さらにいうと、切り返しでクラブを後ろに倒す『パッシブトルク』という言葉がありますが、そもそも「パッシブ」は「受動的」という意味で、「倒す」と意識した時点で、受動的ではなく能動的になってしまいます。田村さん自身も「倒そう」なんて考えていないはず。クラブを閉じたままアウトサイドに上げることで、勝手にクラブが「倒れちゃう」のです。

また、田村さんの左ツマ先に注目すると面白い。トップに行く前の手元が胸の高さまで上がった時点で、ピョコンと左ツマ先を踏み込んでいる。クラブと左足が引っ張り合うことで、インパクトでヘッドが走っていきます。また、切り返しでは足がガニっと広がっていくことで、上体の起き上がりを防げる。これもいま流行りの動きの1つ。

フォローからフィニッシュにかけて剣道の“メーン”みたいな形になるのは、体が硬くて胸が一緒に回っていくから。柔軟性こそ違いますが、マシュー・ウルフが出てくる何十年も前から、田村さんは今っぽいスイングで飛ばしていたわけです。

■解説・石井忍
いしい・しのぶ　1974年生まれ。千葉県出身。98年にプロ転向し、かつてはツアープレーヤーとしてレギュラーツアーに出ていた。現在は『エースゴルフクラブ』を主宰し、プロゴルファーやアマチュアの指導を行うほか、解説者としても人気を博す。