<日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯 最終日◇10日◇パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ(長崎県)◇6755ヤード・パー72>
1打リードで迎えた最終ホール。パーパットを沈めて優勝が決まると、神谷そらはそれまでと変わらぬ笑顔を浮かべ、ギャラリーの歓声にキャップのつばを触って応えた。昨年プロテストに合格したばかりのルーキーとは思えない、堂々とした立ち振る舞い。しかしアテスト(スコア申告)に向かう際、祝福してくれた4学年上の同期・平岡瑠依を見つけると涙があふれてくる。「泣くつもりはなかったけど、毎週、ご飯に行くお姉ちゃんみたいな存在だったのでうれしかった」。照れくさそうに、この場面を振り返った。
300ヤード砲にギャラリーからどよめきも 新メジャー女王・神谷そら“飛ばしの原点”「小学3年で200ヤードは…」
驚異の飛距離を誇る20歳ルーキー。実力者たちをおさえて女子プロNO.1の称号を得た。
配信日時:2023年9月10日 10時12分
<日本女子プロゴルフ選手権コニカミノルタ杯 最終日◇10日◇パサージュ琴海アイランドゴルフクラブ(長崎県)◇6755ヤード・パー72>
1打リードで迎えた最終ホール。パーパットを沈めて優勝が決まると、神谷そらはそれまでと変わらぬ笑顔を浮かべ、ギャラリーの歓声にキャップのつばを触って応えた。昨年プロテストに合格したばかりのルーキーとは思えない、堂々とした立ち振る舞い。しかしアテスト(スコア申告)に向かう際、祝福してくれた4学年上の同期・平岡瑠依を見つけると涙があふれてくる。「泣くつもりはなかったけど、毎週、ご飯に行くお姉ちゃんみたいな存在だったのでうれしかった」。照れくさそうに、この場面を振り返った。
小祝さくらとの優勝争いは、最後まで緊張感のある展開だった。2打差の3位からスタートすると、3つ目のバーディを奪った9番で追いついた。さらに残り134ヤードのセカンドをピッチングウェッジで1メートルにつけて連続バーディとした10番では、小祝がボギーを叩き、一気に2打リードの単独トップに立つ。一時は15番のバーディで3打までリードを広げながら、終盤は小祝が8メートルのパーパットを沈めるなど意地のプレーを見せ1打差まで縮まった。
実質的な一騎打ち。「17番で緊張感があるなかピンに絡めるショットを打ったり、レベルが違うなと思いながらラウンドしていました」。そんな小祝を振り切った。「不思議な感覚。去年はテレビで見ていた側だし、出られただけでうれしかったので、優勝はまだ実感がない。ソワソワしてます」。プロテスト合格を目指していた1年前は練習場にいて、スマホで同い年の川崎春花の優勝を見届けた。夢心地でも無理はない。
そのなかでギャラリーが驚きの声を挙げたホールがある。4番パー4のティショットが300ヤード地点に落ちると、ロープ外がひときわどよめいた。そこから9番アイアンで5メートルにつけてバーディにつなげる。ここは「切れるラインを、入れることができてパターの調子がいいなと思えた。それでショットもガンガン攻められました」と、流れを引き寄せたホールでもあった。4日間の平均飛距離272.63ヤードは、岩井明愛に続く2位。小祝も「飛距離がすごかった」と称賛する。
飛ばしの秘訣を聞かれると、「それが一番困る質問」と言って笑う。「小学校3年で200ヤードは飛んでました。小さい頃に入っていたのが大人のスクールで、練習場やコンペで負けないように、追いつこうと思っていました」と原点を振り返る。シーズン通じてのドライビングディスタンスは259.69ヤードで1位。いまやツアーを代表する飛ばし屋になった。
ボギーを叩いた16番は、小祝が8メートルのパーパットを沈めるところを見ながら、「すごいなと思いながら見てました。自分は3パットすると思っていた部分もあったのでボギーは想定内」と割り切った。ティショットを左に曲げた18番も「気持ちよく振れたからオッケーだと思った。セカンドは頑張ろうって歩いてました」。初優勝を挙げた4月の「フジサンケイレディス」から、一番成長した部分は「切り替えができるようになった」と答える。確かにその“切り替え力”が、プレッシャーに打ち勝った要因と感じさせる。
今後の目標は11月の「TOTOジャパンクラシック」に出ること。米国女子ツアーが日本で行う公式戦で、メルセデス・ランキング35位までの選手が出場権を得る。この優勝で神谷はランキング11位まで浮上。当確といえる位置だ。「いずれは海外に行きたい。どこまで通用するのか。米ツアーの選手が来る場所で、現状を見たい」と話す。ここで勝てば予選会を経ずに、ツアーメンバーにもなれる。まずは日本で経験を積み、いずれ海外でプレーする自分の姿を思い浮かべていく。
ツアー通算9勝の小祝だけでなく、女王の山下美夢有、元女王の稲見萌寧、通算5勝の西郷真央と、現在の女子ツアーの看板選手たちが上位を固めた大会を制した。「すごい人ばかりだし、かっこいいイメージ」。これが20歳が描くメジャーチャンピオン像。それに近づく、価値ある優勝だった。(文・間宮輝憲)
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