<すまいーだカップ シニアゴルフトーナメント 最終日◇18日◇イーストウッドカントリークラブ(栃木県)◇6867ヤード・パー72>
国内シニアツアーでは、塚田好宣の『ブンブンTIME』が恒例。朝の練習場では球を打たず、パターと素振りだけをしてコースに出て行くのだが、その全力素振りの風切り音とスピードが凄まじすぎて、近くにいるギャラリーたちを驚かせている。
今大会では練習場の距離が140ヤードと短く、打てるのはウェッジくらいまで。ドライバーは鳥かごのネットに向かって打つ。塚田は今週、少し球を打っているが、練習場にいる時間はとにかく短い。
初日はスタート時間の45分前にコースに着くと、素振り、パッティング、軽く球を打ち、最後にやはり素振り棒を“ブンブン”と振ってスタートした。多くの選手がスタートの1時間半前にはコースにいることを考えると、塚田はその半分。それでもトップとの3打差の3アンダー・10位タイと、まずまずの位置につけた。
ラウンドの前にボールを打たないことに不安はないのか、本人に練習場で球を打たない理由を聞いてみた。「そんなに練習してもね。コースの練習場が打ち上げの時や、左からの風のときはやりません」という。塚田はレギュラー時代、「Sansan KBCオーガスタ」でも練習場で球を打たなかった。「打ち上げでスイングしておいて、いきなり打ち下ろしでファー!みたいな(笑)」。会場の芥屋ゴルフ倶楽部は練習場が打ち上げで、スタートホールの1番と10番はともに打ち下ろし。練習と本番のイメージが合わないのだ。
では、左からの風で練習しない理由は? 「ドローヒッターもフェードヒッターも背中から来る風の時は練習しない方がいい。絶対に引っ張り癖がつくから。曲がっちゃうから風に向かって打とうとする。でも右からの風なら引っ張りはしない」。特に塚田はドローヒッターのため、左に打ち出すのは命取り。とにかく悪いイメージがつくのを嫌っている。
「レギュラー時代はそういうところで一生懸命してきていいことがなかった。だからやめようと思って」。それで塚田が行き着いた答えは“素振り”。スタートの直前、素振り棒の先に重りをつけて振った後に、その重りを外して全力で数回振る。
「素振りでもちゃんと姿勢とかをチェックして振る。重くして体をほぐして、軽くしてスピードを体に覚えさせる。素振りは(球筋を気にしないので)すごくイメージがいいから(笑)。全力で素振りすることで『振れてる』感じがするし、ポジティブになれるんだよね。クラブで素振りする人もいると思うけど、フェースはない方がいいと思う」
一般ゴルファーでも余裕を持って、スタートの1時間半前にゴルフ場についている人は少ない。短い時間で慌ててボールを打つより、塚田のように気持ち良く素振りしてスタートしたほうが、いいスコアが出るかもしれない。(文・下村耕平)