。21年には澁澤莉絵留ともコーチ契約を結んだ。プロゴルファーの大西葵は実の妹。YouTube『大西翔太GOLF TV』も好評で、著書『軽く振ってきれいに飛ばす!! 飛距離アップの正解』が発売中。