<ダイキンオーキッドレディス 3日目◇8日◇琉球ゴルフ倶楽部(沖縄県)◇6610ヤード・パー72>
終わってみれば、運命を大きく左右するパーセーブだったかもしれない。パー4の17番。5メートルをねじ込んで大きく息を吐いた。単独首位を守る千金の一打。スコアを3つ伸ばし、トータル5アンダーとして初優勝に王手をかけた菅楓華は、ホールアウト後に息を弾ませた。
「16番でも同じようなことをしていたので、今度は入れる気持ちでいったけど、打った瞬間に弱いと思った。入らないと思ったけど、最後のひと転がりで入ってくれた。助かりました」
16番では3パットのボギー。バーディパットが大きくカップをオーバーし、苦い思いをした直後だった。17番も3.5メートルの下りのバーディパットを打ちすぎ、ボールはグリーンをこぼれる寸前で止まったが、返しのパーパットをしっかりと沈めた。「10代のうちに優勝したい」。5月17日の誕生日までに初Vを目指す19歳の気迫が、ボールをカップにねじ込んだ。
首位に3人が並んでスタートした第3ラウンドでは、得意のショットが冴えた。この日のパーオン率は4位の83.33%。2番でバーディを先行させ、残り75ヤードからピン奥4メートルにつけた4番パー5からは3連続バーディを奪った。6番では、残り138ヤードから8番アイアンでピンそば1メートルにピタリとつけた。
「ショットがすごく安定していた。最終日もドライバーがフェアウェイにいけば、チャンスにつけられると思う。パー5でバーディを取っていきたい」
プロ入り後ツアー23試合目で初めて最終日を首位で迎える。優勝争いは昨年9月の「住友生命Vitalityレディス」以来。そのときは初めて最終日最終組を回ったが、「75」を叩いて8位に終わり、悔し涙を流した。その試合を制したのは、同組で回って4打差を逆転した岩井明愛。力と経験の差をまざまざと見せつけられた。
「まだ3日目だったので、きょうは自分のプレーに集中できた。住友生命の最終日と違い、あまりほかの人のプレーを気にせずに、目の前の球に集中できました。最終日は変わりそうだけど、自分がどれだけ成長したかを見たい気もする。とにかく集中したいです」
最終日は半年前に敗れた岩井明愛の妹・千怜と同組となる。大会連覇が懸かる岩井ツインズの一人を退け、初Vのゴールに飛び込めば、今度こそ歓喜の涙を流すことになる。
初日から首位を守る完全Vでの初勝利となれば、4日間大会では2010年「日本女子オープン」の宮里美香以来。ツアー史上5人目の快挙だ。初めて臨むツアー開幕戦。19歳296日での有言実行10代Vで、新ヒロインの座を射止めてみせる。(文・臼杵孝志)