2025年の国内女子ツアールーキーのスイングをツアープロコーチの石井忍が解説。今回はデビュー戦から2試合を終えてところでドライビングディスタンス1位に立つ19歳、入谷響のスイングを深掘りしていく。
入谷は22年の「中部女子学生ゴルフ選手権」や「愛知県女子アマチュアゴルフ選手権」などで優勝を挙げ、ジュニア時代から活躍。同年に国内男子ツアー通算48勝を誇る中嶋常幸が主宰する『トミーアカデミー』でゴルフを学び、2度目の挑戦で最終プロテスト合格を果たした。
「小学生のときからブンブン振っていてすごいんだよ」と中嶋が太鼓判を押すほどの飛距離を持った入谷。ついたあだ名は『ブンちゃん』だ。国内女子ツアー今季開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」、2戦目の「Vポイント×SMBCレディス」を終えて、ドライビングディスタンスでは1位を記録している。平均飛距離は260.64ヤードで、2位は259.00ヤードのため、唯一の260ヤード台だ。
そんな飛ばし屋の入谷のスイングに「いいですね~。力強い。技術とパワーが融合したスイング」と石井は切り出す。
「バックスイングだけを観ると上半身が横回転をしていく感じなので、前傾が起き上がっているように見えますよね」と左肩が下がってアゴの下に入ってくるような回転ではなく、左ワキ腹を縮める側屈は少ない。アドレス時よりもやや立つようなトップの位置となるのだが、起き上がることでパワーは逃げたりしないのだろうか。
「実はそこに理由があります。この後、思い切り踏み込んでいく。少しトップの位置を高くして、一気に左下にシットダウン」と手元が上がりきる前に下半身が沈んでいく。「めちゃくちゃいい。この切り返し」と石井は絶賛。「地面反力を最大限に使える」“踏み込み”ができており、これが飛距離にもつながっている。
さらに、クラブの下ろし方にも注目したい。「ダウンスイングで左腕が地面と平行の時点で、シャフトがまだ直角を維持している(タメが深い)。だけど、右腕は体から割と遠いところにあるからとてもスイングアークは大きい。体から遠いところで下ろせるのは、技術もあるし、パワーがないとなかなかできない。技術とパワーの融合です」。
通常、タメを維持したままクラブを下ろそうとすると「右ヒジが曲がってきてしまう」。しかし入谷の場合は、右ヒジは体にベッタリとついているわけではなく、少し隙間ができている。それにより、スイングの円弧を大きくして“ブンブン”と振っていける。
「ハンマー投げをするかのような、クラブとカラダの引っ張り合い。拮抗している。遠くで強く振っています」。このパワフルなスイングでVポイント×SMBCの初日には、ドライビングディスタンス計測ホールで297ヤードを記録した。飛ばし屋ルーキーの今シーズンに注目だ。
■石井忍(いしい・しのぶ)1974年生まれ、千葉県出身。東京学館浦安高等学校、日本大学のゴルフ部で腕を磨き、98年プロテスト合格。2010年にツアープロコーチとして活動を始め、多くの男女ツアープロを指導。また「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアへの指導にも力を入れている。