<ダイキンオーキッドレディス 事前情報◇5日◇琉球ゴルフ倶楽部(沖縄県)◇6610ヤード・パー72>
新しい年の始まりには一年の目標を紙に書き、自分の部屋に貼っている。文言は2021年6月のプロテスト合格のときから変わらない。いや、正しくは変えたいけど、変えられない。プロ5年目のシーズン。佐久間朱莉は苦笑いしながら、「次こそは…」と自分を鼓舞した。
「今年こそは優勝したい。前半戦のうちに一つは勝ちたい。毎年『初優勝』と同じことを書いている。そろそろ達成したいです。だんだんと字だけが大きくなっているんですよね」
昨季は3度の2位などトップ10入りは14度もあった。メルセデス・ランキング(MR)は未勝利では最上位の8位となり、獲得賞金はシーズン0勝では史上3人目となる1億円を突破した。充実したシーズンに唯一欠けているピースは優勝の2文字。「今季こそは…」と力が入るのも当然だ。
オフは充実した日々を送ることができた。米アリゾナ州で行った3週間の合宿には初めてトレーナーを帯同し、「人より硬かった」という股関節の可動域を広げるエクササイズも導入した。ヘッドスピードはこれまでの自己ベストを1h/s更新する44.7h/sをマーク。体幹も鍛えることで飛距離は伸びた。最大のテーマにはアプローチの強化を掲げ、特に「苦手というか恐怖心があった」という30~40ヤードの距離の精度アップに注力。58度のウェッジで5ヤード刻みを打ち分ける反復練習を繰り返し、データを取って数値化もした。
練習の合間には同じアリゾナで開催された米国男子ツアー「WMフェニックス・オープン」を観戦。松山英樹の絶妙なアプローチにただただ感心し、ロープの外を一緒に歩きながら自身のスイング動画を見てもらった松山のコーチの黒宮幹仁氏には金言も授かった。「ショットのときと比べ、アプローチではおなかに力が入っていないかも」。貴重な助言を参考に、腹筋を鍛えるメニューも取り入れた。その効果もあって、これまでボールと離れて立っていたアドレスは、おなかに力を入れることを意識することで、松山流のボールの近くに立つスタイルに近づいてきた。
今季初戦となった前週の台湾ツアー「フォックスコンTLPGAプレーヤーズ選手権」は10位には入った。2日目に40度の高熱に苦しみながらの奮闘だった。高熱は一日で下がったが、沖縄入りした3日に再び40度の発熱。那覇市内の病院で点滴と血液検査を受け、「腸に菌が入っていた。食あたりですね」と、きのうまで静養を余儀なくされた。
順調だったオフは最後の最後でつまずき、この日も37度と熱は下がりきっていない。「食欲もないので一週間で2キロも体重が落ちた。せっかくトレーニングしてきたのにショックです」と話したが、「台湾ではしんどいなかでも頑張れた」とオフの成果も感じ取っている。「今週は無理かな。リハビリになるかも」と言いながらも、表情は自信あり。スタートダッシュで“サクラサク”を決める気配は十分にある。(文・臼杵孝志)