国内女子ツアーの開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」で2位に入り、2戦目の「Vポイント×SMBCレディス」は上位争いの末、13位タイと好調を維持するのがツアー通算1勝の木村彩子だ。試合中継でその姿をよく見るが、グリーン上での特徴的な打ち方が印象に残る。トウ側を上げて打つスタイルなのだが、それについて本人に聞いてみた。
ソールが少しラウンドするブレードタイプのパターを使用しているが、ヒール側のソールはベタっと地面に着き、トウ側を上げてややハンドダウンで構えるのが“木村流”。レジェンドの青木功を彷彿とさせるアドレスでもある。これは「もともとのクセなんですよ」と昔から。ただ青木のようにパチンと打つタップ式ではなく、「軸を中心に回転して、ちゃんとフェースローテーションさせます」という。
「プロになって最初の頃はトウが浮かないように直していたんですけど、ちょっと気持ち悪いと思っていて、南(秀樹)さんに教わるようになってから、『無理に直さなくていい』と言ってくれました」。2019年12月から師事する南秀樹コーチは、自身が打ちやすいスタイルを推奨してくれて、今もそのまま貫いている。
トウ側を浮かすことのメリットもある。「つかまったボールが打てます。つかまっているんですけど、真っすぐ転がります」。そのため右に曲がるスライスラインは「得意です」と胸を張る。ボールがつかまっていないとカップ手前で切れやすくなるが、ボールがつかまっているため苦にならない。「速いグリーンでもだらだら傾斜で転がらないのでフィーリングも合いやすいです」といいことは多い。
以前は、体の構えに合わせてソールがペタッと着くようにライ角調整をしたこともあった。「それだと逆にボールがつかまらなくて、滑ってしまうんです。トウ側を浮かせることでつかまえているようでした」と、あくまでもトウが浮く形がいいようだ。木村が構えてからトウ側がどれぐらい浮いているのか測ってみると、2センチほど浮いていた。世間ではノートルクで真っすぐ動かせるパターに注目が集まるが、パット巧者は自身のスタイルを持っている。
このオフはトレーニングの成果と、ドライバーをキャロウェイの「エリートトリプルダイヤMAX」に替えたことでキャリーで5ヤードほど飛距離アップに成功。加えて「ライが悪くても大きなミスが出ないので安定している」と全体的にひと回り成長した。今週から再び2022年の「アース・モンダミンカップ」以来となる2勝目を目指す。
「構えた時点でこの構えを作ったら、さらにハンドダウンにするとつかまりすぎてしまうので、そこは注意が必要です」という“ワンポイントアドバイス”も。今週もトーナメント中継で木村が映ったらグリーン上に注目。スライスラインが苦手なアマチュアは、木村式を取り入れるのもいいかもしれない。(文・小高拓)