2025年の国内女子ツアールーキーのスイングをツアープロコーチの石井忍が解説。今回は昨年の「マイナビ ネクストヒロインゴルフツアー」で年間女王に輝き、プロ初戦で13位タイと好スタートを切った青木香奈子のスイングを深掘りしていく。
青木は長年、宮崎県のフェニックスカントリークラブで研修生としてプロを目指してきた。そして昨年、関東へ拠点を移して、マイナビネクストヒロインゴルフツアーなどの試合に出ながら腕を磨き、6度目の挑戦でプロテストに合格した。
QTランキングは134位で、下部のステップ・アップ・ツアーが主戦場になる。そのなか、プロデビュー戦は推薦出場となったレギュラーツアーの「Vポイント×SMBCレディス」で13位タイ。そして今週は「アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI」に出場している。
今シーズンのルーキーのなかでも注目が集まっている青木のスイングを見た石井は「まず、アドレスがとてもきれいです。背骨が反りすぎていなく、S字でも背中が丸まるC字でもない。ニュートラルなとてもいい背中の角度で構えられています」とスイングにおいて重要なアドレスに着目した。
足裏の重心は「真ん中よりもややツマ先寄り」で、ナチュラルな前傾姿勢から、「自然に腕を下ろしている。力が入っていないから肩甲骨が低い位置でパッキングされていて、これは手打ち防止になりますよね」と肩から下ろされた腕に力みがないため、肩甲骨が上がっていない。力みから肩甲骨の位置が高くなると、上半身の回転が使いにくくなり腕でクラブを上げてしまう動きにつながりやすい。
青木は肩甲骨の位置が低いため両ワキが締まって「バックスイングの初動は手ではなく、体で引っ張る」動きでテークバック。手先で上げていないことから再現性の高いバックスイングにつながるのだ。「お手本のようなアドレス。アマチュアの皆さんは打ち方よりもアドレスだけを真似してもいいかもしれないですね」と称賛した。
スイングでは「手首がロックされている。角度を維持して上げて行くことによって、コッキングが少ない」と、トップまでややノーコックで上げている。そこから「左足に踏み込むことで、クラブがヘッド一個分ぐらいループしていく。本当に少しだけ、微妙なループ。再現性の高いクラブの動きをしています」と切り返しで下半身の重心移動が起きたときに、後方から見てクラブヘッドが左下に少し下がり、ダウンスイングに入る。
そこから「両ヒザが正面に向いてきたときに、左腕が地面と平行以上の位置にあるので、捻転差を担保したまま下ろしてきている」と骨盤が水平な位置に戻っても、左肩はアゴの下にあり、捻転差をキープ。それにより、ヘッドスピードが上がり飛距離も出る。
さらに「前傾姿勢が維持されているから手元の位置も低く下ろしてこられる」。安定感のあるインパクトにつながり、「ほとんどネジれのない(曲がりが少ない)」ボールを打つことができるのだ。
インパクトでは「少し右ヒザが前に出ている。それでも右肩は下がっていない」と話す。一般的に右ヒザが前に出て上半身が右に傾くと、あおり打ちになりミスの原因となる。青木がそうならないのはなぜか。「右足で踏む底屈という動きがある。ペダルを踏むように右ツマ先を踏みしめて、上に蹴り上げていることで右倒れを防ぎ、打点が安定します」。
この右足の動きは「ショットメーカーである大きな要素の一つ」。アイアンが得意というショット力の高さを示すスイングとなっている。
■石井忍(いしい・しのぶ)1974年生まれ、千葉県出身。東京学館浦安高等学校、日本大学のゴルフ部で腕を磨き、98年プロテスト合格。2010年にツアープロコーチとして活動を始め、多くの男女ツアープロを指導。また「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアへの指導にも力を入れている。現在は将来プロになることを目指している25歳以下の女子選手が出場するマイナビ ネクストヒロインゴルフツアーの解説も行っている。