2025年の国内女子ツアールーキーのスイングをツアープロコーチの石井忍が解説。今回は米ツアーを主戦場に戦う吉田優利の妹で、アマチュア時代から活躍を魅せる吉田鈴のスイングを深掘りしていく。
19年の「ニッポンハムレディスクラシック」でトーナメントデビュー。24年は国内女子ツアー8試合に出場し、「KKT杯バンテリンレディス」と「ブリヂストンレディス」ではローアマチュアを獲得。初のホステス大会となった7月の「大東建託・いい部屋ネットレディス」では、自身初の10位タイに入った。
世界アマチュアランキングの上位に名を連ね、22年から毎年「オーガスタナショナル女子アマチュア」に出場。そして4度目のプロテストで見事合格となった。
そんな吉田のスイングは「大きな飛距離よりも方向性を重視したスイング」と石井は話す。その要因には、アドレスから手元と胸の距離が変えずにトップまで上げてから「切り返したあとにお腹が少し凹むように前傾が深まる」動きと、インパクトで「両肩が水平を維持できている」ことがポイントとなる。
まずは“お腹が凹む”という部分。ほかのルーキーのスイング診断で比較的に多く見受けられたのはダウンスイングで“下半身が沈む”タイプ。地面を踏みこむことで地面反力に起きやすく飛距離につながることが多いが、吉田は「ダウンスイングで上半身がボールに向かっていく」。お辞儀をするように “上半身が倒れる”タイプだ。これにより、前傾角度をキープすると同時に「思い切り蹴っていくためのスペースができる」。
もう一つ、ショットの安定感を引き出しているのは、肩のライン。手元が腰あたりまで下りてきたときに両肩が水平になっている。「(インパクトで)過度なアッパーにならず、安定した入射角を維持できることにつながります」。それも曲がらない要素となる。右肩が下がり過ぎると、下からアッパーにクラブが入ってくるため、“あおり打ち”でダフリもトップも両方出る。
また、インパクト直前では左腕にゆとりがあり詰まっているようにも見えるが、「左腕をリードしながら振っている」。左腕主導だからフォロースルーまできれいに振り抜ける。ジョーダン・スピース(米国)や今平周吾のようにインパクト前後で左ヒジが曲がっているトッププロは他にもいる。左腕をリードにすることでフェースの開閉が少なく、「ボールのコントロール性が高い」ショットにつなげている。
■石井忍(いしい・しのぶ)1974年生まれ、千葉県出身。東京学館浦安高等学校、日本大学のゴルフ部で腕を磨き、98年プロテスト合格。2010年にツアープロコーチとして活動を始め、多くの男女ツアープロを指導。また「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアへの指導にも力を入れている。