<ダイキンオーキッドレディス 初日◇6日◇琉球ゴルフ倶楽部(沖縄県)◇6610ヤード・パー72>
昨年11月、4度目の挑戦で最終プロテストに合格した吉田鈴が6バーディ・3ボギーの「69」で回り、単独2位スタートを切った。時おり強い風が吹き、南国・沖縄とは思えない冷たい雨が降る中、首位とは1打差の3アンダー。堂々の初陣に、大きく息を弾ませた。
「本当にびっくりしています。寒くて、風も吹いて、感覚が鈍くなることもあったけど、後半に改善できました。シビアなパーパットや、微妙な距離のパットも入ってくれた。すごくいいスタートが切れたと思います」
インの第1組として午前8時半にスタート。11番パー5では、残り70ヤードからの3打目をピン手前1メートルにつけて、記念すべきプロ初バーディを奪った。「そうなんですか? めちゃうれしいですね」と笑顔を見せたこの一打は、2025年シーズンの第1号バーディにもなった。
前半はバーディとボギーが交互に来る出入りの激しいゴルフとなったが、後半のアウトは2バーディでボギーはなし。強烈なアゲンストの風が吹いていた4番のパー5は、残り135ヤードの3打目をベタピンのバーディ。最終9番では、左ラフから残り148ヤードの2打目をピン右1メートルにつけて締めくくった。
昨季の年間女王で今季から主戦場を米国女子ツアーに移した竹田麗央、川崎春花、尾関彩美悠らと同じ2003年度生まれのダイヤモンド世代。同世代の仲間たちは竹田の8勝を筆頭に、すでにツアー通算21勝を積み上げている。その背中を追いかける第一歩に、21歳のルーキーは「プロテストに比べたら全然。プロとして出られることがうれしい」と緊張よりも、わくわく感が大きく勝った。
プロテスト合格後の最短Vは、笹生優花が2020年「NEC軽井沢72」で記録した2試合目。プロデビュー戦で優勝を飾れば、ツアー史上初の快挙となる。まだ4日間大会の初日が終わったばかり。優勝を語るのは気が早いが、遅れてきたルーキーの実力は誰もが認めるところだ。アマチュア時代には31試合に出場し、昨年の「大東建託・いい部屋ネットレディス」では10位に入るなど、ベストアマチュア賞には何度も輝いた。
「すごく落ち着いていたと思う。彼女はオールラウンドプレーヤー。きょうは特にパットが良かった」。吉田が中学3年のときから指導し、今週はキャディを務める国内男子ツアー通算7勝の今野康晴も、まな弟子のプレーに目を細めた。
4学年上でツアー通算3勝の姉・優利は、昨年から米国女子ツアーに主戦場を移している。姉の存在はプロを目指すきっかけとなったが、進学した高校も異なり、クラブメーカーもアマチュア時代から違う。コーチも別々で、同じ試合に出場しても基本は別行動だ。今週も姉から連絡はなかったし、自分からも連絡はしなかった。
「姉も試合をしていて精いっぱいだと思うし、お互い心の中で応援しているから大丈夫です」。自分は自分、姉は姉。甘えはなし。これも注目ルーキーの強みのひとつだ。
「今まで初日にスコアを崩すことが多かったので、そこは成長できたかなと思います。まず予選をしっかり通過して、上を目指していきたい。自分の好きなようにプレーして、ダメだったらしょうがないかな」
鬼門だったという初日を軽やかにクリア。注目ルーキーが開幕戦の主役に躍り出た。(文・臼杵孝志)