国内女子ツアーは2戦目が終わり、昨年のプロテストに合格したルーキーの97期生の活躍が目立つ。開幕戦では荒木優奈が7位タイ、吉田優利の妹・鈴(りん)は4位タイで予選を通過して15位タイ。2戦目の「Vポイント×SMBCレディス」は、青木香奈子が13位タイに入っている。なかでも異彩を放つのが19歳の入谷響だ。
愛知県出身の入谷は、ジュニア代から中嶋常幸が主宰する「トミーアカデミー」で腕を磨き、昨年、2度目の挑戦でプロテストに合格した。ファイナルQTでは18位に入って前半戦の出場権を獲得。開幕戦を12位タイで終えると、2戦目は2日目の後半9ホールで5バーディ・4ボギーのパーがない“珍記録”で予選通過を決めて最終的には45位タイに入った。
なんといっても魅力は飛距離だ。2戦目の初日はドライビングディスタンス計測ホールで297ヤードを飛ばし、計測外ホールでも300ヤード近いショットを見せた。開幕戦の平均飛距離は253.250ヤードで3位。岩井ツインズや渋野日向子、勝みなみら米国組の”ツワモノ”も出場した2戦目は270.50ヤードを記録して1位。まだ2戦が終わったばかりだが、年間の平均飛距離は260.64ヤードで堂々の1位に立っている。
「私は振らなくなったら終わりです。ひん曲がる」と常に振ることを意識する。「体をしっかり回転しながら振れるような感じを出したい。気を付けていることは、インパクトからフォローにかけて加速させることです」と緩みのない加速感を大切にしている。
入谷を小学生時代から知っている中嶋常幸は、「小学生の頃からドライバーをブンブン振っていて凄かった。驚いたよね。それでブンちゃんって呼んでいる」と、レジェンドは『ブンちゃん』とあだ名をつけるほど、昔から飛んでいた。
飛距離へのこだわりについて聞くと意外な答えが返ってきた。「普通に飛んでいたらいい。ドライビングディスタンスの1位は取れればいいかなぐらいで、狙おうとかはないです。飛ばすのも大事かもしれないけど、ちゃんと範囲以内に収めることの方が大事です」。プロのトーナメントはグリーンが硬く、厳しい位置にピンが切られることを知っている。「ラフにいったら難しいですからね。飛んで曲がらないのが一番。今は飛ばしながら精度を上げるのが課題でもあります」とプロとして戦う上で大切なことを理解している。
ルーキーイヤーは「とりあえず経験を積むのが絶対に大事。シードは獲りたいし、初優勝もいきたい」と目標を立てている。「狭いホールで曲げたらもったいない。バーディを取りたいパー5とかで振っていきたい」とホールによって振る力のコントロールも行っている。ブンちゃんの全力を見るのは、開けたパー5が良さそうだ。(文・小高拓)